2021年12月に新建ハウジングさんはじめ、様々なメディアが大手リフォーム会社の「高断熱リフォームプラン」発売の記事を取り上げました。そこで、今回の断熱プランについて告知内容と現場で蓄積した関連情報を共有したいと思います。
<新築そっくりさん 断熱商品 強化の経緯>
・2014年10月「断熱リノベーションパッケージ」発売(ターゲットが新耐震基準の戸建へシフトすることにより、断熱改修ニーズを意識した取り組み)
・2015年2月「部屋ごと断熱リフォームパック」発売
・2021年12月、改めて「高断熱リフォームプラン」の名称で発売(現行基準に沿った断熱材、24時間ダクトレス全熱交換型換気システムを採用)、SDGsにもからめ、社会的意義をPR
今回の発表は「平成4年基準だった従来の断熱仕様を、今後は平成28年基準を標準にします」という主旨のようです(ダクトレス全熱交換型換気システムについては、様々な構造に対する施工性の高さが採用の理由と思われる)。
ちなみに、工事後の施主アンケートでは営業担当の基本姿勢に起因する不満が中心で「冬寒い」「夏暑い」といった不満の声は確認できていませんが、築古戸建では施工前が無断熱、もしくは断熱があったとしても性能が極めて低いため、ビフォーアフターの体感の差が大きく、新築業界に比べて「冬寒い」「夏暑い」という不満が少ないのかもしれません。
<関連動向>
・最新パンフレットには間取り部分に最小限の断熱情報が掲載されているのみ(現時点で断熱専用のパンフレットは見当たらず、営業トークへの反映はまだ限定的という声もあります。営業現場での断熱に関する意識が浸透するには時間がかかるかもしれません)
・一部イベント会場では、最新の断熱仕様の模型を展示、従来の仕様と比較しながらPR
・新たに採用する断熱材自体の流通面の課題(納期遅延など)は不透明感がある
・その他、直近のパンフレットには耐震、制震の情報量が増加し、シリカライムという自然素材の品揃えも掲載
・構造及び、完成見学会開催数は昨年以降、月500件ペースで推移し増加傾向
・イベント時の次アポは現場調査よりも、完成見学会への誘導を徹底して強化(接客ブースでの案内ツールを用意し誘導、会場出口付近においてもパネルで大々的に見学会開催をPR)
・近年、エスコートハウス(予約制で常時見学できる施主宅)を重視し、全国各地で顧客接点として機能
<まとめ>
・2021年12月、断熱材が強化されるという発表があったが、営業現場、施工現場での意識はバラつきがある傾向(お客様の予算の関係か、古い断熱材をそのまま使ったり、新たに断熱施工した部分もグラスウールの上下に隙間など甘さがあるという情報もあり)。
・元々低かった断熱材(商品)のグレードアップのみで、施工や気密へのこだわりは現時点では弱い印象(グラスウールという性質上、全国各地において、大工さんのスキルにムラがあることが懸念点か)
・対応策としては、引き続き、断熱材だけでなく、施工のこだわり、気密に対するこだわりを訴求する、Ua値、光熱費、室温など数値を提示したり、サーモカメラでわかりやすく伝えることが有効
・単なるスペックの訴求にとどまらず、スペックを押さえた上でいかにストーリーで伝えるか、いかにワンフレーズや1枚の写真で伝えるかという視点が大切(右脳と左脳へ訴える)
・特に冬季においては断熱体感への誘導を徹底する
以上、3C(顧客、競合、自社)の観点で競合の新築そっくりさんの動向を押さえることは欠かせない視点です。断熱強化され、市場が活性化されることを期待すると同時に、大きな経営資源を持つリーダーに対して、どのような対策をとるか、どのように差別化するか考える上でヒントにしていただければ幸いです。
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