玄関の鍵の話は、打ち合わせで「ディンプルキーです」で終わってしまいがちです。でも、鍵は家族が毎日いちばん多く触る設備の一つで、家族の人数分の本数、なくしたときの交換、留守中に誰かを入れるときの受け渡しと、意外と手間のかかるものです。
結論から言うと、鍵は「持つもの」から「登録するもの」に変えられます。しかも電気錠の工事は要りません。私はスマートロックを2015年から使い続けていますが、指紋で開けられるようにしてからは、物理キーを持ち出さなくなりました。この記事では、その経験をもとに、玄関をどう提案するかをご紹介します。
下のリンクは、私が使ってきた製品の現行品にあたる、スマートロック本体と指紋認証パッドのセットです。
購入ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/B0DSPXV3M3?tag=hidenori2458-22
公式サイト:https://www.kimuras.jp
X:https://x.com/hidenorikimura
LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/hidenorikimura/
手に何も持たずに、0.5秒で開く

玄関の外に貼った指紋認証のキーパッド。アプリを開かず、指で触れるだけで開く(写真:SwitchBot)
スマートロックは、室内側のサムターン(つまみ)に本体をかぶせ、モーターで回す後付けの機器です。ただ、本体だけでは、外から開けるのにスマホやリモコンが要ります。
そこで効いてくるのが、玄関の外に付けるキーパッドです。私が導入したSwitchBotの「キーパッドタッチ」は、指紋・暗証番号・ICカードで開けられます。特に指紋は、触れてから0.5秒ほどで開きます。それまでApple Watchで開けていたときは2秒ほどかかっていたので、この差は毎日使うと大きく感じます。
買い物袋を持っているとき、子どもを抱いているとき、ゴミ出しのとき。玄関では、手がふさがっていることが案外多いものです。カバンの中の鍵やスマホを探さなくていい、というのは、数字以上に暮らしを変えます。
スマートロックで何より大事なのは、反応の速さと確実さです。物理キーを手放せなかった妻が、機器を替えた翌日から鍵を持たずに出勤するようになりました。家族が信用するかどうかは、機能の数ではなく、毎回きちんと開くかどうかで決まるのだと思います。
鍵を渡さなくても、人を家に入れられる

長い番号の中に本当の暗証番号を混ぜられる「仮想パスワード」。隣に人がいても手元を見られにくい(写真:SwitchBot)
私が工務店の皆さんにいちばんお伝えしたいのは、こちらです。暗証番号が使えると、「鍵の受け渡し」そのものがなくなります。
暗証番号は、1回だけ使えるものや、決めた期間だけ使えるものを発行できます。家事代行の方、遊びに来る親、留守中の業者さん。合鍵を作らず、終わったら番号を消すだけです。子どもがICカードや指紋で帰宅できるのも、共働きのご家庭には大きな安心になります。
ハブ(連携の親機)をつなげば、離れた場所からの操作や通知もできます。いつ誰が開け閉めしたかの履歴をアプリで見られるので、子どもの帰宅の確認や、離れて暮らす親の見守りにも使えます。
これは、リフォーム工事の現場でも同じです。工事中、施主様からお預かりした鍵をどう管理するか、職人さんにどう渡すかは、悩ましいところだと思います。玄関に番号があれば、期間を決めて工事の間だけ有効にし、終わったら消すことができます。
賃貸でもリフォームでも、工事なしで付けられる

本体とサムターンに合わせるアタッチメント。ドアに穴を開けず、粘着テープで取り付ける
このタイプのスマートロックの強みは、配線も穴あけも要らないことです。ドアの室内側に粘着テープで貼るだけなので、賃貸住宅でも検討でき、外せば元のドアに戻せます。キーパッドのほうも同じで、外側のドアや壁に貼るだけです。
メーカーは、市販のサムターンの約99%に対応するとしています(現行のロックProの場合)。もちろん、今まで使ってきた物理キーもそのまま使えます。つまり、鍵そのものは交換せず、その上に新しい開け方を足す、という考え方です。
既存住宅のリフォームであれば、玄関ドアを交換しなくても玄関の使い勝手を変えられます。費用はセットで2万円台前半ですから、提案のハードルはかなり低いはずです。
いま提案するなら、何を選ぶか
私が導入したキーパッドタッチと初代のロックは2022年当時の製品で、現在のSwitchBotのラインアップでは「指紋認証パッド」と「ロックPro」が同じ役割の製品です(2026年11月に確認)。指紋認証パッドは、新たにSuicaやPASMOなどの交通系ICカードで開けられるようになりました。
- 指紋認証パッド+ロックPro:Amazonでのセット価格はおよそ2万1千円から2万3千円(2026年11月時点)。指紋は最大100個まで登録でき、屋外で使える防水性能(IP65)があります
- 指紋認証パッド単体:Amazonでおよそ1万円から1万1千円。ロックをお持ちの方の追加用です
- ロックUltra+顔認証パッド:顔で開けられる上位の組み合わせです。手がふさがりがちなご家庭には向いています
毎日のことなので、施主様には「家族全員が迷わず使えるもの」を基準にご案内するのがよいと思います。
電池切れの備えを、先に話しておく

電池はカバーを開けて交換する。スマートロックは電池で動く機器だと、最初にお伝えしておきたい
スマートロックの提案で、必ず聞かれるのが「電池が切れたら締め出されませんか?」です。ここは、きちんと説明できるようにしておきたいところです。
スマートロックもキーパッドも電池で動きます。ロックProは単三電池4本で9〜12か月、指紋認証パッドはリチウム電池(CR123A)2本で、3人家族で2年使えるとメーカーは案内しています。電池が減ればアプリで分かるので、その案内を受けて交換する、というのが基本です。
それでも、備えは二重にしておくのが安心です。
- 物理キーを1本、すぐ取り出せる場所に残しておく(家族が持つ、近くの親族に預けるなど)
- オートロックを使うなら、まず設定をお伝えする(ゴミ出しのときの締め出しが、いちばん起こりやすい失敗です)
- 必要に応じて、サブバッテリー(別売り)を検討する。ロックUltraは予備電池を入れられ、切れたあとの緊急解錠にも対応しています
- 電池の交換時期を、年に1回の点検のように決めておく
私自身、以前使っていた別メーカーの製品で、オートロックのあとに通信エラーで開かず、外に締め出されたことがあります。本体を貼る両面テープが、自重ではがれて落ちたことも7年間で4回ありました。貼る面をきれいに拭いてから取り付ける、といった基本も、長く使ううえでは効いてきます。
設計・リフォームの段階で押さえておきたいこと

付属のICカードと取り付け用の部品
工事なしで付けられるとはいえ、家づくりの段階で少し考えておくと、使い勝手は大きく変わります。
- 玄関ドアのサムターンの形と、室内側の取り付けスペースを確かめる(ドアの枠やレバーハンドルに本体が当たらないか)
- 2ロックのドアは、2台ぶんのスペースと費用を見ておく
- キーパッドを付ける位置は、雨のかからない庇の下にする。手元が暗くならないよう、ポーチの照明とセットで考える
- お子様や高齢の方の手が届く高さにする
- ハブの置き場所を、玄関の近くに電源とあわせて決めておく(家が広いと、ハブから遠くて通信できないことがあります)
- 賃貸の場合は、貼り付けてよいか管理会社に確かめる
ここは、工務店の皆さんにぜひ押さえておいていただきたいポイントです。玄関の打ち合わせは、ドアのデザインと色で終わることがほとんどです。そこで「鍵の本数と受け渡しのことを考えて、指紋で開く玄関にしませんか」と提案できると、費用をほとんどかけずに、暮らしの話ができる会社として他社との差別化になります。
特におすすめしたいのは、お子様が一人で帰宅する年齢に差しかかるご家庭と、親御さんと離れて暮らしているご家庭です。「鍵をなくす心配がなくなります」「開け閉めの履歴で帰宅が分かります」という一言は、スペックの説明よりずっと施主様に伝わります。
もう一つの使い方として、モデルハウスの玄関に付けておくのもおすすめです。打ち合わせの最後に、お客様の指を登録して開けてみていただくだけで、一番伝わる体験になると思います。OB客へのリフォーム提案の入り口としても、2万円台という価格は話しやすい金額です。
鍵は、持ち歩くものではなくなっていく
玄関は、家族が毎日必ず通る場所です。鍵を探す数秒、合鍵を渡す手間、閉めたかどうかを確かめに戻る不安。一つひとつは小さくても、毎日積み重なっています。
玄関ドアを交換しなくても、サムターンに1台貼るだけで、それらを減らすことができます。ただし、電池で動く機器である以上、備えまでセットで説明することが大切です。
「鍵はディンプルキーです」で終わらせず、玄関を暮らしの話として提案できること。それが、選ばれる工務店になるための一つの近道だと私は考えています。
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