バリアフリー改修に際しては、生活のイメージを汲み取るように心がける。ケアマネージャーなどに言われたところだけを見ていくと、大事な改善点を見逃す。トイレの手摺りについて言われていても、「玄関の上がり框は危なくないですか?」と周辺のことも訪ねてみる姿勢が重要だ。
とはいえ建て主は、なるべくお金をかけないで改修をやりたいと考えている。顔を合わせたばかりの段階では、設計者と建て主との間に信頼関係がないこともあり、「余計なお世話」とならないように空気を読みながら問いかけや簡単な提案を行う。
問いかけの際のポイントは、「どこに手摺りをつけますか」と聞くのではなく、「部屋からトイレまでどうやって行きますか」と聞いて、実際に移動してもらうことだ。ドアを開けて閉める。衣服を脱ぐ。その動作を観察しているうちに問題点が見えてくる。本人が改善したいと考えていることだけではなく、無理だと諦めていることが解決できることもある。入浴や調理に関しても同様だが、トイレの利用は、細かい動作を繰り返すために、そうした改善点が見付かりやすい。
こうした聞き取りをもとに提案をする際には、それぞれのメリット・デメリットを示すことが重要だ。このことで、相手の意見や反応を引き出し、隠れたニーズを探ることができる。
式台を置くと下足入れが置けなくなるので、式台と下足入れを兼ねた(写真提供:高住研)