リノベーションや住まいの設計を長く続けていると、つくづく感じることがあります。人は、部屋の「動線」と「明るさ」に驚くほど左右される、ということです。
同じ広さ、同じ家具でも、明るい部屋はきれいに保たれ、暗い部屋はすぐに散らかります。この記事では、窓を増やせない部屋にあとから光を足す方法を、私が実際に手がけた物件の例でご紹介します。
製品の公式サイト:https://atmoph.com/ja/products/aw103
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暗い部屋ほど、散らかりやすい

開口や採光が足りていない部屋
実際、リビングより北側の居室のほうが散らかりやすくなります。暗めの浴室や窓のないトイレも、窓があるものに比べて掃除の回数が減りがちです。
これは私の感覚だけの話ではありません。照明学会誌に載った論文「無窓執務空間の視環境が心理・行動に及ぼす影響」(平成5年)では、デパートや学校のような大きな空間より、事務室のような小さな空間のほうが、薄暗さの影響を受けやすいとされています。住宅の個室やトイレは、まさにこの「小さな空間」にあたります。

間接照明と明るいスポットを組み合わせたトイレ
トイレや浴室なら、間接照明と明るいスポット照明を組み合わせるだけでも「掃除したくなる部屋」に近づけます。ただ、居室となると照明を明るくするだけでは足りない場面があります。人が求めているのは、明るさだけでなく「外とつながっている感覚」だからです。
法律の1/7は「最低限」でしかない
建築基準法では、居室の採光に有効な開口部は床面積の1/7以上とされています。ただ、住む人の満足という意味では、これでは足りないと感じています。2010年に日本建築学会が行った調査でも、窓の大きさと満足度は比例する傾向が示されていて、窓は大きいほど喜ばれるということになります。

窓が南側だけの部屋。意外と暗い
とはいえ、断熱や防音、プライバシー、コストを考えると、大きな窓を自由に付けられるわけではありません。リノベーションでは、構造上そもそも開口を増やせないこともよくあります。
そこで私が取り入れているのが、光を「あとから足す」考え方です。
窓の代わりに「人工窓」を付けた物件

ピクチャーレールに吊るして設置
私が手がけた地方の賃貸物件では、寝室に「Atmoph Window2」という人工窓を3枚並べて付けました。世界各地の風景映像を流せる、窓の形をしたディスプレイです。
この物件の寝室は南向きですが、窓が小さいため、日中でも思ったほど明るくなりません。そこで、本来は道路に面している壁に人工窓を設置し、東側から光が入ってくる状態を再現しました。
設置はピクチャーレールに吊るす形にしています。壁に穴を開けずに済むので、賃貸でも取り入れやすく、退去後の原状回復も簡単です。

壁の外側の実際の風景を撮影して投影
日中は、壁の向こう側にある実際の風景を撮影した動画を流しています。本当にそこに窓があるかのように見えるので、部屋の圧迫感がぐっと減りました。
朝の光と、外の音までつくれる

画面と連動して光るLEDオプション
Atmoph Window2には、窓から部屋に光が差し込んでいるように見せるLEDのオプションがあります。画面の映像と明るさが連動するので、日の出の映像を流すと、部屋が少しずつ明るくなっていきます。

早朝の日の出の映像
これを朝の決まった時間に点くように設定したところ、住んでいる方から「朝、起きやすくなった」という声をいただきました。北向きや窓の小さい寝室で、朝日の代わりを用意できるのは大きな利点です。

画面が振動して音が鳴る仕組み
もう一つ効果が大きいのが「音」です。Atmoph Window2は画面そのものを振動させて音を出すため、まるで窓の外から鳥の声や街の音が聞こえてくるように感じます。
この物件の目の前は住宅街の道路で、鳥の声が聞こえるような環境ではありません。また、防音のために窓を開けたくない場面も多いでしょう。実際には取り込めない自然の音を、窓の代わりに届けられるわけです。私自身も、仕事中は家具工場の作業風景を流していることが多く、集中しやすくなると感じています。
「入居後の不満」への選択肢として
採光の不満は、図面の段階では気づかれにくく、住み始めてから表に出てくることが多いものです。そして、あとから窓を増やすのは費用も工事も大がかりになります。
人工窓は、その「住んでから気づいた暗さ」に対して、工事をせずに出せる選択肢です。
- 北側の居室や、窓の小さい寝室の暗さを補える
- 朝の光を再現して、起きやすい部屋をつくれる
- 開けられない窓の代わりに、外の音や景色を届けられる
- ピクチャーレールに吊るせば、壁に穴を開けずに済む
ここは、工務店の皆さんにぜひ押さえておいていただきたいポイントです。お引き渡しのあとに「この部屋、思ったより暗いんです」と相談されたとき、「窓は増やせません」で終わらせず、「工事をしなくても光を足す方法があります」と提案できれば、それだけで他社との大きな差になります。
モデルハウスや打ち合わせスペースに1台置いておくのもおすすめです。図面の段階で採光に限りがある間取りになったときも、実物を見せながら「ここは人工窓で光を足す前提で計画しましょう」と一言添えられると、施主様の安心感はぐっと変わります。

機能が追加され続ける画面
私が使い始めてから数年、本体を買い替えずに風景や機能がどんどん追加され続けてきました。設備として入れても古くなりにくいのは、住宅に組み込むうえで大事な点です。
なお、私が使っているAtmoph Window2はすでに販売を終えていて、今は後継の「Atmoph Window Yo」が出ています。価格は1枚79,800円からと決して安くはありませんが、1枚より3枚並べたほうが窓らしさははっきり出ます。まずは自社のモデルハウスや、暗くなりがちな部屋の1室で試してみるのがおすすめです。
光は、あとからでも足せる
採光は、物件選びや設計の段階でしか解決できないものだと思われがちです。でも、光は「あとから足す」こともできます。
部屋が明るくなると、体内時計が整い、仕事がはかどり、部屋がきれいに保たれるようになります。窓を増やせない家にこそ、光を足すという発想を持っておくと、お客様に出せる提案の幅が広がるはずです。
「暗い部屋をどうするか」は、多くの施主様が住み始めてから気づく悩みです。その答えを先に持っておくことが、選ばれる工務店になるための一つの近道だと私は考えています。
私のリノベーションでは、人工窓は「人工太陽光照明」と並んで、欠かせない道具になっています。
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