『雨降りの日の想像力』俺みたいになるな‼︎                            ■しくじり先生

2021/06/2619:34956人が見ました

大阪時代の「普通」

 

大阪時代、注文住宅営業の仕事をしていた頃のことです。

 

会社で販売している自社団地の分譲住宅は外構・造園がセットで仕上げられていて、外部も含めて完成された「住まい」の雰囲気があるのに、注文住宅になると途端に外構・造園が省かれるのが普通でした。

 

注文住宅でも建築条件付きの自社分譲団地内の土地に建ててもらう場合は外構・造園をセットになっていました。これは、団地内の建築協定などを理由に半強制的に契約に含めてもらえる例外的なケースでした。

 

いわゆる一般地(自社分譲地以外)では、ほとんどの場合なぜか資金計画の段階で外構・造園は請負契約外の別途工事という扱いになっていました。(資金計画書の外構・造園工事欄は金額の数字表記ではなく、別途工事という漢字表記になります)

 

建築協定とは、環境保全や個性的な街づくりを目的に土地の所有者全員の合意によって建築基準法などに重ねて一定のルールを加えることです。新規分譲地の場合は合意形成が容易であることから、分譲前に事業主が全部所有している段階で作られている場合がほとんどです。各購入者は分譲時に建築協定に同意しないと購入できません。

 

国土交通省ホームページ

 

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000002.html

 

その頃、素朴に疑問に思ったので先輩に「なんでなんですか?」と尋ねてみました。

そうすると先輩は「そら常識やろ!」という顔で「外構・造園入れてたら見積もり遅なるし、だいたい予算オーバーで契約取れへんで」と間髪入れずの回答でした。当時ぜんぜん契約の取れなかった私には非常に納得できるというか、変に説得力のある回答でした。

 

営業マンはを売るのが仕事。(正確には契約を取ることですが)残念ながら売る対象は、お客様の求めている住まいではありません。他社と競合した際に、比較されやすく利幅の小さい外構・造園は戦略上省くのが定石ということだったのです。

 

さらに、現場担当の先輩からは「工期は長くなる上に天候にも左右される外構・造園はやりたくないわー」とキッパリ。そんな調子の環境で、お客様から契約をいただいて工事を進め、お引渡しをしていると

 

こんな様々な「しくじり」をすることになりました

 

 

雨にかかわる「しくじり」シリーズ

 

  CASE1 水はけのよくない場所(水たまり)ができてしまう。

 

 

  CASE2 水みちができて土がえぐれて道路に流れ出してしまう。

 

 

  CASE3 特定の雨水ますに集中しすぎて雨水があふれてしまう。

 

 

賢明な事業者の方々ならこのようなご経験はないものと思いますが、現実に雨のシーズンになると、巷では同様な現場を未だよく目にします。こういったことはどうして発生してしまったのでしょうか?

 

STAGE1 ・外構・造園を別途にして契約する

               

STAGE2 ・設計者が具体的に排水計画を考えない

               

STAGE3 ・排水計画は水道屋さんにおまかせになる

               

STAGE4 ・予算化されている範囲の最低限の施工で引き渡し

 

排水計画は水道屋さんにおまかせで予算化されている範囲の最低限の施工ということは、多くの場合は屋根に降る雨水の排水だけの計画になります。 よほど小さな土地である場合以外は庭に降る雨水の方が多い訳ですが、この大半の雨水についてはノーマークとなります。

 

こういった入居済み新築住宅(未完成版)は、日本全国で見られます。 このままの状態でどんどん雑草が生えてきてたり、庭にモノが溢れてきたり、という家も日常多く見受けられます。そもそも敷地の仕上がり高さの設定が成り行きになっていて、排水計画上は間違っていたりすることもあると思います。

 

このような現場で、引き渡し後に困ってしまった住まい手から依頼を受けて提案をしないといけない外構・造園業者さんのご苦労は容易に想像することができます。外構・造園の専門家に言わせれば「建物の着工前に考えておいたら、もう少しどうにかなったのに」とか「大したコストをかけずに解消できたのに」ということばかりかと思います。

 

 

日本の住宅は良くなったのか?

 

そういった現場にも平気で「建築家」とか「デザイン住宅」とか書いたのぼりが立ててあったりします。日本の住宅の性能は良くなったと言われますが、こういった景色を見ていますと本当に質が上がったと言えるのか?疑問がわいてきます。そうして「建築家」という職能の実態イメージが著しく低下していっているのは間違いない事であると思います。

 

 その結果、土地が大きくても小さくても雨排水計画は、だいたい最低限のこんな感じになってしまいます。(印は雨水マスです)

 

 

 こちらは外構・造園別途の例(その1)工事中かと思いましたがよく見たら入居済!のようです💦

 

 

 こちらは外構・造園別途の例(その2)こちらも入居済!のようです(既に雑草が💦💦

 

とはいえ、実際に予定の敷地を見れる機会に雨は降っていないことが多いでしょうし、降ってたら降ってたで早く切り上げたくてそれどころではないかもしれません。とにもかくにも最後にどこまで完成したものにするのか?という『ゴール』イメージと、そこへたどり着くための『想像力』が必要です。

 

では、どのようにすればいいのでしょう?

 

お客様の予算や契約内容は様々で、外構・造園がすべて含まれているというケースは実際には稀かもしれません。例え、外構・造園予算が別途であったとしても、住宅の設計者は頭の中でそこに住宅が建ってから雨をたくさん降らせてみて欲しいのです。そこの実際の生活の場で、大量に一度に降った雨が側溝に流れていくまでは追いかけてみるのです。

 

「どうせ予算がないのに、手間をかけられない・・・」と言わずに、 「完成したもののクオリティで勝負する!」プライドを持って欲しいと思うのです。

 

 

予言します。

 

 

その姿勢は、必ず価値観の合うお客様に見つけてもらえることになるのです。

 

 

 

社長の会社は、外まわり(外構・造園)を含めて住宅の提案をされていますか? 別途工事になった場合でも、雨排水についての検討は十分されていますか?

 

 

 

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