通りすがりの『住宅団地』にて(2)■土地みたて

2021/09/1118:191159人が見ました

 

習慣になってしまった「土地みたて」

 

 

出先で造成現場や新築現場に出会うとついつい気になって、しばし立ち止まってしまいます。

 

もし、お客様に「どの土地がいいかアドバイスして欲しい」と言われたら、どこやろう? 自分ならどの土地推しでその理由は?実際には誰からも頼まれてはいないのに、とりあえず方針を出すことがどうも習慣になってしまっているようです。

 

 

↑こういう看板を見つけると、つい立ち止まってしまいます(どれか選ばないといけないとしたら…どれやろう?)

 

 

なんでこうなっているの?

 

 

最近、出先で出会って気になったケースです。40区画規模の新規造成の住宅団地です。

この規模になりますと、数社で分担して条件付き宅地として販売することが多くなります。この団地では5社の住宅建築会社で分担しています。黄緑色の区画が事業主の分担区画で、このように端っこの変形地などは事業主が担当するケースが多いようです。事業主は隣接する地主さんとの関係性もあるでしょうし、分担して販売に参画してもらうのは住宅メーカーさんが多いので、規格プランが当てはめやすい整形地が好まれるという理由もあるのだと思います。

 

 

 

↑思い思いの住宅が建ち並んでいきます(周囲が更地状態の現地を案内されると開放的な印象を持ってしまうのですが…)

 

 

条件付き宅地として販売する場合、土地が販売される坪単価が若干お安くなっていることが多いです。土地は割安(正確には割安に見える価格)で販売して、建物でしっかり儲けるのです。建築条件付なので、建物は確実に受注できるからです。販売に苦戦している場合にはその土地の建築条件を外してもらう交渉ができることがありますが、その場合には土地の販売坪単価が2〜3万円は値上がりします。(鹿児島の場合)

 

ここでは売主の会社を含めて5社で分担していますので、ハイペースで契約が進み現地では新築工事がどんどん着工されていきます。出来るだけ周りが更地の状態で見込客を案内して早く決めてしまわないと、売りにくくなることもしばしばあります。もたもたしていると、どんどん住宅が建ち並んでしまい、場所によっては悪材料も顕在化して見込客に気づかれてしまいます。現地での情報が少なくて、ポジティブな想像ばかりをしてもらいやすい更地段階での完売が理想です。

 

 

 

↑少し引いて見てみると、不可解な形のコンクリートブロック積みが視野に入ってきます

 

 

この団地では周囲に隣接している広い残地があって、”管理地” の看板が立ててあります。

現地に訪れると、販売されている土地やそこに建ちつつある建物にどうしても目がいっていましますが、ぐぐっと立ち位置を引いて見てみると色々なことに気づくこともあります。ここでは、鋭角のラインを描いて積まれているコンクリートブロックが気になりました。あらためて区画案内看板を見てみると、若干あやしい雰囲気がします。

 

 

 

↑現況はこのような感じなのですが…

 

 

ここからは、想像の話ではありますが ”分譲地あるある” といったものです。

往来の多いメイン道路などからアクセスしてくる方向や、現地がよく見える方向からは出来るだけ「開放感」「日当たり良好感」を維持するようにします。そういった、目に入りやすい位置には最後に建物が立ち並ぶような順番で分譲するのは、販売サイドとしては言わずと知れた ”鉄則” であります。

 

 

 ↑↓もう一度区画案内図を見てみるとココが販売済宅地に(現況からはそのようには見えません) 

 

 

このブロックで囲まれた場所は区画案内図では販売済み宅地になっています。

また、ブロックの向こうの草が生えている広い残地は現在の分譲が完了した後に ”料理する” 最終販売区画かもしれません。

 

 

↑近い将来、このように道路が入って…

 

 

写真に写っている建物の多くは事業主ではなく、参画してもらっている住宅メーカーの分担の土地でモデルハウスも建っています。ここは事業主として配慮して、この住宅メーカーさんが晴れて完売されてからこの残地を造成・販売するということも大いに考えられます。そうなると、現在ある西側の開放感はほぼ全滅することになります。

 

 

 

↑こんなふうに区画割りをして、販売されるかもしれません

 

 

自分ならどうする?それはなぜ?

 

 

そもそも、この団地は東西方向から敷地に出入りする宅地がほとんどなのに、南北に余裕のない区画割が多いので冬場の日射の取得条件はかなり厳しそうです。平家プランの南隣にがっつり2階建てが建っていたりして、既に「年じゅう日陰」の気の毒な状況になっています。新しく造られた街なのに残念なことですが、販売側のリスクの最小化と目先の資金回収を優先してしまうと、何度やってもこのような考え方になります。

 

もし、どなたかから「この団地で土地を選びたい」とのご相談があったとしたら、

 

①黄緑のエリアから隣接地の環境を見て居心地確保の観点から「安全」な土地を選ぶ

②隣接地がすでに建築済みの土地、または公園に接する土地を吟味してみる

③この団地は見合わせる

 

のいずれかになります。どんどん着工していましたので、1年後にはその結論がよかったのかどうか、現地にて「答え合わせ」ができると思います。

 

といったことを、頼まれてもいないのに立ち止まって想像してしまうのですが、こうして仮説を立てた場所にはまたの機会には通りがかってみてその後の「結末」を見たくなってしまうのです。(多くの場合「結末」は「的中」していますが、その場所の「住まい手」にとっては悲惨なものです)最近、少しタイムラグはありますが、Googleの衛生画像が定期的にアップデートされています。遠方で度々は現場に行けなくてもその後が確かめられたりするので、地方都市においてもとっても便利になりました。朝日放送のバラエティ番組『ポツンと一軒家』なんかはGoogleなしでは成立しなかった番組ですね。そうです。地方格差はなくなりつつあるのです。

 

 

 

あなたの会社では、お客様に「土地を見て欲しい!選んで欲しい!」と依頼されることが多いですか?そのとき、想像力を総動員してお施主様の将来にわたる生活価値を最大化する努力をされていますか?

 

 

 

『土地みたて』にご興味のある方は、通りすがりの『住宅団地』にて をご覧ください。

 

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