『FIRE』考 ■売れる力とは?

2024/01/1315:04257人が見ました

FIRE』とは

 

 

FIREとはFinancial Independence Retire Earlyの頭文字を取った造語で、意味としては「経済的自立」と「早期退職」を指します。経済的自立というからにはそれ相応の資金が必要になります。一般的には年間支出の25倍の資金が準備できればFIREすることができる状態といわれています。

 

例えば、月の生活費が30万円必要だとすると、

 

30万円×12か月=360万円

 

が年間生活費になり、その25倍の金額は、

 

360万円×259,000万円

 

となります。 これは、言い換えると9,000万円の資金を年利4%で運用できた場合です。

 

9,000万円×0.04%=360万円

 

という事です。

 

つまり、必要な生活費によって必要資金は変わり、支出が多い家庭ほど準備するべき資金も多くなるということです。資金を毎年4%ずつ取り崩しながら運用すれば資産が目減りしないとする「4%ルール」はFIRE界隈ではひとつの基準になっているようです。

 

子供の頃、父から「1億円貯めたら遊んで暮らせるぞ」とかよく言われたものでした。当時は物価の上昇も激しかったのですが、元本保証の預金でも利回りが7〜8%あって、普通に銀行預金が10年で2倍になる時代でした。確かに1億円貯めたらその時には遊んで暮らせたのでしょうが、元本を減らさずに長期間確実に運用益を出し続けるということは、そう簡単ではないことは歴史が物語っています。うちの親父が言ってたぐらいですから、FIREとは決して新しい概念ではないのです。

 

↑昔の郵便貯金の定額貯金3年以上の利回りの推移(出所:総務省統計局)

 

いろいろな『FIRE

 

 

経済的に独立して早期リタイアを実現するFIREには、いくつかの種類があります。 まず、アメリカで語られている一般的な定義は以下のようなものです。

 

不労所得が大きく、FIRE後も不労所得だけで余裕を持った生活ができるものを「Fat FIRE」、不労所得がそれほど大きくなく、切り詰めた生活をしなければならないものを「Lean FIRE」。また、好きな副業やパートを続けて生活し、資産や運用収入が少なくても一定の就労所得があるものを「Side FIRE」、引退はせず好きな事やボランティアなどに取り組むスタイルは「Coast FIRE」と呼ばれているそうです。アメリカでは以上の4つが代表的でした。

 

最近では社会背景の違いを反映した「日本版FIRE」としての定義も別にあるようです。 それらの代表的なものは次のようなものです。
就労所得なしでも資産運用だけで充実した生活が送れる「フル FIRE」、一定額の運用収入を確保して、短時間のパートによる多少の就労所得と資産の取り崩しを足して生活するものを「スロー FIRE」、資産は少なくても、積極的に労働収入を足して生活する「サイド FIRE」、資産や運用収入は少ないが、働かず生活費を極限まで減らして生活するものを「倹約型 FIRE」と言うそうです。

 

 

↑いろいろあってややこしいですね

 

 

皆さんは「ねほりんぱほりん」というEテレの番組をご存知でしょうか? 顔出しNGのゲストはブタに、聞き手の山里亮太とYOUはモグラの人形にふんすることで、 「そんなこと聞いちゃっていいの~?」という話を“ねほりはほり”聞き出す人形劇トークショー。実際の人物キャラに寄せて作り込んだ人形が繰り出す、聞いたこともないような人生の“裏話”が深い番組です。

 

その「ねほりんぱほりん」で「ギリギリFIRE」というテーマで実際にFIREを遂げた若い日本人が登場していました。ふたりとも分類上は「倹約型 FIRE」の人たちでした。ひとりは資産3,000万円をつくって退職、事故物件に住み、外食関連の株を買って株主優待のクーポンで無料の外食で生活。「毎月8〜9万円あれば生活できます」との弁。もうひとりは資産900万円で踏み切り、資産額に合わせて家賃込み月5万円で生活。同棲していた彼女まで断捨離、公園や川沿いの土手で野草を摘んで食べているとの弁でした。。。人形のゆるいビジュアルとは相反して、中身はすごくディープです。

 

 

↑「ねほりんぱほりん」こんなキャラクターが出てきます

 

 

 

 

「リバイバルトレンド」にご注意を

 

 

FIREは、そう新しい概念ではないと申し上げました。 こういう、リバイバルもののトレンドでアルファベット略語が出てくるときは要注意です。必ずそれを目先の商売にする人・企業が存在するからです。アメリカ式のマーケティング手法が幅を効かせるのです。

 

ビジネスの世界でも、たとえばCRMCustomer Relationship Management、顧客との関係性を管理すること)とかSFASales Force Automation営業支援システム)などと、内容はごく当たり前のことなのに、それを導入すればあたかもあらゆる問題が解決する魔法の道具のような雰囲気を漂わせる人がいます。多くの社長がカタカナ・アルファベット略語連発のITベンダーのカモになってしまうというアレです。

 

また、そういうアルファベット略語を使うとなんとなく「いままでになく新しくて賢い」というイメージをまとうことができるため、目にしてしまうと中身を深く考えずに誰もがつい信用してしまいがちです。私の周りでも盲目的に導入してしまっている社長が多くいらっしゃいます。

 

話を『FIRE』に戻しましょう。
「経済的自立」は言うまでもなく重要なことで、これは誰もがうなずくところだと思います。 ただし、これには2つの意味があります。1つは一般的な「自分の労働力に依存しない不労所得がある」ということと、2つ目は「誰にも頼らず自分の腕一本で食べていける」という意味です。

 

FIREとはFinancial Independence Retire Earlyの頭文字を取った造語でした。いろいろな種類のFIREを紹介しましたが、その人の仕事観が「FI=「経済的自立」しても「RE=「早期退職」するかどうかの分かれ目となるようです。「働きたくない」「仕事が楽しくない」という人が「RE」つまり早期リタイアします。

 

私の知人でもとっくにリタイアしている人を知っています。10代の頃からずっとリタイヤを目標としているような「仙人」みたいな人でした。現在は美味しいものを食べたり、クルーズ船で旅行に行ったり、シーズン中はずっとスキーで過ごしていたりするようです。

 

つまり、イヤイヤ働いてきた(あるいはストレスに耐え忍んで働いてきた)人は早期リタイアを選び、充実して働いてきた人は独立起業を選ぶ傾向が強いようです。FIREの信奉者に若い人が多いということも、なんとなく理解できます。今の若い人ほど「仕事を通じて成長する」「その成長の実感や貢献の実感が幸福感につながる」という経験が少ないからです。

 

その上、今の若い人はアルファベット略語を使う金融関連企業からの投資オファーをネット経由で浴びせられ続けています。FIRE信奉の裏には危険な投資リスクをはらんだものも群がっているようです。なんとなく過ごしている人が、こういうものに抗うには相応の知性とエネルギーが必要な社会になっているのです。

 

若い人に「仕事を通じて成長する」「その成長の実感や他者への貢献の実感」という経験機会を提供し続けることも、経営者の責務であることは今も昔も変わりません。むしろ、現代においてその役割は増しているようにも思えます。

 

 

 

社長の会社の若手に『FIRE』志望者はいますか?「F I経済的自立)は目指しても「RE(早期退職)」は目的にならない働く環境とはどのようなものなのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

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