霞ヶ関と巷の『ブラック』比べ ■売れる力とは?

2024/04/2911:58393人が見ました

霞ヶ関の「人材不足」が物語るもの

 

 

テレビで「国家公務員の勤務実態が酷い」という特集がありました。若手の離職や採用難が深刻化しているというのです。特に霞ヶ関の中央省庁勤務の職員は、今だに土日なしで24時間対応できる人間が「フルスペック人材」でスタンダードなのだそうです。

 

若い職員の中には「現役時代の大変さは退官後の天下りで取り返す」というこれまでのような雰囲気はなく、本省勤務で体調を崩しての長期休業経験者は感覚的に1割にも上るというのです。(令和2年度の地方勤務を含めての国家公務員全体では1.54%

 

最近では国家公務員でも女性の採用比率が3割超まで上がってきているそうですが、女性官僚を3割採用して比率が増えても、出産を機に勤務に制約が出てくる(普通の働き方になる)と「特殊な事情があるので配慮が必要な職員」ということになるそうです。少子化対策を先導すべき中央省庁が少子化になってしまうという状況なのです。

 

どうしてそのような働き方になってしまうのでしょうか?それは、主に「国会対応」だそうです。質問内容を質問者の議員が省庁に事前に伝えることを「質問通告」といいます。国会中継などを見ていると「通告されていないのでここでは答えられない」と総理や大臣が答弁しているアレです。

 

揚げ足取りをしたい野党議員は手のうちを知られないようにあえて「事前通告」をしなかったり、締め切り時間ギリギリにあいまいな内容で通告したりするのだそうです。「事前通告」の締め切りは国会審議の前日夜までです。各省庁の官僚は自分の部署に関係する質問が来るかもしれないので、質問内容が分かるまで職場に待機。関係する質問が来た際にはそこから徹夜して翌朝までに「想定問答」を作成するのだそうです。

 

そんなこんなで戦力が低下している霞ヶ関界隈ですが、どうやって必要なマンパワーを維持しているのでしょうか?実際にマンパワーを補充しているのは民間企業と県庁や市役所などからの出向者なのだそうです。「働き方改革」の旗振り役である厚生労働省でも、本省勤務は「ブラック」そのものなのです。

 

 

↑精神及び行動の障害による長期病休者数及び全職員に占める割合の推移(「精神及び行動の障害」には、「神経系の疾患」のうち「自律神経系の障害」に分類された者の数を含めて計上)

 

 

↑国家公務員採用試験申込者数(I種・II種・Ⅲ種(平成23年度まで)及び 総合職・一般職(大卒・高卒))の推移

 

ともに人事院 令和3年度 公務員白書 より

 

 

 

解消しない「ミスマッチ」の根源はなにか

 

 

労働市場では様々なミスマッチが発生しています。特に都市部における事務的職種への過大な労働供給、保安・建設系職種への過少供給が著しいと言われています。そういった背景から「リスキリング」などという言葉も飛び交うようになりました。

 

ここで、気になる点が2点ありました。 霞ヶ関のエリート官僚がなぜ辞めていくのか?そして志望者が減っていくのか?というのが1点目です。辞めていく彼らの生の声として「誰かに急に指示されて対応する仕事が多い」「国民のために役立っているという実感が得られにくい」という声が多いのだそうです。「国民」を「顧客」に置き換えれば、民間企業でよく聞かれる声と同じであることに気づきます。

 

国家公務員は国という大規模組織の一員です。大規模な組織では固定費が増大します。最近の傾向としてデジタルツールを用いることで仕事の結果の判明が昔より早くなっています。そうした要因から短期的な目標に目が向けられていきます。国も自然に任せていると税収も伸び悩み、国際的な変化対応も有権者へのアピールも年々早い結果が求められるのです。(選挙を控えた国会議員はそのような傾向が顕著です)

 

次に2点目です。
上記の結果「自己肯定感」を喪失してしまうのだそうです。これも民間企業と共通の問題です。「自己肯定感」という言葉も比較的最近の言葉です。自らの在り方を積極的に評価できる感情や、自らの価値や存在意義を肯定できる感情などを意味します。

 

人それぞれの持つ「自己肯定感」の起源には「幼いころに大人から尊重されて価値を認められたり励まされたか」といったことが影響するようです。しかし、最も強く影響があるのは「自分自身で在り方を選択したか」ということなのだそうです。

 

言い換えれば、自分の可能性を実現したいという気持ちから「自らの生き方を変える」ということから自尊心が育まれていくのです。しかし、現代の大人は、そういった経験が不足している人が多いのだそうです。日本人は、遺伝子的にも心配性でネガティブ思考が強くなりがちな傾向があるそうですが、国別の高校生による調査でも「自己肯定感」の違いが現れているようです。(関連記事 見込客とスタッフの『脳科学』1をご覧ください)

 

 

↑国立青少年教育振興機構 高校生の生活と意識に関する調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較-より (自分自身についての考えで「とてもそう思う」「まあそう思う」と回答した者の割合)

 

 

 

減少する「志願者」をどう獲得するか

 

 

今後、若い世代ほど絶対数が減少していく事は決定的になっています。単純にに数の上では働き手の確保が困難になる傾向です。採用の最前線である大学では、募集定員が満たされない大学が増えているようです。

 

日本の大学は国立大学、公立大学、私立大学などに分かれていて、2022年時点では全国約800の大学のうち私立大学は4分の3600校以上、学生数でも同程度の割合を占めています。そして私立大学のうち、実際に入学した学生が定員に満たなかった大学が約半数の47.5%と過去最高を記録。しかも充足率が80%未満の大学が19.4%で、2021年の14.2%から大幅に上昇しています。

 

この30年ほどで進学率は上昇しています。若年層の人口減を進学率がカバーしてきたのがこれまでの傾向だったことが分かります。海外留学を含め、生きていく上でより実践的な選択肢が増えて、進路が分散していることも一因のようです。

 

■大学進学率
1990年:24.6

2022年:56.6

 

■短大進学率
1990年:11.7

2022年:3.7

 

■高卒就職率
1990年:35.2

2022年:14.7

 

18歳人口は確実に減少傾向ですが大学進学者はそこまで減っておらず、1990年の大学進学者数は492000人、2022年には635000人、大学数は1990年に507校、2022年には807校に増えたのです。一方、1990年には593校あった短大は、2022年に309校と半減しました。教養分野の学部構成で運営されてきた複数の女子大が募集停止を発表していますが、女性の就学がより社会での実戦力を求められている中で時代の流れと言えます。

 

小中学校に通う児童生徒も大幅に減っています。2020年では全国で約956万人と、2010年より100万人近く減少。10年間で児童生徒が30%以上減った自治体数は、全国1892市区町村のうち346に上りました。特に郡部では過疎化も相まって学校の統廃合や休校が加速。小中学校は2020年には29793校と、10年間で約3千校も減りました。明らかに国の形が変わろうとしています。

 

 

↑公立学校の年度別廃校発生数(平成14年度~令和2年度) 文部科学省 令和3年度廃校施設等活用状況実態調査及び余裕教室活用状況実態調査の結果についてより

 

 

大学の中でも定員充足率を「新設学部」や「奨学金」などで改善した大学もあります。地方の自治体の中でも「制度設計」や「助成金」により出生率改善を見事に実現している自治体もあります。自治体では「ふるさと納税」による税収増加にも明暗が分かれてきています。

 

ここで共通するものは「結局決まったパイの取り合い」であることです。絶対数は減り続けている中で、一部の者がシェアを増やしているだけなのです。主に「勝ち組」が広く報道されますが、その陰で「負け組」の存在があります。「勝ち組」は周りの「負け組」から奪って成果を出しているというのが現状の結果です。

 

当面のところ、様々な分野で「パイの取り合い」が続きます。考えてみれば人材も「ひとつのパイ」です。そもそもの事業の定義をやり直してみたり、機動的に体制再構築が出来る利点は中小企業の強みです。社長はそれを最大限活かしてパイの獲得に挑まねばなりません。

 

 

 

社長が定義した事業に共感してもらえるよう、会社のスタッフ皆が理解できるようにしていますか?また、自己肯定感と共に事業に挑戦してもらえる環境を整えていますか?

  

 

 

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