東京美容師図鑑
長女は美容師さん。東京にいるときにカットしてもらいます。
母(彼女たちのおばあちゃん)が通うヘアサロンのメニュー(商品)といえばカット・パーマぐらいでしたが、今どきはカラー・トリートメント・ヘッドスパなどを加え多様になっています。わたしはいつも「育毛ヘッドスパ」をやってもらいます(笑)
子供の頃は、500円をもらって「大衆理容」というところに通っていました。今で言う1000円カットみたいなお店で、バリカン負けして血まみれになって帰ったものです。1000円カットは当時の500円よりコスパは高いと思います。
美容・理容業界は髪を切り整える施術が基本ですが、そのバリューと価格はピンキリです。サービスレベルは違えど客単価は数十倍の差があります。同じカラーでもカラー剤の品質や、色の入れ方の技術など、それは深いものがあります。
カットやカラーのデザインだけではなく、洋服やネイルのコーディネートの提案など。髪や地肌のケア、さらにはアンチエイジングや体型を整えるトレーニングに至る美への導きが「商品」となります。
お客様が買っているのは整った髪型ではなく「美」と「健康」なのです。だから、数十倍の価格もノープロブレム。喜んで払っていただける訳です。一般人でもネットを通じて自らの「容姿」が露出することも多くなっていて「国民総モデル時代」の様相です。
長女は「カリスマオーナーチェーン店」→「独立組の個人店」→「面貸し店」という経過をたどってきました。「面貸し店」とはオーナーが店舗をフリーランス美容師に貸すという形態のお店です。サロンのオーナーとフリーランスは「オーナーと従業員」ではなく、「店舗オーナーと利用者」の関係です。そのため、お給料を働いたサロンからもらうのではなくお客さんからもらった売上が収入になります。その中から場所を借りた代金と経費をサロンオーナーに支払うかたちです。
「カリスマオーナーチェーン店」では序列と分業がはっきりしていて、最初はシャンプーばっかりしていました。「同期入社の5年生存率は5%」と言われていましたが、5年後には見事、本当にそのくらいしか残っていませんでした。
東京には「面貸し店」が増えているようです。人材育成の時間も仕組みもコストも大半を省けるので参入しやすいのです。大量採用の上、育成エネルギーをかけている「カリスマオーナーチェーン店」にとっては脅威です。
今後は学校卒業後、実務の育成を担うお店や機会が失われていくかもしれません。これから美容師を目指す子供たちは、どこで修行すればいいのでしょうか?
↑提供しているのは「別次元のもの」なのですね
東京パティシエ図鑑
次女はパティシエさん。 美味しいので手土産によく利用させてもらっています。
洋菓子店の商品は生菓子・焼菓子が中心で、夏場は冷菓・氷菓が加わったりします。全体に冬場は書き入れどき、夏場はゆっくりですが、現代の日本はイベントが増えていますので年中忙しそうです。
ハロウィン、クリスマスをはじめ、お正月、バレンタインデー、ひなまつり、卒業、入学、母の日など、お菓子は洋風でもイベントは和洋折衷です。なんだかんだと理由をつけて、みんな甘いものを食べるのですね(笑)
最近では、ただ食べるだけではなく「SNS映え」という「口実」も加わり、お菓子のビジュアルもより華やかで楽しいものになっています。お菓子の値段もお店によってピンキリですが、数倍程度です。イベント時の主役や、手土産など特別感が得られるのなら、少々お値段が高くてもぜんぜんお安いものなのかもしれません。焼菓子に関しては通販限定での販売も伸びていて、実店舗を持たない個人の参入も増えているようです。
次女は「パティシエではないオーナーの経営する店」からキャリアをスタートしました。オーナーは経営のみで、パティシエである店長は雇われでしたが、こだわりの強い個性的なお菓子を作っていました。そこに惹かれて入れてもらったのに、すぐにその店長が辞めてしまいました。少人数すぎて、途端に何でもこなす必要に迫られ相当鍛えられたようです。
その後、数店舗を経営するオーナーパティシエのお店に転職、数年で一周するジョブローテーションを経て店長さんをさせてもらっています。仕込みの量を聞いていると、やはり需要の大きさを感じます。普通に住宅地にあるお店ですが、芸能人が差し入れとして買い求めに来店することもよくあるそうです。
東京の洋菓子店は、老舗や大手高級店、有名パティシエの店、街の洋菓子店など多様です。働く人のキツさという点では「カリスマオーナーパティシエ経営店」→「街のオーナーパティシエ経営店」→「大手ブランドやホテル」といった順になるそうです。
それぞれは業務的にも待遇的にもほとんど別業種のようです。「カリスマオーナーパティシエ経営店」では仕事はキツいですが、素材の選び方から加工のしかたなどの「秘伝の技術」の幅が桁違いです。
いっぽう「大手ブランドやホテル」では生産性の追求による分業と機械化が進んでいて、洋菓子製造の一部しか体験できません。半分は工場みたいなものだそうです。仕入れる素材も加工済みの半製品であることが多くなります。
次女がお世話になっている「街のオーナーパティシエ経営店」は全体からみると中間的なポジションのようですが、徐々に機械化・自動化が進み「工場化」しているそうです。コンビニなどのコスパ商品に対抗しつつ、スタッフの働きやすさを両立するにはやむを得ないようです。
ニュースにもなってたりしましたが、一部の「カリスマオーナーパティシエ経営店」では未だブラックで「働き方改革?なにそれ?」みたいな空気のようです。「給料もらって修行させてもらって何言ってんだよ」というのは、オーナーの修行時代の厳しい体験からも「スタンダード」なのでしょう。「職人」の世界です。
行き過ぎた過重労働は問題ではありますが「本気」で学ぶ場として、守るべきものもあるのだと思います。最近コロナ禍の影響もあってか、カリスマオーナーパティシエの有名店が閉店するニュースも目立ちます。次女もお店の機械化・自動化に関して「これからの若い子は、どうやって実務の基本を学ぶのか?単なる作業員になってしまう。ヤバい…」と言っていました。
↑「手仕事」を覚えることなく機械化する杞憂もあるのです
全国ビルダー図鑑
住宅を建てる仕事を行う会社を最近はビルダーと呼ぶようです。分譲(建売・売り建て)住宅、注文住宅、内装・リフォームなど主たる事業はそれぞれ違うはずですが、特に新築系をそのように呼ぶようです。老舗の住宅系シンクタンクでは、ビルダーを年間の着工棟数規模によって以下のような区分で分類しているそうです。
■Aグループ
・ハウスメーカー
■Bグループ
・パワービルダー500棟
・パワービルダー200棟
■Cグループ
・ビルダー100棟
・ビルダー20棟
■Dグループ
・工務店5棟
・工務店1棟
そして、この10年の各グループのシェア増減は以下のような傾向にあるそうです。
■Aグループ → 減少
・ハウスメーカー
■Bグループ → 増加
・パワービルダー500棟
・パワービルダー200棟
■Cグループ → 横ばい
・ビルダー100棟
・ビルダー20棟
■Dグループ → 減少
・工務店5棟
・工務店1棟
しかし、Aグループのハウスメーカーの平均受注単価はこの5年ほぼ年々上昇、4000万円に達している会社もあるようです。棟数は減っていますが、利益額と生産性は上がっているのかもしれません。いっぽう、Bグループのパワービルダーはローコスト系が占めているようです。こちらは、規模拡大により収益を上げているようですが、成長が止まってからの経営力が問われています。Dグループが減少しているのは、後継者問題もあって廃業や売却が増加しているからという要因も大きいようです。
↑住宅業界の構図はヒタヒタと変化しているようです
長く東京にいる娘たちやその友人たちによると、本当に美味しいお菓子や品質の高いヘアカラーは地方では選択肢自体ほとんどないようです。価格が高くなると、需要が少ないということはあるのでしょうが「本物」に出会えないというのは、つらい現実です。
通販でカバーできるものならまだいいのですが生菓子や美容師の施術、工務店の仕事はそうはいきません。地方在住の子供にとって選択肢が限られる事自体が大きなハンディですが、それより怖いのはその事で「本物」と出会う機会を失う事だと言います。
一概に高いものが良い、安いものが悪い訳ではありません。しかし、どの分野においても経営者の理想があって、そこに向かう品質と価格である事が繁栄の条件であるようです。そうではない経営者のブランドは業界を問わず、やはり永くは続いていません。
そして「それが売れるから」と後を追っていく人たちは、いつの間にか消えてゆくのも業界を問わず共通しているようです。高いものでも、安いものでもそれぞれに求められる「苦労」に耐えられないのです。
きっと経営者の『理想とするもの』が、はっきりしないから耐えられないのでしょう。表現を換えると、社長がそれを「知らないから」とも言えそうです。世に溢れる「楽して儲かる」という甘―いメッセージには、気をつけなければなりません。
社長の会社は、地域で何を売っている会社ですか?地域のお客様に社長自らが『理想とするもの』を提供されていますか?
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