八丁堀の達人クリエイター
定期的に、東京八丁堀にある “達人クリエイター” の仕事場にお邪魔しています。
そこでいただくお茶には、真四角の氷がいれてあります。いつもカップにいっぱい入れて飲み物を注いでれるのですが、氷が透明でとてもきれいなのです。
そう広くはない仕事場には、様々な機械や道具がところせましと並んでいます。そのすきまにしゃがんで氷を取り出してくる、その場所をよく見ると洗濯機パンの上にカラシ色の箱が。「?」と思い尋ねてみると、それはホシザキ製の古い業務用機種でジャンク品としてヤフオクで6,000円で買ったものとの事でした。どうもポンプのモーターが壊れていて、メーカーのサービスマンも「パーツが無いので直せない」という代物だったそうです。
↑ ホシザキ製業務用PM-17C(水道直結で排水も必要。このカラシ色がまたシブい!)
となると次の疑問は「どうやって修理したんですか?」となる訳ですが、なんとその達人は「アセンブリーユニット※ からモーターを取り外し分解、ベアリングを交換したら治っちゃった」というのです。
※ 「アセンブリーユニット」:製品本体に組みつけたりする単体部品の集合体
達人 「サービスマンはマニュアルでユニットが悪かったらそれを交換するか、直せませんと言うかのどちらかで終わり。ちょっと直せば動くのにもったいないですよね。ユニットを分解するのは彼らにとってはタブーですから。「技術」は確かに進歩しているのですが、日常役に立つ「技術」はどんどん無くなっていきますよね。そうなると直そうという気持ちも発想もなくなっちゃう。直るものだという着想そのものがなくなっちゃいますね」
私 「ほんとそうですね。それにしても、この氷おいしいですねー」
達人 「こいつは昔の方式で板氷を斜面でつくって、熱線で切るんです。効率悪いんで今はもうないんです」
私 「だから、氷が真四角でなめらかな透明なんですね」
達人 「今のやつは四角いケースに噴水のように当てて作るんですよ」
図解 最近の機種に多い製氷の仕組み
↑ ① 冷たくなった製氷室に水を噴射
↑ ② 外側から徐々に氷ができてくる
↑ ③ 氷が一定のかたまりになってきたら
↑ ④ 製氷室を温めて氷を落とす
↑喫茶店で出てきたアイスコーヒーの氷(確かに噴射のへこみがあります)
図解 ホシザキ製業務用PM-17Cの製氷の仕組み
↑ ① 冷たくなった斜面に水を循環させながら少しづつ流していく
↑ ② だんだん氷の厚みが増していって透明な板状になってくる
↑ ③ 所定の厚みになったら斜面を温めて板氷が滑り落ちる
↑ ④ 氷の板が落ちてきたところに格子状の電熱線が待っていて板氷を溶かして切る
↑ ⑤ そうして四角い透明な氷が落ちてくる
↑これが実物の「潜入写真」。確かに格子状の電熱線が!真ん中上部の白いレバーは板氷が来たときの感知用。左側のコード付き金属部分はブロックアイスがたまっているかどうかのセンサー。すべてアナログです!(長年の錆が!これは見ないほうががよかった💦)
↑“達人”のホシザキ製業務用PM-17Cでつくった氷(きれいですね。水道水なのにうまい!)
氷の「価値」とは?
うーむ。確かに氷がおいしい。
長持ちする気がする。そして懐かしい…
昔、親父に連れて行ってもらった喫茶店のミックスジュースには確かにこれが入っていました!小さい頃は親父の「冷コー」 ※ や「お冷」の分の氷まで全部もらって食べてました。
※ 「冷コー」:その昔大阪で使われていたアイスコーヒーの別称
そういえば…
最近の冷蔵庫には自動製氷機能は付いていますよね。でも、最近お酒を飲むときの氷は牛乳パックでつくってピックで割ったり、クラッシュアイスをわざわざコンビニで買ってきたりしています。まわりの人に聞いてみたら、そういう人は意外に多くいらっしゃるようです。みんな製氷器付きの冷蔵庫持っているのに。そりゃコンビニに「かち割り」や「板氷」が年中売ってるはずですね。
何かを冷やすための氷をつくる機能は、より能率良くなり一般化もしました。でも、飲み物を冷たく且つ「おいしく」するための氷のクオリティは知らないうちに捨ててしまわれてしまったのかもしれません。
ものやサービスってどんどん新しくなっています。しかし、“達人” が教えてくれたように必ずしも良くなってはいないものもあるんですね。
あなたの会社の提供価値はいつのまにか変わってきてはいませんか?「生産性」の名の下に、創業時のあの時に提供したかった本質を忘れてはいませんか?
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