実行予算の信用度は?ウッドショックで受注金額から利益を予測できない事態へ

2021/07/2117:06455人が見ました

 住宅業界専門に全体最適で粗利を増やす経営パートナー、出口経尊です。

 さて、タイトルにウッドショックと記載していますが、住宅建築において材料が大きく値上がりしているのは、木材だけではありません。鉄やアルミなどの金属類、その前は生コンと、ありとあらゆるものが値上がりしていると聞いています。直接業務に携わる方は、日々頭を悩ませているのではないでしょうか。
 

私は日頃から、工務店をはじめ、工事会社や建材流通店などの協力会社、さらに建築というよりは製造業に当てはまる建材加工業の経営サポートを行っており、売り手と買い手、需要と供給のように、それぞれの立場からウッドショックの課題を多面的に捉えるようにしています。

 

  

受注金額から利益を予測できない

 

過去のチカラボの記事では、『粗利や粗利率が会社経営の行く末を握っている』と言っても過言ではないとお伝えしてきました。また、返済や万一の備えに必要な利益も同様です。

 

お金のブロックパズル

 

それを踏まえての話ですが、契約~発注~引渡に至るまで多少は粗利や粗利率が増減、特に減少しないように、協力会社と共に自助努力されてきたかと思います。その努力により、坪数や仕様が多種多様でも、受注金額から大よその粗利と粗利率が予測できたのではないでしょうか。

ウッドショックの前までは……

 

特に注文住宅の場合は、完工してから受注金額が売上計上されるため、契約時点からだと6~8か月後に、売上、粗利(決算書だと売上総利益が近似値)、粗利率、利益(決算書だと営業利益)が確定するため、その間に材料が大幅に値上がりしてしまえば、ざっくりとした過去ベースの実行予算だと、売上は経営判断の目安として参考にならなくなります。

 

下図で例えると、12000万円の受注物件で、変動費(原価)1500万円の実行予算だったのが、3か月後に100万円値上がりすれば、変動費は1600万円となり、粗利は500万円から400万円、粗利率は25%から20%に低下します。販管費は過去の決算書などから算出した事務所経費や広告宣伝費などから、わかりやすさ優先でざっくりとした数値を入れています。黒字の工務店だと、利益率は35%が多いと思いますが、いかがでしょうか。

 

ウッドショックによる粗利減

             

仮にウッドショック前は、平均2000万円/棟の新築を年間10棟、完工すれば理論上は売上2億円、粗利率25%で粗利5000万円、販管費4000万円だと、利益は1000万円で利益率は5%になるイメージです。

 

ところが、変動費100万円の値上がりが続くと、10棟完工しても利益は0になります。ただし、販管費には人件費や事務所経費が含まれるため、わかりやすく言うと食べていけますし、返済があっても現預金が潤沢にあれば、今すぐ資金繰りに困ることはないかもしれません。

 

しかし、ウッドショック以前からの問題が重なれば、販管費を補えない状況、つまり赤字や資金難になる可能性もあるのではないでしょうか。

  

 

実行予算の信用度は?

 

工務店の方に質問です。

『実行予算は信用できますか?』あるいは『どの時点から信用できますか?』

耳が痛い質問だとしたら申し訳ありません。

 

でも、実行予算、変動費の予測に関する問題は日頃から多いのではないでしょうか。ここが今回のポイントです。

 

坪単価見積の弊害かもしれませんが、施主様との本契約・もしくは着工前に実行予算が確定せず、そのまま現場が進み、完工してみないと粗利がわからない話は、ウッドショック前からよく耳にしていました。ただでさえ、実行予算の振れ幅が大きい中で、材料が値上がりしていけば、目を逸らしたくなるほど実行予算が増幅して粗利は残らないでしょうし、追加工事で別途費用をもらわず請負ってしまうと、さらに粗利を圧縮します。また、打合せや手配で気を付けていても、手戻りや誤発注による変動費増も出てきます。

 

そうなると、下図のようにウッドショックに合わせて受注金額を100万円値上げして2100万円に設定しても、その効力を失ってしまうのではないでしょうか。

ウッドショックによる値上げ対応

 

実行予算や想定粗利のブレ

 

ウッドショックで木材の調達が容易でない中、実行予算や最終実行金額で粗利や利益をどう残すかを並行して取り組むのは厳しいと思います。ですがもしかすると、今まではそのルールを細かく決めなくても事業を継続できたことで、効率化や標準化などの改善スピードを緩めることに繋がっていたのかもしれません。

 

どの工務店も一定水準以上の受注棟数は必要だと思いますが、建て続けて赤字になるくらいなら、これを機に取り組む実行予算の精度向上や原価管理の仕組みの見直しが、今後の利益確保と発展繁栄の分岐点になるかもしれません。

 

変革が起こるタイミングは、平常時でなく非常時だと捉えるのも前向きな発想の1つではないでしょうか。

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