
私の自宅で使っているメッシュWi-Fi「Orbi WiFi 6E」
Wi-Fiは、水道や電気と同じように、毎日あたりまえに使う設備になりました。ところが住宅の計画では、照明やコンセントの位置は細かく決めるのに、Wi-Fiだけは「引っ越してからルーターを置いてください」で終わることが少なくありません。
結論から言うと、家じゅうの電波の良し悪しは、機器の値段より先に「どこにケーブルを通し、どこに機器を置き、どこから電源を取るか」で決まります。そしてそのほとんどは、壁を閉じたあとでは直しにくいものです。この記事では、私が自宅でメッシュWi-Fiを入れ直した経験をもとに、間取りの段階で決めておきたいことをご紹介します。
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50㎡の家でも、電波が届かない部屋はできる
私の自宅は、古い団地の一室をリノベーションしたもので、広さは約50㎡です。この広さならルーターは1台で十分だと、私自身も思い込んでいました。実際には、仕事部屋だけ電波がほとんど届きませんでした。

ルーター1台のときの電波の状況。オフィスだけ赤くなっている
原因は建物です。耐震のためのコンクリートに囲まれた場所があり、室内に鏡も多く使っていました。コンクリートや金属は、電波を大きく弱めます。ルーターを高いものにしても、3万9,000円ほどの機種では、この部屋の弱さは解決しませんでした。
そこで機器を3台に分けて家の中に配置する「メッシュWi-Fi」に替えたところ、仕事部屋で21だった速度の測定値は301になり、リビングも177から365に上がりました。

3台に分けたあとの電波の状況。家全体で良好になった
一方で、もともと近かったキッチンは308から311でほぼ変わらず、奥の小部屋は184から143に少し下がりました。つまり速くなったのは機器の性能そのものより、電波の出どころを「届かない部屋の近く」へ移したからです。Wi-Fiの問題の多くは、置き場の問題だと言えます。
家の素材と形が、電波を決めている
電波の届き方は、製品の説明書より、図面を見たほうが予想できます。
- 鉄筋コンクリートの壁・床、耐力壁まわりは電波が通りにくい
- 鏡、金属の収納、アルミ箔の付いた断熱材は電波をはね返す
- 階をまたぐと弱くなるので、3階建ては各階に1台を考える
- 浴室やキッチンの水まわりも、電波の通り道としては不利
つまり間取りが決まった時点で、「電波が弱くなりそうな部屋」はある程度わかります。そこがワークスペースや子ども部屋なら、最初から手を打っておく価値があります。
配線:親機どうしをLANケーブルでつなぐ

底面のネジ穴を使い、専用のブラケットで壁にも取り付けられる
メッシュWi-Fiは無線だけでもつながりますが、機器どうしをLANケーブルでつなげると、通信は安定します。そのため、壁の中にLANケーブルを通しておくことが、いちばん効く下準備になります。
- 情報分電盤から、各階の廊下など「機器を置く場所」までLANケーブルを通す
- ケーブルは、10ギガの回線にも対応できるCat6Aを基本にする
- テレビの裏と、ワークスペースにも1本ずつ通す
- ケーブルは将来入れ替えられるよう、できれば空配管(CD管など)の中に通す
- 配管は曲がりを少なくし、両端に行き先のラベルを付ける
私も自宅の回線を10ギガのサービスに変えましたが、ケーブルや機器が対応していないと、その速さは家の中まで届きません。回線の速さは年々上がっていくので、壁の中は今の必要より少し余裕を持たせておくのが安全です。

親機の背面。黄色いポートがインターネット側の10Gポート
置き場:情報分電盤の中にWi-Fiを閉じ込めない
ここが、いちばんお伝えしたいところです。情報分電盤は、ONU(光回線の終端装置)やハブをすっきり収められる便利な設備です。ただし金属の箱の中にWi-Fiの親機を入れると、電波は外に出にくくなります。
私がおすすめしている分け方は、次のとおりです。
- 情報分電盤:光回線の引き込み、ONU、ハブなど「配線の集まる場所」
- Wi-Fiの機器:廊下など、家の中心に近い開けた高い場所
Wi-Fiの機器は、部屋の隅の床やテレビボードの中ではなく、なるべく見通しのいい高い場所に置きます。廊下は家の中心を通っていることが多く、各部屋へ電波を配りやすい場所です。床に近い場所より、天井や壁の高い位置のほうが、家具に遮られにくくなります。
情報分電盤を収納の中に置くときは、機器の熱の逃げ場も考えてください。ONUやルーターは一日中動いている機器なので、密閉した狭い場所は避けたいところです。
電源:天井に付けるならPoEも選択肢に
機器を天井や壁の高い位置に付けたいとき、問題になるのが、そこにコンセントがないことです。
解決方法は2つあります。1つは、機器を置く場所の近くに、あらかじめコンセントを用意しておくことです。もう1つは、LANケーブルで電気も送る「PoE」です。ケーブル1本でつながるので、天井や廊下でも配線が見えにくく、すっきり納まります。
私が使っているOrbi WiFi 6Eは、2台セットで22万1,400円、3台セットで27万5,400円(当時)という高価な製品で、Amazonで探しても今は新品のセットが見当たりませんでした。また、いまの住宅に組み込むなら、もっと手の届く機種で十分な場合がほとんどです。
そこで冒頭のリンクには、同じ考え方で計画しやすい現行品としてTP-Linkの「Deco X50-PoE」を載せました。天井・壁に取り付けられるメッシュWi-Fiで、2.5GbpsのLANポートを2つ持ち、PoEで電気を受けられます(Amazonで1台1万9,800円、2台3万3,120円。2026年11月時点)。PoEで使うときは、給電できるスイッチなどが別に必要です。私はこの機種を使ったことがないので、採用する前に仕様を確かめていただければと思います。
工務店として提案するなら
ここは、工務店の皆さんにぜひ押さえておいていただきたいポイントです。間取りの打ち合わせで、次のような確認を一言添えるだけで、施主様の受け取り方は大きく変わります。
- 在宅ワークやオンライン授業をする部屋はどこか
- テレビ、カメラ、スマートロックなど、つなぐ機器はどのくらいあるか
- 光回線は、どこから家に引き込むか
- Wi-Fiの機器を、どこに置いて見せる(隠す)か
「ルーターは引っ越してから」ではなく、「この家は、ここに機器を置けば全部の部屋に届くように配線してあります」と説明できると、他社との大きな差になります。電気の図面と同じように、Wi-Fiの機器の位置とLANの経路を1枚の図にして渡すだけでも、提案の説得力はまったく違ってきます。
費用の面でも、この提案はしやすいはずです。Cat6Aのケーブルと空配管、コンセントの追加は、壁を閉じる前なら工事のついでに入れられます。あとから同じことをしようとすると、モールを這わせるか、壁を開けることになります。
特に、在宅ワークの施主様や、スマートホーム機器を入れたい施主様には響く提案です。鉄筋コンクリートのリノベーションや3階建て、二世帯住宅のように、電波が届きにくい条件の家では、なおさら喜ばれると思います。
電波は、あとから足すものではなくなった
以前は、ルーターは数千円で買って置くだけのものでした。いまはつながる機器も通信量も増え、Wi-Fiの弱い部屋は、そのまま「使いにくい部屋」になります。
ただ、高い機器を選ぶことが答えではありません。私の家で変わったのは、電波の出どころです。そしてその出どころは、壁を閉じる前なら、図面の上で自由に決められます。
コンセントの位置を施主様と一緒に決めるように、Wi-Fiの位置も一緒に決める。それを当たり前にできる工務店は、住み始めてから何年も、施主様に感謝され続けるはずです。
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