ヴィンテージデッキの『修理レシピ』2 ■続・家づくりの玉手箱

2021/10/0915:36651人が見ました

 

ヴィンテージデッキの『修理レシピ』1 からつづく

 

 

環境要因とデッキの傷み

 

自宅のリビングは2階にあって南側にデッキがつながっています。

そこでは、ほぼ毎日洗濯物を干したり、ちょっと息抜きしたり、たまに外ごはんしたりしています。

 

大きくなった楠が生えていますので年中緑でいっぱいですが、少しづつ鉢植えの植物も増えてきました。 鉢を定位置に置きっぱなしにしていると、その場所のデッキ表面が傷みやすくなってしまいます。 風も日光も当たりませんし、湿った状態が続いてしまうからです。気がついた時には場所を動かしたりして、出来るだけ悪条件を固定しないようにしています。

 

デッキの材料は無垢の木(ヒバ)なので場所によっては当たり外れもありますが、それ以上に張られている場所の環境要因によって傷み具合が決まってくるようです。何回張り替えても同じところが傷むので、多分間違いないと思います。

 

ということは、

 

その場所の環境要因を出来るだけ改善しておく

環境要因を見越して取り替えやすく作っておく

 

といったことが、より現実的な対策になります。過度に材料に耐久性を期待するよりもよっぽど合理的で、何より確実です。

 

デッキ材料は傷むものですが、定期的なメンテナンスによってある程度の延命は可能です。 自宅でも気が向いたときレベルで実践してはいますが、ストレスを感じない範囲でほどほどにやっています。

 

 

ここのデッキは入居してから一度交換していますが、かれこれもう10年経っています(軽く表面を削ったところ)

 

 

カウンターの下あたりで傷みかたに差が出ています

 

 

傷みの早い場所は表面に割れが出てきています

 

 

18年も同じ家、同じ場所のデッキと付き合っていると、さすがにそのクセみたいなものが分かってきます。住まい手は入居した当初はシロウトですが、皆さんしばらく住み続けていくと、次第にクロウトになっていくのです。住まいづくりの仕事をする工務店経営者はそういうことを前提にして、よく心得ておく必要があります。

 

デッキの傷みが気になってきて、意を決して塗装した際のことです。ちょうどデッキ塗装を夫婦でやっている最中に雨に降られたことがありました。下の写真の雨に濡れているところが左右と真ん中で色が違いますが、左右から無色の下塗り塗料を塗っている途中だった為です。真ん中の白っぽいところは未塗装部分です。

 

 

雨が降り出したときの様子(傷みの早い場所と一致しています)

 

 

塗装した後の様子(しっかり塗ったのでつやつやしています)

 

 

カウンター下の痛みの差もわかりにくくなりました

 

 

傷みの早い場所は塗料の吸い込みが良くジュワッと染み込んでいく感じです

 

 

南国のデッキの敵

 

次に、最近になってやってみた『ヴィンテージデッキ熱湯消毒法』をご紹介しておきます。

 

デッキの塗装が剥げてきますと、決まって梅雨明けごろから緑色になってきます。 これはどうも藻のようです。高温多湿の鹿児島ではかなりの勢いで、おののくばかりです。

 

デッキが傷んでくると表面が割れてきますので、こういった藻が生えてきてサンダーなどで削っても割れ目の中に残ってしまうので難儀をしていました。(というか面倒なので放置していました)

 

そういう私を見ていて、しびれを切らした妻が地道に藻の撃退法をトライしていたようです。

 

妻が何気にやってみたら「意外と簡単でいい!」と言いますので、たぶん間違いはないと思います。まさに民間療法といったものですから、試してみられる際には自己責任で。

 

 

梅雨明け後、夏場にはこんな感じで藻が生えてきます

 

 

熱湯をかけているところです

 

 

ぬれている範囲が熱湯消毒範囲です

 

 

熱湯消毒から3日後の様子。きれいに緑色だった部分が消えました!

 

 ご覧いただいたケースは、あくまでも民間療法で住まい手の工夫のほんの一例ですが、自社の地域・自社の仕様・1020年経過という条件となると、ネットではほとんど情報がありません。

 

本当に古くなって「それぞれの環境下で本格的に傷んできたときにどうするか?」という「難題」に対する答えは、やはり自社施工建物の「その後」にあります。現場で耐久性を考えて作ったものが、その「答え」を語るのはそのときになってからなのです。

 

「現場」が語り始めるそのときに、事実を見る「目」や材料の声を聴く「耳」が現場に居合わせることができるかどうかが大きな分かれ目です。その頃にはすっかり出入り禁止になってしまっていては、望むべくもありません。アフター対応や取り組みの本質はここにあるといっても過言ではないのです。

 

 

 

あなたの会社では、お客様が入居後にその住まいで生活経験を積みクロウトになっていくということを共通認識にしていますか?また、避けては通れない経年変化というものに好奇心を持ってナレッジベースの構築に取り組んでいますか?

 

 

ヴィンテージデッキの『修理レシピ』3 につづく

 

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