「季節を捉える」という事 ■続・家づくりの玉手箱

2023/04/0818:53161人が見ました

庭木の「再起動」

 

毎年、春になるとサクラの花が咲いて気分をあげてくれます。サクラは華やかで目立つので「号砲一発」という感じはありますが、庭にある他の木々も芽を出して、それぞれの流儀で「再起動」しています。

 

西日本で生活してきた私の場合は、卒業や入学などの節目とも重なり「サクラが咲くと春が来た」という感覚がありますが、人によっても春の感覚は違っているのであろうと想像します。海や山に近い人は生き物の活動によって、雪国であれば「雪解け」のぬかるみや川の増水などで感じるのかもしれません。

 

人と同じように植物も春への反応が微妙にずれているようです。庭の植物を見ていると、毎年チームの「打順」のように芽を出す順番が決まっています。かれこれ20回も庭に春が来ていますが、最近になって気が付きました。ずっとサクラばかりにに気を取られていたのです。

 

 

植物が語る季節の本質

 

自宅の庭木の芽吹きを「打順」に沿って紹介します。最初から最後までは前後2週間ぐらいです。

 

①自宅のキンモクセイは四季咲きのもので、年に何回も花と香りが楽しめます。春の芽吹きの際も少しですが、いっしょに花を咲かせます。いそがしいやつです。

 

 

↑花を咲かせながら葉芽を出すキンモクセイ(常緑)(左)とその新芽(右)

 

 

②アジサイの花は咲いた後にしっかり切り込まないと、だんだん数が減ってしまいます。しっかり切り込んでいたら目立たなくなってしまいます。浄化槽の側のは、点検の度に踏みくちゃにされペシャンコになってしまいます。

 

 

↑アジサイ(落葉)の新芽(左)と梅雨時の花(右)

 

 

③クスの葉芽は遠目で木の色が変わるほど一斉にたくさん出てきます。そして時期を同じくしてそれまでの葉はいっせいに枝から離れて落ちていきます。庭の落ち葉を踏みしめていると山の中のようです。

 

 

↑クス(常緑)の新芽(左)と役割を終えた春の落ち葉(右)

 

 

④やさしい黄色のヒュウガミズキはゆっくり育つ低木です。花は半開きの、すずらんのような形ですが蕾のときが日本画のようで美しいです。

 

 

↑ヒュウガミズキ(常緑)の花芽(左)と開いたばかりの花(右)

 

 

⑤お風呂の前のモミジは毎日見ていますので、芽吹くとすぐに気づきます。葉芽がひらいた瞬間から手のひらのような形をしています。

 

 

↑モミジ(落葉)の葉芽(左)と新芽(右)

 

 

⑥毎年注目のサクラの花芽は薄緑からピンクに変わって、その後すぐに咲き始めます。枝にいっぱい蕾が並んでいる時は「ひなあられ」のようです。

 

 

↑サクラ(落葉)の花芽(上)と満開の花(下)

 

 

⑦自宅のトキワマンサクは赤で、サクラの花とセットで咲くと濃淡がきれいです。花芽の段階でサクラより濃い色をして、その鮮やかさを隠しきれないでいます。

 

 

↑トキワマンサク(常緑)の花芽(左)と咲き始めた花(右)

 

 

⑧ヤマボウシは常緑と落葉の両方があります。自宅では玄関前の目隠しに常緑のものを植えてもらいました。何年かに一度気まぐれにたくさんの花をつけます。

 

 

↑常緑ヤマボウシの新芽(左)と花(右)

 

 

⑨自宅の木塀を覆うカズラもあちらこちらに無数の小さな赤い芽をつけます。見た目はかわいいですが、その生命力には圧倒されます。

 

 

↑カズラ(常緑)の赤い新芽(左)と木塀を覆う葉(右)

 

 

⑩庭に植えたキウイフルーツが大きくなって2階のバルコニーで拡がっています。雌株・雄株両方植えましたが片方は枯れてしまって実はなりません。花が咲かないと雄株・雌株の区別はつかないそうです。

 

 

↑もふもふのキウイ(落葉)の葉芽(左)と新芽(右)

 

 

⑪シマトネリコは大量の種が落ちて自生してきますので、庭中に幼木が生えています。芽吹きは人と同じで、幼木のほうがだんぜん早いようです。幼木の葉芽は明るい緑で曇天でも光を放ちます。

 

 

↑シマトネリコ(常緑)の幹からの新芽(左)と種から自生している幼木(右)

 

 

⑫まるいハート型の葉っぱがかわいいカツラは、他の植物に遅れて芽吹いてきます。まるいハート型のまま大きくなった葉は、薄く透け感があって真夏になっても光のグラデーションが見事です。

 

 

↑カツラ(落葉)の新芽(左)と茂った夏の葉(右)

 

 

このように植物が季節に対して変化を発現するタイミングは少しづつオリジナルのタイミングがあるようです。季節は場所・時期により多様であることを植物が教えてくれます。

 

 

季節を語るも1年をとらえず

 

住宅ビジネスの世界でも季節を扱うことが増えてきています。エネルギー利用を最小限にしつつ、快適な設計を語る際には季節を捉えることは必須です。

 

その中でも日照の変化については建物の断面図とともによく登場しています。冬の日射取得や夏の日射遮蔽を有効に活用したパッシブ設計を売りにする場合は特に大切です。

 

概念の説明用としては太陽高度が最高になる「夏至」と最低になる「冬至」を例示するのがわかりやすいです。学校でも習った絵なので馴染みがあります。

 

しかし、現実には日々少しづつ太陽軌道は変化し続けています。そして、年間のエネルギー使用量となると1年の累計で捉えないといけません。

 

時として「夏至」と「冬至」だけで太陽を捉えると「木を見て森を見ず」になってしまいます。生活をしていて本当に暑かったり寒かったりする時期は、実際にはもう少しずれていることからもそう言えます。

 

これまでは、年間を通じた「累計」で試算したりすることがとても面倒で手間もかかるので大規模な建物に限られていました。現代では手軽ななツールやソフトも普及して、住宅規模でもそういった計算をされるビルダーもわずかながら増えてきました。このように「季節」を説明用の「類型」で捉えるのではなく、年間の変化の連続で捉えて対応する考え方は有用であり社会の進歩といえます。

 

いっぽうでは「時流」に乗っかって「ごまかし」をする人が必ず登場します。いつの世でも流行ってくると必ずと言っていいほど湧いて出てきます。依然として「夏至」と「冬至」の、学校でも習った絵を用いてよいイメージだけを植え付けようとする輩です。

 

先日もそういった絵を見かけました。「夏至」と「冬至」の南中高度の図です。そもそも「夏至」と「冬至」は1年のうちのそれぞれ一瞬を示しています。そして太陽高度が最も高くなる「南中」は1年のうちの一瞬の中のそのまた一瞬の出来事です。

 

見かけた絵(下図)は表記してある角度と描いてある線の角度が違っているのです。性能をイメージさせるのに有利な部分だけが実際と違っていましたので、意図的なものだと推測されます。仮に、言っている事そのものは正しかったとしても、こういう事をする企業は信頼に値しません。

 

 

【左図】50〜70度と表記されている線は実際には35度(赤)で描いてあります。50度の線は正しくは(緑)の線になります。80度の線はあっています。

 

【右図】30度と表記されている線は実際には18.5度(赤)で描いてあります。30度の線は正しくは(緑)の線になります。

 

 

こういう図をよく見ます(角度をごまかすのはやめましょう)

 

 

設計者たるもの、これからの世の中季節を夏冬といった単純な類型で捉えるだけでは不十分、1年の変化の累計で捉えるべきと考えます。しかしそれ以前の問題として、見た目を都合よく偽装する人は、本当絶えないものですね。

 

意図的であれ、意図せず無意識であれ、そのようなことはスタッフにさせてはなりません。

 

 

社長の会社では、季節を意識した住まいの提案をされていますか?その際の季節とらえ方は4つですか?連続する日々の変化でしょうか?

 

 

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