『ぱっと見』に騙されるな! ■マンションリノベ ■しくじり先生

2021/09/1821:57801人が見ました

 

やらかしてから「恐ろしさ」が分かる

 

 

マンションリノベーション事業立ち上げの際、何かと気付かない事ばかりでしくじりの連続でした。

部屋まるごとのリノベーション工事は、そもそも壊してみなければ分からない部分があること自体ドキドキな訳ですが、初めての現場では事もあろうに壊した時点で早速やらかしてしまいました。

 

安全に解体工事を済ませたいと思い、新築建て替え案件の際にいつもお願いしていた業者さん(M社)に見積り依頼をしました。しかし、搬出が手運びで大変だとのことでビックリするぐらい高く、相見積もりを取ることにしました。どうもM社はマンション住戸の解体経験が少なかったようで、あまり前向きではない様子でした。

 

しかし、解体工事にも品質があることは新築の仕事を通じてよく分かっていましたので、安ければ良いというものでもなく仕事の質を見極めないといけません。

 

そうした折に別の部屋の解体工事があってE社という業者さんが来ていましたので、作業をつぶさに観察することにしました。少し遠くから来られているようでしたが、実際の仕事を見るのがいちばん確かだろうと思ったのです。

 

管理人さんや住民の方への挨拶、供用部分の養生、駐車マナー、清掃など数日見ていましたが申し分なく、見積りをお願いすることにしました。その現場の職長さんにいろいろ話を聞いて、社長に連絡をしたら数日後に現場に走ってきて下さいました。

 

下見をしていただく際に、先日解体を完了したばかりの別の部屋もお施主さんに許可を取ってもらい見せてくれました。その部屋は丁寧に解体してあり「これなら少々高くても頼みたいな」という気持ちでしたが、出してもらった見積りはM社よりはずっと安く、E社にお願いすることにしました。

 

かくして、慎重に発注先を決めることができ解体工事が始まりました。現場には先の部屋を解体して勝手の分かっている同じ職長さんに来てもらいました。心強い限りです。1日目、2日目と職長さんと要所要所打合せしながら進めてもらい、3日目以降も手慣れたメンバーで順調な様子でした。60㎡もない小ぶりな部屋でしたが、実質5日間で解体工事は完了しました。

 

 

「あー。きれいに解体してくれたー」と思いきや

 

 

 

マンションリノベーションの場合、解体が完了してはじめて駆体や配管が見える状態になりますので、解体後に再度採寸して計画内容を微調整します。「異変」に気づいたのはその採寸作業を行っているときでした。

 

 

サッシ枠が変形、外壁にまでクラックが!

 

やってしまっていました。しかも掟破りの共用部分。

バルコニー側のアルミサッシの枠が変形、外壁にまでクラック(ひび割れ)が走っていました。共用部分の補修には管理組合の許可が必須です。これからというところで、いきなりつまずいてしまいましたが、まずは現状復帰を考えないといけません。E社社長とも協議して、とにかくすぐに理事長さんに補修方法と共に報告、了承を得ました。

 

共用部分とは

 

マンション住戸のアルミサッシや外壁は供用部分と呼ばれ法律上、区分所有者全員の共有物とされています。

 

 

アルミサッシとコンクリート駆体は部分的に溶接固定されていて、隙間をモルタルで埋めてありました。その隙間のモルタルが割れてしまってアルミサッシの縦枠を押し曲げている状態でした。補修作業を行うには、まず割れているモルタルを取り除いてからサッシを真っ直ぐに矯正してから再度モルタルを詰め直す必要がありました。幸い外壁のクラックは浅く塗装部分のみでしたが、その部分の補修はリノベーション工事完了後に行う事にしました。

 

 

 お助けマン登場。(削岩機には引きました)

 

 

 割れて亀裂ができて、膨れてしまったモルタル部分を少しずつ砕いています

 

 

 

削岩機作業完了。鉄筋とサッシ縦枠の溶接箇所があらわに

 

 

アルミサッシの変形を修正後、新たにモルタルを充填完了

 

 

 『しくじり』は連鎖する

 

 

実は、もう一箇所ひどいことになっていました。

 

こちらもアルミサッシが変形しているのですが、サッシと木製枠材を固定するビス穴がちぎれてその部分がくの字にひん曲がっていました。これを見た時はさすがに絶望的な印象を持ちました。しかし、世の中には特殊な技術を持った人がいるもので「直せる」との事で迷う事なくすぐにお願いしました。

 

 

こちらのサッシ枠はネジ穴が引きちぎれ、大きく曲がっています

 

 

2人目のお助けマン。美術系の小道具多数。聴いてみたら「絵を描くのが本業ですー」との事でした

 

 

パテのようなもの(企業秘密)で形を修復し、この後ぴったり色合わせした特殊塗装を施します

 

 

すごい。まるで新品のように元どおりになりました!

 

 

『しくじり』から学べるか 

 

 

2箇所共原因は明白でした。どうやらサッシ枠に木製枠材が取り付いたまま、無理やり引っ張って取り外したみたいでした。木製枠材をサッシ枠に固定しているビスの山がつぶれていて、ドライバーでは回せなかったのだそうです。

 

さらに「事情聴取」していきますと、いろいろ「新事実」が明らかになってきます。

 

3日目までは毎朝現場に通っていたのですが、4日目からは別件もあってその日の完了後の確認になっていました。てっきり同じメンバーでやってくれていると勝手に思っていたのですが、4日以降現場に来ていたメンバーは殆ど別部隊だったそうです。また、信頼できる職長さんも別の現場でトラブルが発生して現場には来れず、電話での指示のみで作業を進めていたとの事でした。慎重に見極めて依頼したつもりでしたが、解体工事の現場では日替わりで人が入れ替わるのは、どうやら普通にある事のようでした。知らなかったのは自分だけだったのです。

 

色々な方の知恵と技術を借りて、リカバリー策としての補修作業はうまく出来ました。理事長さんも、「今後の参考になりましたね」と声をかけてくださいました。このマンションでは理事長さんが元ゼネコンの方で法務と現場に詳しく、大変理解のある方でした。そのおかげで今回の一件では問題発生後もスムーズに事が運びました。そうでなければ、こういった事案は管理会社を巻き込んだ上に理事会などでの報告や判断が必要となり、解決するまでには相当な時間を要するところだったと思います。

 

結果的にここではいい経験をさせていただいた訳ですが、後からいろいろと振り返りました。

今回のような思い込みと結果の相違が著しいことは、よくよく考えれば日常よくあることです。 ユーザーは何らかのサービスを求めて依頼先を選ぶ場合、吟味する上での情報を収集します。 しかし収集した情報源が実際のサービスとは違っていて、がっかりするケースは誰しも経験のあるところだと思います。

 

むしろ、フェイクニュースよろしく誇大気味の広告は常態化していて、むしろ常識になっている感さえあります。例えば、綺麗なモデルさんばかりの会社紹介ホームページや他社の施工事例満載の住宅会社のパンフレットなど、よく見ていくと最近そんなものが溢れています。

 

フェイクイメージでの事業展開はインスタントに横展開ができるので、金太郎飴のように全国的に全ての業界に拡がっています。そういう事情もあってプロモーションの重心がより信頼感のある個人発信のSNSに移っていったとも言えると思います。SNS運営サイドの収入源でもあり、追いかけるように企業広告がどんどんSNSにも流れ込んできています。乗り遅れるまいと、わざわざSNSアカウントを複数開設してコピペで記事を量産しているような事例も急増中です。

 

「本当の顔」で失注してしまうよりは「嘘の顔」でもいいから受注を取りたいというのが本音でしょうが、現代ではその考えは大変危険です。かしこく立ち回っているつもりでも、ネットで多くを見ているユーザー側からはその発信がオリジナルでない事など意外と容易に推察出来てしまうからです。

 

何らかのサービスで「嘘の顔」に騙されたり間違えた事がある人は、フェイクイメージにとてもセンシティブになります。直感一発で分かってしまうのです。これほど世の中に蔓延していれば、あたりまえと言えばあたりまえです。K社社長は「下請けまかせ、その場限りの人員手配。その日、誰がどこで仕事してくれたのか?分からないで日々やり過ごしていました」「せっかく依頼してもらったのに、こんな仕事をしていてはいけませんね」と補修費用は全額負担してくれました。

 

せっかくならば『しくじり』からは学ぶべきであると誰もが思ってはいます。しかし、日常の『しくじり』から学べるかどうかには、ある条件が必要です。ずっと先の未来に確固たる「目的」があってこそ、そこから学べるのです。目の前の仕事を終えることが「目的」であってはいくらその機会があっても学べないのです。まだまだ年齢的にも若いK社社長には、ずっと先の「未来」と「目的」があったのです。

 

 

あなたの会社では、お客様から『本当の顔』が見えるようになっていますか?また、その顔をお客様の信頼に値する『リアルな顔』になるよういつも気にしていますか?

 

 

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