同じく配慮が欠けがちなのが玄関前の雨よけ。2005年の内閣府の調査によると、家庭内の転倒事故が最も多いのが「庭」で26.5%、次いで「玄関・ホール・ポーチ」が19.0%となっている。転倒の直接的な原因はつまずきや足を滑らせたことだが、間接的な要因として見過ごせないのが、玄関前などの雨よけが不十分だという点だ。
一般的に日本の住宅の場合、玄関先には数十cmの小庇が出ている程度。これでは、降雨時に玄関から出入りする際にまともに濡れる。こうした状況で、高齢者があせって戸を開けようとしたり、車庫に移動しようとすると転倒事故につながる。ゆっくりした動作で出入りるには雨よけは必須だ。特に杖をついた人や車椅子だと、急速な動作はできないので、雨よけはより重要だ。
このように雨よけは、玄関廻りの改修時に提案したい要素だ。ただし、いきなり「雨よけをつくりませんか」と提案すると押し売りになる。雑談のなかで話題に上げて相手の興味を探り、「直したいんだけどお金がかかるでしょう?」などと関心を示したら、「オーニングのようなやり方もありますよ」と話を深めてみるのがよい。最近はポリカーボネート屋根のアルミ製のサイクルポート(自転車置き場)などの廉価な製品があり、それらを転用すると、ポーチを完全に覆うことができ、安全性を高められる。
玄関ポーチを引っ込ませて雨よけを図った事例。雨対策としてはスロープのスリップ防止や庭への浸透も考慮