リノベーション事業ならではの数字の分解と具体策

2022/08/2019:5993人が見ました

■今回は次のような方々におすすめする内容です

□「リノベーションの知識、施工品質には自信があるけど、集客、営業面に課題があり、解決したい」という方

□「数字のチェックで止まっていて、具体策までには至っていない」という方

□「リノベーション事業ならではのPDCAについて知りたい」という方

 

■各クライアント企業の個別課題と具体策をつなげることはコンサルタントの大きな役割の一つ

 「一体、コンサルってクライアントに対して、何をしてるんだろうね」こんな声を耳にすることがあります。コンサルタントに対して、読者の皆さんはどのような印象をお持ちでしょうか。論理的に説明するというイメージでしょうか。それとも、うさん臭い、あるいは口先だけの評論家というイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。他の先進国に比べて日本国内でのコンサル浸透率が極端に低いのは、過去に出会ったコンサルタントとの相性や印象が芳しくなかったり、カタチのないものを信用しなかったりといった理由があるからかと思います。

 読者の方からどのように見られているかはわかりませんが、本来、業績アップ支援型やビジネスモデル構築を目指すコンサルタントの大きな特徴の一つに「問題箇所や課題を共有し、業績アップに向けて具体策を提案し続けること、さらに実行を促すこと」という役割があります。そこで今回は、リノベーション事業に関する数字の分解と課題に対する具体策の一例を紹介したいと思います。

 まずは数字を分解するところから見ていきましょう。

 

■数字を分解する

 「現状の数字を知らずしてディスカッションしても仕方がない」「数字という事実を押えれば具体策はより良質なものになる」「分析とは比較すること」という考え方をもとに、まずは数字を分解することが前提となります。私が専門とするリノベーション事業の集客、営業面における数字として、今回は来場組数、見積提出率、設計契約率、平均単価の4つに絞り述べていきます(その他に質的な数字である2000万級リノベ客比率、さらに細かく分けると着座率、セミナー誘導率、現調アポ率等があります)。

 数字を分けて検証することにより、課題が絞られて、どこに重点を置くのか、適切な具体策は何かというステップへ進むことができます。具体策に対しては短絡的、表層的になりがちですが、数字を分解し、問題箇所と具体策とのつながり(因果関係)に整合性があれば、課題解決の精度が高くなります。分析で止まりがち、あるいはいきなり提案から入りがちな我々コンサルタントこそが陥らないよう気をつけなければなりません。

 各数字は自社の目標との比較が基本ですが、分解された目標が設定されてない場合は業界指標との差異が判断基準です。業界指標に関しては、常に複数の現場に出向き、一次情報を蓄積し続けることで確かな経験則となり、商圏人口や競合状況等エリア特性も考慮し数値化していきます。

 次に、各数字のズレと課題に対する改善策(業績向上策)の一例を紹介します。

 

■来場組数(集客)が目標値より足りてない場合(成約数の約5倍確保が指標)

 まずは集客です。起点となるリノベ案件が足りていない場合、どのような具体策が候補になるのか解説します。リフォーム事業と違い、リノベーション事業はリピートという概念はほぼありませんので、いかに新規リノベ案件を最大化できるか、さらに分解が必要な場合は次アポ率まで含めて、効果、販促コストや要するエネルギー、実現可能性等から優先順位を検討します。

<具体策の候補例>

① 完成見学会開催の最大化

 構造、完成、過去客宅の見学会候補をリストアップし、年間販促スケジュールに落とし込みます。リノベーション事業において見学会は最適な手法の一つであり、開催数と業績が比例すると言っても過言ではありません。「見学会1開催、1リノベ受注」が指標です。完成時の見学会と、さらに構造見学会のロングラン開催(完全予約制)を企画することも候補です。

② 見学会以外の販促企画の可能性を探る

 スライドバナーやイベントページ等WEB上で告知するだけの企画も含め、相談会やセミナー等検討します。リノベ事業年商5億円規模ですと、大小含め月に2回は販促企画がほしいところです。テーマとしては検索ボリュームが大きい建て替えや費用に関するものが定番です。

③ WEBコンテンツの強化

 自社の各顧客接点において、自社の独自固有の強みやリノベーションと関連性が高いテーマを見極めてコンテンツの強化、アウトプットの最適化を図ります。性能関連の情報、前述の通り、建て替えとの比較や費用等が基本ですが、地域によっては古民家も重要キーワードです。施工中ブログも含め、更新頻度と質で信頼度を高めながら「この会社のコンテンツをチェックしておけばリノベーションが成功する」と思ってもらえることが到達形です。

 その他、リノベ需要が会社所在地ではなく、隣接都市や郡部に多く分布すると判断できる場合は、いかに狙ったエリアから反響獲得するか打ち手を考えることもあります。

 ここでのポイントは、紙媒体、WEB、店舗に一貫性がある企画を継続的に打つこと、目先の数字だけでなく、中長期的な案件創出という狙いも含みます。その他、年間販促予算の中で即効性の媒体と遅効性の媒体、それぞれの最適配分も大切なテーマです(売上目標に対する年間販促比率は本格参入初年度なら3%、2年目以降は1.5%が指標です)。自社の商圏で市場の掘り起こしや需要喚起を試みることは費用対効果の観点で敬遠されがちですが、販促予算の範囲内でそうした姿勢も求められます。

 

■見積提出率が目標値より低い場合(来場からのセミナー参加率=60%、さらにセミナーから見積提出に至る率=60%が指標)

<具体策の候補例>

① セミナー誘導の強化とセミナー内容のバージョンアップ

② 概算提示の仕組みづくりやスケジュール営業などトークへの落とし込み

 ここでは、セミナースライドのつくり込みによるランクアップの強化や価値観の共有、概算の坪単価表の精度向上、スケジュールシートといったツールの強化と活用など仕組みづくりが主な候補となります。具体策として実行することが決まれば初回面談のロープレを繰り返し、事業部の営業担当全員でブラッシュアップを図ります。ここでは雰囲気ややる気といった要素には極力目を向けず、自己開示、会社の強み、動機(優先順位)、予算、希望時期、競合の有無、キーマン、アポ取りなど初回面談ならではのチェック項目に焦点を当てたロープレになっていることがポイントです。

 

■設計契約率が目標値より低い場合(見積り提出から設計契約に至る率=標準的なエリアで60%が指標※競合状況にもよる)

<具体策の候補例>

① 3パターン概算提示の精度向上

② 競合対策も意識しながら、独自固有の長所の磨き込み(ツール化とトーク)

③ クロージングのロープレ実施

 リノベーションにおいて成約に至るプロセスはデザイン力やプランニングなど属人的になりやすい部分ですが、ここでは営業手法という側面での可能性を探る一例を取り上げています。ロープレではテストクロージング、主導権営業などクロージングを想定したチェック項目を決めて取り組みましょう。手法とは言え、課題に対して、フィットした具体策なら成約率が10%以上アップすることもあります。

 

■平均単価が目標値より低い場合(リノベ単価が2000万円を下回る場合※リフォーム除く)

<具体策の候補例>

① 見学会開催の強化、同時に全体のアウトプットの整備

 来場組数の具体策と重なりますが、入口であるリノベーション見学会の開催数を増やせれば、比例してリノベ案件が増えます。同時に全体を通じて、誰に(ターゲット)、何を(訴求)を見直し、整えます。当然、水まわりリフォーム業態とは打ち出すべき要素が異なりますし、リノベーションの2000万円は新築の2000万円とは客層が全く違います。紙媒体、WEB、店舗等の顧客接点がリノベーション事業としてふさわしい一貫したアウトプットかどうかという観点は特に重要です。

② 診断営業によるランクアップ

 診断チャンスを活かし、表層的なリフォーム案件から性能向上をともなったリノベーション案件へのランクアップを図ることも単価アップ策の一つです。

 平均単価に関しては認知度アップとリノベーション施工事例の蓄積に比例して、年々高くなっていくものです。ただ、リフォーム出身の場合は平均単価が低くなりがちで、注文住宅出身の場合は参入直後からでも単価が高くなる傾向がある等、会社(母体)イメージにも左右されます。そうした背景もある中、単価アップを図ることは簡単ではありませんが、見え方を調整しながら打ち手を決めていく必要があります。

 中には単価1000万円未満の成約率は60%超、単価1000万円以上は30%程度といった例もあるかと思いますが、その場合はさらに個別数値をチェックする等課題の所在を深掘りし、対策を考える必要があります。

 

■さいごに

 いかがでしょうか。マーケティング先行ではなく、建築知識や施工力を満たしていることが前提ですが、それらを押えた上でリノベーション事業の集客や営業面を強化させたいと思ってらっしゃる方にとって、ヒントや気づきになればと思います。

 引き続き、私も一連のステップを愚直に繰り返し、個別課題に対して常に最善の提案ができるよう、励んで参ります。

 

 

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