知られざる『トップライト断熱列伝』                                ■続・家づくりの玉手箱

2021/07/1720:321089人が見ました

 

自宅の屋根裏部屋に横長で大きめのトップライトが2つあります。

 

この窓は開閉式で、開けるとびゅーっと室内の空気が外に出ていくのがわかります。

温まった空気は上へ上へと昇っていき屋根裏の空気は最も温度が高くなっていますので、外に出やすい状態になっているのです。

 

夏場の在宅時は1階のお風呂の窓を開けていることが多く、トップライトを開けると「風呂から入って屋根裏から出る」という煙突効果で室内に気流が生まれます。

 

 

煙突効果:煙突の中に外気より高温の空気があるときに、高温の空気は低温の空気より密度が低いため煙突内の空気に浮力が生じる結果、煙突下部の空気取り入れ口から外部の冷たい空気を煙突に引き入れながら暖かい空気が上昇する現象

 

 

しかしながら、鹿児島市内では気まぐれな桜島の降灰があり、不用意に開けていると噴火の際には室内が灰だらけになって大変なことになります。桜島の灰は思ったよりやっかいです。ひとたび降ってしまうと屋根や木の葉などに細かいのが留まって何日もの間風が吹くと舞い続けるのです。なので降った後は雨上がりなど、留まった灰が洗い流されたタイミングでないと家の中の水平面はことごとくザラザラになってしまいます。

 

そういう訳で普段は閉じているトップライトですが、年じゅう沢山の光が入ってきて屋根裏部屋に冬でも安定の明るさをもたらしてくれます。朝一番から日が暮れるまで家じゅうで最も長い時間、照明の明かりなしで過ごせる場所になります。日が短くて寒い時期には大変ありがたい室内環境だと思います。

 

 

 こんな感じで開きます。静かな雨なら開けておけます

 

 ロール式網戸を装備。夜間も虫除けしつつ開けておけます

 

 網戸を全て閉じたところ。これで灰も防げればいいのですが

 

 

では、夏はどうかと申しますと、これが結構大変でしてトップライトを開けてしまえば意外と涼しくなる屋根裏ですが、閉まっているとやはり暑くなってきます。しかも、夏場の南中時前後は北側勾配の屋根に位置するトップライトからも容赦なく入ってきますので尚のことです。

 

これまでは「これは仕方ないな」ということで夏場の日中は涼しい場所を求めてパソコンを持ってうろうろ移動していました。自宅で仕事をするようになると持って移動するものが多くなってくるし、あちこち散らかって「あれがない、これがない」と妙に階段の上り下りが増えてしまうのです。 そうしてトップライト断熱強化事業に着手することになった訳です。

 

以前から冬場の冷気対策も兼ねていろいろ実験したりはしていたのですが、以下その変遷です。

 

 

 Low-Eペアガラスとはいえ、ガラスだけの状態だと相当に暑いです(当時のカタログでは日射侵入58%カットとありましたが、現在の仕様では72%に向上していました)

 

 布一枚ですが付属のロールブラインドを下げると若干涼しくなります

 

 ポリカーボネートのツインカーボ(10mmの中空仕様)を挟んでみるとかなり涼しく!(空模様はなんとなくしか見えなくなってしまいました)

 

 ダメもとで紙を貼り合わせて挟んでみると(妻のアイデア)これが意外にすごい効果が!(もはや何も見えませんが)

 

 ロールブラインドを下ろしてポリカーボネートの間に紙を挟んだ状態(ここまではこのままトップライトは開閉可能です)

 

 「遮熱ポリカ」なるものをネットで見つけて更に室内側に装着(ついに夏も屋根裏OK水準に!でもこの状態でのトップライトの開閉はできなくなりました)

 

 

色々試してみて、失敗もありました

 

NASAでも採用された」という遮熱材料と、当時お客様に提案していた断熱材の実際の効果を左右のトップライトで比較する実験をしたことがありました。

 

 NASAでも使われたという「遮熱材料」をテストしたことも(トップライトにこれを装着すると屋根裏は真っ暗になりましたが)

 

 「遮熱材料」で反射された熱がこもってしまったのか!?トップライトのペアガラス破損!(授業料は高くつきました 涙)

 

 

苦節19年、為せば成る為さねば成らぬ何事も。

 

 

もっと早く気づけばよかったのですが、かくして「夏でも屋根裏で普通に過ごせたらいいなあ」という願望がついに現実のものとなりました。

 

新築時にはカタログデータの数字や日射の熱をイメージした目立つ矢印のイラストを見てなんとなく満足していましたが、実際に体感する感覚はそのイメージとはぜんぜん違ったものでした。

 

新築住宅が建つということは、パーツが集合して「ある場所」の「ある条件」のもとで機能する「住まい」の状態になるということでもあります。実際に暮らしてみて初めて実感できることの多さを、19年住んでいる今でも感じています。

 

 新築当時のトップライトのメーカーカタログの内容(これさえ使えば、暑くなったりはしないような気がしていました)

 

 

お恥ずかしながら、トップライトの遮熱・断熱効果に過大なイメージを持ってしまっていました。メーカーカタログのクリエイティブは実によくできています。人は記載されている数字よりも絵のイメージが刷り込まれてしまうものなのですね。

 

太陽熱の赤い矢印がガーンとガラスにはね返されていて、室内に入ってくる矢印が細くなっているイメージは脳裏に残ります。ここでは、室内に入ってくる矢印が赤色ではなく黄色になっているところが「ミソ」であります。42%もの太陽熱が入ってくると書いてあるのに、ついもっと少ない印象になります。そして、UVカットの青紫の矢印はカット率が高く、2〜10%しか室内に入ってこないので決して室内に入ってくる矢印の色を変えたりはしないのです。

 

こういうものに溢れているカタログ情報に「包囲」されているお客様に対して、プロとしての「実感」をぜひとも話してあげたいものです。

 

 

社長の会社では、提供する価値を自分の目や感覚で確かめてお客様に提案をしていますか?また、そうあるために日々の取り組みをされていますか?

 

 

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