「タワマンカースト」とは?
ここ数年で急速に広まったこの言葉は、タワーマンションにおいて「住んでいるフロアがそのまま住民同士の上下関係にまで反映されていること」を指すものだそうです。タワーマンションは一般的に上層階ほど一室の価格が高く、低層階になるほど安い。とくに新築物件では、各部屋の広さや間取りも周囲の住民同士でお互いよく知っているのです。
そういう事情も手伝って「上層階の分譲価格の高い部屋に住む人」が「自分より下の階の分譲価格の安い部屋に住む人」を家族ぐるみで見下す傾向があるのだそうです。また、完成・販売後一斉に入居した住民同士は、自分の住む家の値段や月々のローン返済額まで類推されてしまうこともあります。マンション内ではプライバシーがあるような無いような、なんとも嫌な感じが漂っているというのです。
そういったことはタワーマンションに限ったことではなく、マンションリノベーションの工事の際に感じたことがありました。以下コラムでも触れています↓
マンションの中の小宇宙(階層とヒエラルキー)の部分
ところで、タワーマンションの低層階・中層階・高層階って何階のことでしょうか?タワーマンションに限らず、建物の「低層階」「中層階」「高層階」に、何階〜何階などの明確な定義は特にありません。階層の分け方は、その建物全体が何階建てかによって変わるものです。
例えば、10階建てのマンションなら、低層階は1〜3階・中層階は4〜7階・高層階は8〜10階となるでしょう。30階建てのマンションなら、低層階は1〜10階・中層階は11〜20階・高層階は21〜30階と分けられるのが一般的かと思います。タワーマンションとなれば30〜40階建てが多く、階層別に下記のような物件が多いのが特徴です。
●低層階(1〜10階):店舗、ワンルームや2LDKなど価格帯が低めの物件
●中層階(11〜20階):3LDKファミリー向けなど中間価格帯の物件
●高層階(21〜30階):価格帯が高めの物件
●超高層階(31階以上):プレミアム物件
タワーマンションではエレベーターも低層階用、中層階用、高層階様など階数に応じて分けてあることが多いそうです。仮に21階以上が高層階用となっていたとして、21階の部屋は20階より上の高層階ということになりますが、高層階用エレベーター利用者グループの中では最下階になります。
コロナ禍で蜜を避けるため同乗は5名までなど管理組合で取り決めのあるマンションなどもあり、エントランスロビーに降りる際にはいつも定員オーバーでエレベーターになかなか乗れないということも多くあったりするそうです。この点では中層階用エレベーターでは最上階となる20階のほうが良かったりする訳です。タワーマンションにおけるエレベーターの停止階分担は重要チェックポイントのようです💦(いろいろむずかしいですね)
↑様々な「カースト」が交わるエレベーターが「鬼門」のようです
思い出す数々の「デジャヴ」
恐るべしタワーマンション。確かに、人を見たら出身や職業をきいてきて、やたら持ち物などに注目し「値踏み」したがる人って昔からいますよね。個人的にも今までにはたくさん出会ってきました。そういう人に。中には、この人は「人の噂ばなし」をエネルギー源にして生きているのではないか?と思えるような「手だれ」にも出くわしたことがあります。
そして思い返せば、生まれてからずっとそういった見えない「階層意識」みたいな環境に常に身を置いてきたように思います。子供の頃の住まいは、確かに決してお上品なところではなかったのですが「公立幼稚園の場所がガラが悪い」といって、いっしょに遊んでいた仲のいい友達がカトリック系の私立幼稚園に行ってしまった、ということがありました。
その後、小学校、中学校、高校などでも「どこに住んでる?」みたいなことは少なからずあったように思います。就職して結婚して子供ができてからも「公立の学校は荒れてるらしい」と娘のお友達が私立にお受験ということが、そういえばありました。その当時は神戸市に住んでいました。神戸市といえば、私の育った大阪市内よりはずっと品のいいイメージが地元でも一般的だったのですが、住んでみると初めてわかることもありました。
大阪から神戸にかけて阪神間などと呼んだりするのですが、神戸市は地形的に南側に海、北側に山という場所にあります。そこに東西方向に鉄道が3つ通っています。海手から、阪神電車、JR、一番山手に阪急電車という構成です。
山手に行くほど地価が高く「阪神間カースト」みたいなものが確かにありました。高級住宅地で全国でも有名な芦屋市でも最寄りの駅が阪急・JR・阪神どの線なのかで、ぜんぜん格が違うということが子供でも知っている暗黙の了解でした。
神戸市と芦屋市はとなりあっていて事情は似たようなもので、線路の距離はけっこう近いのに阪急沿線・JR沿線・阪神沿線で家賃相場などもかなり違っていました。当然、そうなると沿線ごとに住む人の「人種」が分かれていくわけです。
しかし、問題を複雑にしていたのは「校区」でした。神戸市の区の多くは南北に長い形の区分になっており、公立校の「校区」も準じていました。ということは、違った沿線の子供たちが混じってしまうことになりますから、言わば「タワマン」みたいなことになっていたように思います。
「ダイバーシティ」=「多様性を受け入れる世界へ」などとよく言われるようになりました。耳ざわりはいいのですが、こうして考えてみると綿々と次々に新種の「格差社会」のしくみを生み出しているのが我々日本人の現実でもあります。
↑阪神間のデジャヴ(電鉄格差の図)
他人は自分と同じ「景色」を見ていない
自己の事業への思いが強ければ強いほど、社長はついつい社員が「同じ考えを持ってくれている」と信じてしまいます。「耳にタコができるほど朝礼やミーティングで会社の理念の話はしているし、社員もレポートなどで「理念」に沿ったコメントを書いてくれている」とおっしゃる社長も多くいらっしゃいます。
しかし、それは「何を書いたら社長が心穏やかになれるか」を社員がわかっていて書いているに過ぎないことも多々あるのです。上司、先輩からも会社円満の秘訣として、そういう「指導」を受けているのかもしれません。
動物は同じものを見ていても、それぞれ違った見え方をしているそうです。その「見え方の違い」をビジュアルに教えてくれる素敵な絵本に出会いました。40年来の友人が知らせてくれました。絵本ではありますが、世界の最新科学の成果が紹介されています。
●仕掛絵本図鑑 動物の見ている世界
ギヨーム・デュプラ (著), 渡辺 滋人 (翻訳) 創元社
↑孫が出来たらいっしょに読んで、みんながみんな同じ見え方・感じ方をしている訳ではないことを教えてあげたいと思っています。
タワマンやこの絵本の話を読んでいると、人間同士だから同じ見え方や感じ方をしているという前提もひょっとしたら違っているのかもしれないと思いました。そう考えると、人生で出くわした様々な行き違いや理不尽なことの説明ができてしまうのです。これまで「なんでだろう?」と思って分からなかったことが簡単にです。
一般に、社員はそれぞれの立場の範囲での小さな視野、小さな世界、限られたパイを見て「認識」しています。残念ながら他のことはあまり見せてあげてもあまり「認識」できません。同じものを見ていても社長に比べると、狭まった視野、天井の低い世界、限られているように思える世界を「認識」しています。
それはその人の見え方、捉え方による錯誤によるものなのかもしれませんが、社長だって社外の他の人から見れば同じようなものかもしれません。人間同士は同じ種別の動物ではありますが、自分以外の人は別の種別の動物ぐらいに思っておいた方が事業としてもいい発想が生まれそうです。人の中にも「犬」もいれば「猫」もいるといった感じにです。
自分と違う様々な考えが多く存在する前提で、自ら「価値」を開発し「需要」を創造 することで強い「事業」となります。違う考え方の人が「認識」できる工夫をし続ける必要はありますが、それはやりがいのあるテーマです。
社長は、社員が同じ景色が見えていない前提で接していますか?また、お客様はさらに幅広くそれぞれ違った景色を見ていることを意識されていますか?
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