夏のための、『変身』                                       ■続・家づくりの玉手箱

2021/06/1912:24960人が見ました

4人家族のときは2階リビングを真ん中にして子供たちが屋根裏で、パパママは1階で寝ていました。適度にせまい屋根裏部屋はなんとも言えない居心地があり、たまにこっそり昼寝とかしていましたが、娘たちが帰ってくると退散しなくてはなりませんでした。

 

そういう時期を何年か経て、やがて子供たちが次々と巣立って行きました。主がいなくなった途端、すぐさま憧れの屋根裏で親が休むようになりました。それはパパだけではありませんでした。なんとも言えない居心地に惹かれてママもついて来たのでありました。

 

しかし、この屋根裏には決定的な弱点があったのです。

冬は空気式ソーラー集熱と基礎コンクリート蓄熱のおかげて晴れた日は24時間暖かく天国でしたが、夏の日中はハンパない暑さでした。当然ですが夏は冬以上に高温の集熱が可能です。 その豊富な熱量を利用してお湯をつくれるのですが、搭載されていた機械は集熱空気が一旦屋根裏室内に入ってくる仕組みであったためです。(そもそも開発当初は屋根裏がデッドスペースであることを前提として設計されたものと思われます)

 

システムの仕組み上しかたないとあきらめていましたが、少し手を加えれば抜本的に改良できることを製造元の環境創機さんから教えていただいたのです。「ダクトの一部をバイパスして、新しい制御盤に交換すれば可能になりますよ」との事でした。それを聞いて、もうたまらずにすぐさま実行することにしました。魅惑の変身その実例をご紹介します。

 

 

 Before 2002年式(屋根裏の機械部分。落書きは環境創機さん相談時のもので、囲いの中のダクトの既存ルートとバイパス部分です。)

 

 

After 2020年式改造版(ついでに本棚も作っちゃいました。しかも照明まで。笑)

 

 

Before の空気の流れ(南側屋根で加熱された室外空気が一度室内に入ってきてから排出されるルートでした。そりゃ暑いはずです。)

 

 

After の空気の流れ その1(北側にある室内の吸気口から吸い込まれた室内空気が・・・)

 

 

After の空気の流れ その2(今回バイパスしたところを通って南側屋根を冷やしつつ排出されるルートに変更)

 

 

最新型空気式ソーラーシステム《そよ風》の夏の動作イメージ(室内空気を排出しながら屋根のクーリングを行う仕組みになっています)

 

《そよ風》の詳しい仕組み・特徴は環境創機さんのウェブサイトをご参照ください

 

環境創機株式会社

 https://www.kankyosouki.co.jp

 

 

という訳で、悲願でもあった夏の屋根裏の暑さがあっさり解消できました。

 

パッシブデザインにも様々な選択肢があります。

当然のことながらその全てを1軒の家に取り入れることは実際には難しいものです。 でも、その環境で有効なものをいくつか組み合わせるだけでも、かなりの効果を獲得することができます。

 

今回の空気式ソーラーシステムひとつ取ってもその事を物語っています。

私自身は大騒ぎしていますが、端的に言うと空気の流れるルートを変えただけです。適切に設計された仕組みは、それだけでも室内気候や居心地は大幅に変えるのです。

 

住宅のパンフレットやホームページには様々な選択肢や原理・原則がイラストとともに並べて書いてあったりします。肝心なのはその理屈を個々の現場で適用しているのかどうかですが、現実に反映されていることは稀であったりします。「パンフレットに書いてある」というのと「最終製品である住まいにその原理が組み込まれているか」というのは見事に別物になっているのです。

 

「よくそれで問題にならないもんだ」と思われる方もいらっしゃると思いますが、改めて考えてみてください。大半のお客様が『一生に一度あるかないか』の買い物ですし、それまで住み慣れた賃貸物件が評価の基準になっているとすると、気づくことは難しいと言えます。長年住んできた賃貸物件に対して皆さん「満足できなかった」と言われますが、それまで住んでいたその「環境」がモノサシになっていることがほとんどです。

 

最近よく耳にするようになった「フェイク」とも言える、こういった事は住宅産業に限ったことではありません。情報過多ともいえる現代ですが、情報が多いからと言っても正しい内容が入っているかどうかは別の話。選ぶ側としては気をつけなければいけません。これだけいつでも誰でも様々な情報にアクセスできるのに、それっぽい情報に出会うと鵜呑みにしてしまって、「裏付け捜査」をしなくなっているのはなぜなのでしょうか?

 

また同時に、提供する側としてはもっと気をつけなければならないようです。なぜなら、少数派ながらもホンモノのお客様には「フェイク」はすぐに見破られてしまうからです。最新の設備もやがては旧式になっていきます。一貫したポリシーを、謳うだけではなく「体現」する会社かどうかはしばらく見ていれば容易に分かることです。

 

最新設備そのものを売りにするだけではなく、長く住んでもらうためにアップデートできる知恵を提供できる「つくり手」を目指したいものです。

 

 

あなたの会社のパンフレットには、実践していないのに原理・原則だけを書いてしまったりはされていないですよね?提供した設備を全交換ではなく部分的にアップデートして利用価値を上げるといった努力をされていますか?

 

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