IKEAやニトリがどうして繁盛するのか?(1)■売れる力とは?

2021/12/1117:581283人が見ました

 

ユーザー目線の「一刀両断」

 

「吉岡先生、どうしてIKEAやニトリが繁盛すると思います?」

 

訪問先の経営者の方から尋ねられました。

この方の事業は住宅業界ではありませんが、共通の話題として問いかけてくださったようです。

 

「身近で安価だったり、生活イメージを持って選べる業態だからではないでしょうか」 「コロナの影響で在宅時間が増えたことによる模様替え需要などもあると思います」 私はそう答えましたら、間髪入れずその方は「工務店がダメダメだからですよ」とバッサリでした。

 

一戸建てに長らくお住まいで、かなりのご予算を投じ何度か家に手を入れておられる様子で「建築工事以外のこと、近い将来のことからは逃げていくね。あの人たちは。」「包括的に面倒見てくれるような人はどこにいますかね??」と、話しているうちにどんどんテンションが上がってきました。

 

「工務店がどうにも頼りにならないから、仕方なくIKEAやニトリに行くんですよ」 「まあ失敗しても諦められる値段だしね」

 

IKEAもニトリも娘たちの部屋用の買い出しなどでお世話になっていて個人的にもすっかりお馴染みです。しかし、そう言われてみれば確かにそうかもなと思ったのです。

 

王道のアイテム別陳列スタイル。ゆっくり座り込んで心ゆくまで選べます(ニトリにて)

 

 子供の頃、近所の家具屋さんでもこの光景を見ました。通路両側のタンスをビルに見立てて、自分は電車になった気分で走り抜けるのが楽しかったものでした(ニトリにて)

 

 

IKEAやニトリではいま

 

IKEAとニトリでは比率こそ違えども、アイテム別陳列は現代でも健在です。

広大な店舗面積を活かして、迷路のような長い巡回ルートを歩かせて次々に生活シーン別のコーディネーションを見せていくIKEAの成功に学び、競合店舗でも「シーン別生活提案コーナー」に売り場の一部を割いているケースを多く目にするようになってきました。

 

 徐々に強化されているシーン別生活提案コーナー(ニトリにて)

 

 

最近では家電量販店でもここはニトリさん?というような売り場が見受けられるようになりました。ネット通販の比率が拡大している家電商品の専門ではなく、生活全般の提案・販売拠点へと変身しつつあるのです。「ワンストップ化」ということも言えますが、プロはあてにしないで自分で選ぶ「ファストサービス化」へと業態が変化してきているように見えます。

 

 ニトリ化していく家電量販店の売り場風景(ヤマダ電機にて)

 

 『工務店キラー』として増殖していく家電量販店の一角(ヤマダ電機にて)

 

 

やられっぱなしの「工務店業界」

 

工務店あるあるなのですが、外構・造園などのエクステリアや家具・ファブリック・グリーンなどのインテリアの話になると「業者を紹介しますので直接どうぞ」とすぐに言ってしまう社長が誠に多いのです。さらには「うちが入ると経費がのっかるので高くなりますから」という駄目押しつきだったりします。このやる気のなさには閉口してしまいます。

 

苦手だから避けて通る 避けて通るから出来るようにならない いつまで経っても出来るようにならないので恥ずかしいし絶対に、避けて通る。 といったスパイラルが伝承されていくのです。

 

こうして会社は業歴を、社員は年齢だけを重ねていく訳です。これは怖いことです。 スタッフの能力に依存せずに売り上げ・利益を拡大したいがあまり、モノ売り体質がどんどん強化されていくのです。モノづくりはメーカーさんに任せて「販売業」に邁進していくのです。大手メーカー加盟店となり、いつの間にか「鵜飼いの鵜」のようになっている会社も多くなっています。

 

地方の中小工務店とその関連店舗では、住設メーカーやVC(ボランタリーチェーン)の「少人数のスタッフでも売上げ拡大ができますよ!」との指導により、安直かつ不可思議な新装店舗も誕生しています。

 

 無人ながらも同時に4台の画面から売り込まれるリフォームショップ(うるさいです)

 

 5つのスタイル、5つのテイスト、2つのグレードのマトリックスから選ぶリノベーションメニュー

 

 

「直接どうぞ。うちの経費分安くなりますから。」などと言っておいても、実のところはきっちり紹介した業者さんからマージンを戻してもらってたりする事もまだまだ根強く残っています。紹介だけして安いと思わせといて、実は自社の紹介料込みでお客様に買わせる、古くからの慣例的なパターンです。モノの価格情報が得られやすくなりましたのでバレやすくなったとは言え、工事をともなう分野ではまだまだ現役の商法です。

 

お客様が意識して払うのではない対価の受け取りかたでは、何年やっても高く買っていただけるようにはなりません。そのような商売では『価格決定権』を獲得できることはない事は自明の理です。

 

わざわざ自らの商売の領域を自ら単なる『販売店』に狭めるのは、中長期的には衰退の道を選ぶことと同義です。本物の工務店を目指す社長には、住まい手の未来のために必要なすべてを任せていただいて、堂々と経費なり対価なりを払っていただける仕事をして欲しいものです。

 

自ら多くの情報を得て考え、安価な商品でいろいろ試す。

 

住まい手がこぞってトライし学び続ける時代に、つくり手が「インテリアは別です。詳しい人をご紹介いたします。」などと言っていては、これからのお客様に選ばれるはずがありません。そうしているうちに、日頃からお客様との接点が多い他業種に市場を奪われるかも知れません。というか、もう奪われています。

 

その結果として、その会社の衰退は避けられないと断言できます。目先の利益確保ばかりに目が奪われてしまい、ひたひたと進化する他業界の「変身」を見落としてはいないでしょうか?もうとっくにヤマダ電機は住宅屋さんになっています。

 

「本物のお客様」は、任せられるつくり手を探しているのです。そういうお客様は既存のサービスレベルには満足していません。それ故に表面的なプロモーションには反応がなく、あまり顕在化しないから見えにくいのです。特に「販売業」に邁進する工務店経営者の目の前にそういった「本物のお客様」が現れることはありません。もし、しっかりとした予算と工期とともに任せてくれるお客様と出会えない、せっかく契約になったのにお客様から任せてもらえないとしたらそれはつくり手の問題に起因していると考えるべきです。

 

 

 

あなたの会社は「器」としての家づくりに専念している会社でしょうか?それとも、その「器」で暮らしていく住まい手の「未来」に積極的に関与しようとする会社でしょうか?

 

 

 

 

これからの時代に工務店が何を目指していくべきか?異業種ながらも住宅事業に参入する際にどのような戦略を取るべきか?家づくりの玉手箱では、そのような疑問に明快にお答えしています。

一流を目指す経営者の方なら、工務店・異業種は問いません。

 

 

IKEAやニトリがどうして繁盛するのか?(2)へつづく

 

 

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