戸建リノベーションにおける競合状況②「住友林業ホームテック」

2021/03/2909:11408人が見ました

 コダリノ研究所の稲葉です。前号(「新築そっくりさん」)に続き、今号でも3C分析の中で競合に焦点を当てて、お伝えしたいと思います。今回は戸建リノベーションにおいて、旧家リフォームを展開する住友林業ホームテックを取り上げます。戸建リノベーション事業に参入する際に自社と顧客に対しては注力するものの、競合を見る視点は不足しがちですので、ぜひ参考にしていただきたいと思います。

3C分析とは顧客、競合、自社という、事業展開にとって大切である3つの視点で分析をする手法です。顧客の視点には想定される顧客特性、ニーズや行動、市場規模等があります。一方、競合の視点とは、競合の強さ、特徴、戦略、差別化等を意味します。自社の視点とは、それらを自社に当てはめたものになります。顧客、競合、自社を分析することで、取るべき戦略や手法が見えてきます。)

 全体構成としては、住友林業ホームテックの企業概要を伝えて、性能面にフォーカスした考察をしていきます。

 

住友林業ホームテックのリフォーム戦略とは? 

 まずは企業概要から見ていきましょう。

<企業概要>

・母体の住友林業は木の研究所を持ち、新築のほうで生活者が住友林業に決めた理由の1位が「木の質感」となっているとおり、住友林業ホームテックのほうでも、「木の温もり」「木質感」といった木に関するお客様の声が目立ちます。林業という社名のとおり、木のこだわりに対しては安定した評価があるようです。

・旧家リフォームを展開。100年の家倶楽部という一定の条件を満たした登録制の取り組みがあります。家族の想いを継承する、そして歴史的建造物として価値あるものを壊さず残していくというコンセプトです。「旧家」という表現を使っている点も印象深いです。実際、100年、120年という築年数で、費用としては3000万円4000万円といった古民家の事例が150件以上HP上で公開されています。その施工事例の約1割が5000万円級となっています。そして旧家、古民家の年間の改修実績は約300件と記載されています。平均2500万円想定として、75億円が旧家・古民家改修の売上となり、古民家改修において全国トップクラスの実績です

 

<マーケティング(過去のCM)の一例>

 広告に関しては、子どもから大人になり、嫁いでいく過程の映像を見せながら、伝統工法の実家をリノベーションし、二世帯同居するというCMがあります。ダイナミックに梁を活かしたリノベーションが目を引きます。明確なターゲット設定、巧みなマーケティングだとつくづく感じました。他の広告を見ても、大手にありがちな最大公約数的なリフォーム・リノベーションではないことが理解できます。

 

 コアターゲットがうかがえると同時に、全体を通じて、技術力に対する矜持を感じます。平均の工事単価が1200万、1300万と言われる新築そっくりさんに対して、旧家リフォームは3000万級4000万級も珍しくなく、住み分けができている部分もありそうです。この工事単価という観点から新築そっくりさんは地域リフォーム会社と、住友林業ホームテックの旧家リフォームは地域工務店と同じポジショニングに存在する印象です

 信頼の証の一つと言える建築士の社員数は1000名以上在籍するという記載があります。一方、完成見学会は以外と少なく、カウントしたところ、月10件程度のようです。

 

<業績>

 数字は、こちらの通りです。あくまでもリフォーム・リノベーションの数字です(カッコ内へ前年比)

 ・売上:702.3億円(▲0.9億)=業界5

 ・施工件数:50,952件(+1,243件)=平均は約140万円です。平均工事単価が低くなっているのはリピート受注が含まれているためです。

 ・拠点数:70店(▲4店)1店舗当たり約10億円で新築そっくりさんとほぼ同水準です。

 ・社員数:2,039人(+116人)

 ・営業:573人(▲43人)

 ・新規比率:49

 (出典:リフォーム産業新聞 2020928日号)

 

 社員数のわりに営業が少ない点も会社の姿勢がうかがえます。また、「営業成績が大きく給与に反映されるわけではない」という声もあり、営業会社的でない点も特徴です(他社の給与制度では、歩合給の25%が支給されるという例もある)。

 新規比率は売上ベースです。大手ハウスメーカーの大半は新築オーナー比率が圧倒的に高く新規は1割という例も珍しくないのですが、住友林業ホームテックは約半数が新規ということで、新規客に対して積極的な動きをされていることも住友林業ホームテックの特徴の一つです。

 エリアは沖縄、宮崎など6県を除いたほぼ全国展開です。

 

 では気になる性能面です。

 

住友林業ホームテックのリフォームとは?(性能面)

 

①耐震

 まずは耐震です。

 ホームページを確認しますと、伝統工法の建物向けにエネルギー吸収ダンパーの設置に関する記載があります。また、基礎、土台、柱、梁、床、壁などを補強する工法においてもオリジナルの取り組みをしています。ダンパーという装置については現時点で様々な商品が登場しており、効果の判断が難しい領域ですが、耐震に関する意識の高さ、複数の工法において日本建築防災協会の認定を取得しているということなので、信頼性は高そうです。同業者が敬遠しがちな難解な旧家・古民家に社内衆知を結集し取り組んでいる印象です。

 

②断熱

 断熱は、全社的な取り組みとして建物の断熱の現況がビジュアルでわかるサーモグラフィを活用し、冬季の室温の実証データを蓄積するなど断熱、そして気密に対する意識の高さがうかがえます。健康というテーマも社内で共有されており、気流止めや断熱材の充填、コンセントの隙間防止に至るまで断熱・気密、そして健康寿命やヒートショック予防、睡眠不足改善などウェルネスという視点も持ちあわせているようです。どこまで数値で提示しているのかは確認できておりませんが、新築ではなくリノベーションの業界における相対比較では間違いなく平均以上のレベルでしょう。

 

③素材

 次は素材です。木材に関するお客様のベネフィットも社内共有されており、木材の利点としては、湿度調整や香り、視覚的なやすらぎといった木質化の効果などが社内資料を通じて共通認識になっているようです。この点から地域工務店との比較において、通じるものがあるという印象です。ただ、地域工務店の中には地産地消、県産材や地域の林業、地域経済の活性化に強い意識を持っている会社もあり、漆喰や珪藻土を必須としている例も多いです。その点の違いは見逃せません。デザインは新しい木、古い木の調和、木の色のコントラストが特徴で、間取りに関しても定評がある印象です。

 

④価格

 問題の価格に関しては、新築部門同様、大手らしく高い価格設定になるようです。これは大手ならではのブランド価値とも言えます。

 

 工務店は競合したらどう対策する?

 以上、対策としては、モノ売り的なアプローチではなく、理念をベースとした自然素材訴求(調湿、産地等)や断熱の数値提示、通風、日射遮蔽・取得をわかりやすく伝えることも差別化要素になると考えています。

 こだわり系、性能系の訴求はインスタやルームツアー動画では伝えきれない部分もあり、いかにモデルハウスや完成現場見学会へ誘導し、リアルに体感してもらえるかがカギとなります。

 初期コストだけでなく、光熱費などランニングコスト、メンテナンスコストも含め、トータルコストを具体的に提示することもさらに優位性を築く上で有効です。二世帯リノベーションなら、ブランド志向になりがちな親世帯に主導権を持たせないよう注意も必要です。

 

 ということで、今回は住友林業ホームテックについて取り上げました。旧家リフォームは平均単価が3000万円級と言われており、古民家リノベーションにおいて相見積りになる可能性は高いと言えます。ぜひ参考にしていただければと思います。

 

<一般ユーザー向けに関連動画を発信しております(コダリノチャンネル)>

https://www.youtube.com/watch?v=sZT-uR5C5fs

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