戸建・性能向上リノベーションモデル企業(業界コンサルが事例研究のポイントを解説)

2021/11/2114:09460人が見ました

 今回は私が日々取り組む戸建・性能向上リノベーション事業の事例研究の中で代表的な2社についてお伝えします。(過去リサーチ内容をもとに加筆修正)

 Y社>

・競争戦略、理念、特徴

競争戦略:無垢材、断熱、耐震性能で差別化し、ハイエンドなリノベーションに特化

「無垢材に囲まれた豊かな暮らしを提供」を理念とした地域ビルダー。新築中心の会社ではあるが、リノベーション本格参入後、事業年商は毎年2倍ペースで推移。 素材としては、無垢材を扱い、住宅性能を向上させるリノベーション(断熱性能、耐震性能) に注力しているのが特徴。断熱も厳選し、夏涼しく、冬暖かい快適な暮らしの実現を約束。また、耐震性能については、被災地にも足を運び、検証した上で面材での補強を標準仕様とし、高い強度を実現。

 ・集客手法

見学会を定期的に開催し(常設展示場と完成現場見学会) 、安定集客を実現している。さらに、プロセスエコノミーの概念に通じる構造見学会の開催により、構造上の特徴、耐震性の安心感等を具体的に見てもらうことで、建築のプロとしての信頼感を獲得している。見学会の来場客には勉強会へ誘導し、顧客接点を確保。勉強会では、建替えとリノベーション、リフォームの比較、耐震、断熱、素材に関して啓蒙し、参加客の心をつかんでいる(ランクアップ効果)。自社のこだわりを伝えて、大手との差別化を図っている。

また、大規模なリノベーション案件の集客を狙ったリノベーションモデルハウスも開設し、見学会の継続開催を実現している。

 ・営業、組織体制

 営業担当、施工担当と役割分担し、大規模なリノベーションでも品質をしっかり管理できるような組織体系を構築している。大規模なリノベーションに特化しており、平均受注単価は2500万円を超えた年もある(メンテナンスは別事業部で対応)。

 

S社>

・競争戦略、理念、特徴

競争戦略:大工力を訴求し、古民家リノベーションを主軸に展開

元々は、新築メインの工務店であり、既存顧客から自然発生するリフォームに対応する程度の取り組みだったが、その後、1000万円以上をターゲットとするリノベーションビジネスに特化し、今日に至っている。

 参入当時、リフォーム事業と言えば、小さな工事から大きな工事まで受け付けるのが基本で、1000万円以上に特化するという取り組みは非常に珍しい事例である。ブルーオーシャン、レインボーオーシャンとも言えるこの領域でその後、年々、事業規模を拡大させて、今もなお、大工集団(リノベはベテラン大工が担当)を基盤に、古民家リノベーションをコアターゲットに展開している。

 ・集客手法

集客は構造・完成見学会が中心で、同一エリア内で複数の見学会を開催することもある(ドミナント開催によるブランディング)。WEBと折り込みチラシで見学会を告知し、見学会参加後は、勉強会に誘導している(複数テーマあり)。勉強会では省エネや耐震、ローン、補助金、相続等について講義(資金計画の詳細は外部提携スタッフが対応)。勉強会の次のステップとして、過去に施工した物件を複数訪問するバスツアーに誘導する。バスツアー参加者のうち、一定の割合で設計契約(有料)につなげている。

「建て替えかリノベーション」かという要望も多いが、新築部門からリノベ部門へ案件がスムーズに移行される評価制度が機能している。

 ・営業、組織体制

設計契約の内容には精密診断の実施が含まれており、耐震や断熱、雨漏り、その他劣化について徹底的に診断する。設計契約後の成約率はほぼ100%となっており、営業効率が高い(以前は4050%)。別組織で1000万円以下を担当する部署もある(1000万円以下を担当する部門は、一貫担当制)。断熱を重視する他、耐震については熊本地震発生後にさらに上部構造評点のルールを徹底し、さらに快適で安心して暮らせる住まいづくりに向けて、進化している。本業の新築を取り巻く市場は今後縮小が見込まれている中、大規模リノベーションの事業を今後も強化していく方針。

 

 以上、私が最も影響を受けた2社について解説しました。近年、Y社は主力スタッフの出入りもあり、このエリアでは定額制をかかげる大手リフォーム会社が優勢になっているという情報もありますが、示唆を与えてくれる取り組みだと思います。

<事例研究>

 帰納法に基づく事例研究のポイントとしては、事例の表層だけでなく、その事例(会社)の外部環境、内部環境(全体設計)を見ること。理想は1つの事例ではなく複数の事例を研究し、共通項を導き出すこと、自社ならではの強みに合致するかという内部環境、商圏人口等もからんでくることを念頭に置く必要があります。つまり、点で見るのではなく、全体で見ること。全体設計にこそ、成功のカギがあるものです。

 これらを踏まえた事例研究であれば有効な役立つ情報になるでしょう。正しい事例研究であれば、事例自体に正解はないかもしれませんが、ヒントはあるはずです。やるべきことが見えてきたら、「即時取り組んでみる→気づきを得る→修正し取り組んでみる」これらを繰り返し、あとは正しい努力を根気よく続けることができれば、大抵はうまくいくものです。

 取り組むべきリノベーション事業のヒントにしていただければと思います。

※具体的な数字の記載は一部にとどめています。あらかじめご了承ください。

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