中小工務店のリノベーション事業展開

2019/08/2610:59105人が見ました

     これまで連載した競争戦略の考え方を踏まえて、今回は中小工務店の戸建リノベーション、性能向上リノベーションをテーマにどのような戦略で事業展開しているのか、集客や組織等社内体制も含め、取り上げていきます。

     

    1.モデル企業の7P分析 

     全国各地のモデル企16社の仕組みを、施工、価格、販促、流通、施設(店舗)、人、プロセスの7つの要素に分けて考えていきます。優れた施工品質があれば必ず業績が向上するとは限りません。適切な価格設定をしたり、顧客に認知されたりしなければ、せっかくの高い施工品質でも顧客の支持を集めることはできません。マーケティングに必須な要素をそろえ、組み合わせていくことが、業績向上につながります。それを7要素で考えていくのが7P分析です。下記に共通点や相違点を記載します。

    ・共通点 

     モデル企業の共通点としては、「ターゲットを絞っている」「理念が現場に浸透している」「整合性のある活動システムが構築されている」「独自の付加価値があり、差別化できている」等があげられ、差別化集中戦略がうまく機能しています。また、店舗を含め集客の仕組みがあり、安定集客を実現している点、営業、施工管理といった分業制により、見込み案件に対して、組織力で対応し、高い施工品質を実現できています。

    ・相違点 

     相違点としては、各社の強みの内容が異なる点があげられます。各社それぞれの理念があり、理念に基づいた自社ならではの商品力、付加価値となっています。また、軸となる集客ルート(スタジオ、お客様宅見学会、モデルハウス)、手法(紙媒体、Web)も異なります。各社が異なる媒体を活用し、地域にメッセージを送っています。

    ・7Pの一例

     

    2.モデル企業の3C分析 

     3C分析とは顧客、競合、自社という、事業展開にとって大切である3つの視点で分析をする手法です。顧客の視点には想定される顧客特性、ニーズや行動、市場規模等があります。一方、競合の視点とは、競合の強さ、特徴、戦略、差別化等を意味します。自社の視点とは、それらを自社に当てはめたものになります。顧客、競合、自社を分析することで、モデル事例の特徴や背景を見ていきます。

    ・3C分析のまとめ 

     いずれのエリアも同業者は多いですが、同じターゲットや、類似したコンセプトを持つ競合は限られ、空白マーケットに近いポジション取りになっています。日々、差別化となる付加価値を磨いており、中には(断熱ニーズの強いエリアで)世界基準に近い水準まで性能を究めている例もあります。相見積りになったとしても、他社に負けることは少ないです。各社、それぞれの付加価値、専門性が機能し、商圏内の特定の顧客の要望に応えています。

    ・3Cの一例

     

    3.事例紹介 

    ・理念、特徴「競争戦略:2000万円級をコアターゲットにしたリノベーション専門店」 

     「価値あるものを残したい」「大切な思い出を受け継ぐ」といった思いをベースに事業を展開しています。視認性が高いリノベーションモデルハウスを開設し、リノベーション専門サイトとの相乗効果もあり、スタート時から豊富な見込み案件を確保できています(リノベーション現調案件2018年度39件、2019年度は1-7月20件)。 

     性能向上リフォーム、自然素材リノベーションに特化し、平均単価は2018年度1400万円台、2019年度は1800万円台と着実にアップしています。要因としては、集客装置、営業の武器となるリノベーションモデルハウス(珪藻土、無垢材を活用)が存在すること、さらに基礎工事を含めた古民家案件への対応力、複数の施工案件を管理する社内、社外体制が構築できている点があります。 

     今期は第一四半期(3ケ月)の時点で3億円の実績(完工3件、施工中7件、着工待ち4件、設計契約3件)となっています。完成した物件で現場見学会を開催する等年間を通じて販促企画があり、さらに見込み案件を獲得するという善循環につながっています。

    ・集客(販促企画は年に6回) 

     紙媒体によるモデルハウス来場、Webサイト(リノベーション専門サイト)、お客様宅での見学会

    ・組織(専属7名) 

     1級建築士を中心にした営業・施工管理+モデルハウス接客担当他(分業制)

     

    4.まとめ(各モデル事例から) 

    ・価格帯、カテゴリーを絞っている 

    ・類似コンセプトの競合がほぼ存在しない 

    ・性能、素材にこだわりがあり、結果として優位性につながっている 

    ・事業展開において強い思い、目的がベースにある(「新築市場が縮小するから」という動機が先行していない) 

    ・見せるもの、体感できるものがある(スタジオ、モデルハウス、お客様の完成現場) 

    ・専門サイトを構築し、一定の情報量と反響につなげる導線がある 

    ・価格訴求はしない 

    ・建築リテラシー、社内オペレーション等強みに適合している 

    ・全体設計ができている(活動システムに一貫性、整合性がある) 

    ・短期的な成果(達成型の価値観)で考えない

     

    戸建リノベーション、性能向上リノベーションは模倣しづらく参入障壁が高いビジネスと言えますが、上記の各条件を押さえながら全体設計することにより、地域において独自ポジションを築いています。

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