首都圏マンション事情通信(3) ■マンションリノベ

2022/11/1211:38145人が見ました

 

首都圏マンション事情通信(2) からつづく

 

 

バブル時代の「デジャヴ」

 

今から25年ほど前のこと、大阪での注文住宅営業マン時代に同僚のKさんが阪急沿線の山手に新築マンションの住戸を購入しました。広いゆったりした間取の部屋で、ゴルフの前の日にはよく泊めてもらっていたのです。そのマンションにはもう一つ「売り」がありました。当時としては斬新であった共用施設「フィットネスルーム」でした。しかし、Kさんが利用することのないままに、マンション販売終了まもなく施設は閉鎖されてしまいました。その後も、入居者と事業主・販売会社・運営会社が長きに渡って訴訟で争うというような事になっていたのを思い出しました。

 

当時、立地条件で劣る物件ではそのような「客寄せパンダ」的な共用施設を持つプロジェクトが林立しましたが、運営コストと当初設定した入居者の負担が見合わずに次々と「閉鎖」されていきました。今から思えば元々の収支計画が甘かったと言わざるを得ない内容でしたが「完売」するための常套手段として多用されていた時代でした。当然のことながら中古物件としての価格は急激に低下し、リセールバリューは吹き飛ぶ結果となりました。また、それだけではなく閉鎖されて無駄になってしまった共用部分維持のための住民負担が、増額されるような酷いケースも中にはありました。

 

現代の物件ではもうそのようなことは無いのかもしれませんが、首都圏に林立する新築マンションの、あのものすごく充実した共用施設を見ていると恐ろしくなります。ちょっとしたデジャブ感があるのです。超高層のタワーマンションでは1000戸超の物件もあります。当然、入居世帯数が多いので、あれほどの共用施設の維持ができるのだと思いますが、仮に負担できる所有者が減少してしまったらどうなるかは分かりません。

 

生活に必須である共用部分についても通常の規模のマンションとは比べ物にならないコストがかかりそうです。今どきの超高層マンションではエレベーターは何台もあり、ゴミ集積所も各階にありますし、清掃や敷地内の維持管理、コンシェルジュだ防災センターだとちょっと考えても大変そうです。

 

高級ホテルのような施設とサービス付きのマンションライフが「売り」のようですが、実際には居住者からは賛否があるようです。「同じマンションの住民だけの共用施設など利用したくない」という声も実は多く「村社会っぽい」「贅沢な公民館みたいだ」という反応も少なくないようです。ホテルのように普段の費用負担はなく、使いたい時だけ利用料を払って使うのならいいかもしれませんが、使わない人にとっては過剰なランニングコストの源になります。

 

一般的に新築マンションの修繕積立金は築10年あたりから負担額が増していく仕組みになっています。おそらくは売却する人もその前あたりから増えてくるはず。付帯施設が贅沢な割には、ホテルのような受益者負担を前提とした選択性がないところが問題かもしれません。後々、理事会での「もめ事」の種になりそうです。

 

 

施工技術の「イノベーション」

 

これまでマンションの販売資料の図面にはそれぞれの住戸の間取り図のみというのがほとんどでしたが、大形物件の最近の傾向として全体の平面図が入っているものも増えてきたようです。見込客が購入条件として気にしているであろう構造・共用施設や機能・エレベーターの数などをアピールする意図もあるものと思われます。

 

現在施工されている大型物件では、排水管などが各階を縦に貫通しているパイプスペースが全て廊下側に配置されていて、住戸の中にないものもあります。排水音が普段過ごす室内で聴こえにくくなりますし、リノベーションの際にもプランの自由度が確保できるのでとてもよい設計かと思います。

 

人が感じる「感情」は、実は人類共通といえるようなものではないそうです。多くの部分が、後天的なその人の「経験」から来る「社会的合意」によって決定づけられているそうです。その人の脳がその人の「経験」を使って「予測」して作っているのがその人の「感情」なのだそうです。人であれば共通であるように思える「感情」についてさえ、実は人それぞれに違った反応のロジックがあるのです。

 

言い換えると、社会的に他者から受ける多くの「刺激」や「経験」が、その人の感情表出にも多大な影響をしているということです。そう考えると、目にする新築マンションの情報がことごとくニューヨークっぽく写真が絶景で住まう人が幸せそうに見えたりすると、その見た目の「価値観」が購入する「喜び」に結びついていくことは何も不思議なことではありません。

 

また、超高層のマンションでは可能な限り建物を軽量化するために、住戸間の界壁はコンクリート構造ではないそうです。これは乾式壁と呼ばれる仕様で、軽量鉄骨+グラスウール+石膏ボードという構成が一般的です。低層のマンションでは殆どの場合、界壁は鉄筋コンクリートで、それに比べると乾式壁は遮音の面では不利であることは間違いありません。

 

このことについては、「音漏れが激しい」とか「試験をして認定を受けた工法なので耐火性・遮音性ともに問題ない」といった相反する記述が書籍やネット上では見られます。これは、おそらくどっちも正しい意見かもしれませんが、掃除機をかける時など直接壁にものが当たる音はよく聞こえてしまうようです。居住者を巻き込んだ「界壁論争」に影響されて、新しい物件では品質に関する資料に界壁仕様についても説明がなされるようになってきました。

 

 

 

 

全ての住戸のパイプスペースが廊下側に配置されています

 

 

 

超高層マンションでは住戸間の界壁はコンクリート構造ではないのです

 

 

 

「リノベーション工事」のときどうする?!

 

自らの購入意思はないものの、リノベーション工事経験者としては将来こういった物件での工事の際のことが気になって仕方がありません。工事車両の短時間の駐停車場所、解体工事の際の搬出経路、養生範囲と方法、挨拶まわりの軒数など、工事のことを考えると気が遠くなるような建物です。

 

デカすぎて現場までの動線が長過ぎますし、中廊下と呼ばれる外部に面していない廊下は工事中十分な換気は難しいでしょう。また、仕上げが豪華で綺麗すぎて、工事中に台車を押してウロウロしているだけで怒られそうです。また、職人さん達の工事中のトイレはどこまで行かなくてはいけないのだろう?とか、複数の部屋の工事が重なった場合のエレベーターの状況なども、考えただけで倒れそうになります。(一般的にパブリックスペースにあるトイレは出入りの工事業者は使用不可であることがほとんどです。ギリギリまで我慢してコンビニに走って行くのです)

 

さらに、お隣さんとの界壁がコンクリートではなく乾式壁の場合、やわらかいので「工事中傷つけてしまいそう」とか「ビニールクロスをきれいに剥がせなさそう」と思います。タワマンで採用されることの多い斜めスラブだったりすると、工事中に既存の床を解体・撤去した状態になると「養生テープが転がったり、歩きにくかったりするやろな」とか「床の高さ調整するのに色々な足の長さの部材が必要になるから発注大変かも」など、ついつい考えてしまいます。

 

 

 

 

リノベーション工事の際のことを考えると、この立派で大きなパブリックスペースにひるみます

 

 

 

水回り部分の床下に排水スペースを確保しつつスラブ段差部分の梁をなくす工夫です

 

 

長寿命かつ大規模なマンションプロジェクトが増え、個別住戸のリノベーション工事ということも一般的に想定される時代になっている割には「所有者」の「未来」にフォーカスされた物件はまだ見当たりません。長期所有者または中古購入組の所有者にとっては先送りされた問題が満載です。超豪華な共用施設の予算の一部を将来のリニューアル工事のための工夫にあてていただくと良いのになと切に思います。(リニューアル用の設備は新築後しばらくは価値を感じにくいかと思いますが、10年を超えた頃からは大活躍するものと思われます)

 

 

社長の会社ではマンションリノベーションを事業化されていますか?また、今建てられている物件が1015年経った頃にどうなっているか、考えた事はありますか?

 

 

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