土地と住宅を一体として販売する「建売住宅」と違い、土地と建物が別々の「注文住宅」では、融資時に注意しなければいけないことが多々ございます。
融資はお客様にとってもわからないことばかりなため、工務店側としては疑問や不安点をすぐに解消し、安心して融資実行まで進めていくスキルが求められます。
そこでこのシリーズでは、工務店様が自信を持ってお客様にご案内できるよう、注文建築における融資時の注意点についてまとめました。
ぜひ、参考にしてみてください。
その1:まとまった資金が複数回必要になる
住宅ローンの融資実行のタイミングは、原則として建物の引き渡し時になります。しかし、土地を購入して注文建築で家を建てるとなると、土地の売買契約締結時、土地の引き渡し時、建物の着工時、上棟時、建物引き渡し時など、費用の支払いタイミングは複数回に渡ります。
つまり、複数回まとまった額の支払いをしなければならないということです。
住宅ローンでは、最後の建物引き渡し時にしか融資を受けることができないため、それまでの支払いは自分で用意するか、何らかの方法で調達する必要が出てきます。
建物だけでも引渡し前に代金の60~70%を払わなければなりませんし、加えて土地も代金も用意しなければならないとなると、殆どのお客様にとっては融資を受けなければ工面できない金額です。
そういった場合に利用するのが、つなぎ融資、住宅ローンの分割実行、住宅ローンの土地先行融資などです。
つなぎ融資は住宅ローンの融資が開始するまでに別途支払いを立て替える短期融資です。住宅ローンの融資が実行されるまでの間はつなぎ融資分の利息を払い、建物の引き渡し時に住宅ローンで清算するシステムで、これまでの期間に複数回発生する支払いを用立ててもらえますが、無担保なので金利は住宅ローンより高利になります。
冒頭で、「住宅ローンの融資実行は建物引渡し時」と説明しましたが、金融機関のなかには、住宅ローンを複数回に分けて融資実行する商品をもっているところもありもあります。住宅ローンの分割実行は、ひとつの住宅ローンを複数回に分けて融資実行してもらえる種類のものです。金利は、住宅ローンの金利で融資が受けられます。
また、住宅ローンの土地先行融資は、そこに家を建てることを条件に、土地取得時の住宅ローンと建物の住宅ローンの二本立てで融資を受けることができるものを指します。こちらも住宅ローンの金利で融資が受けられます。
分割融資や土地先行融資の場合、つなぎ融資よりも金利が低いのでお得に見えますが、土地決済時に抵当権の設定が必要となるため、お客様にご説明する際には、この登記費用分も含めての比較をする必要があります。
その2:融資の実行条件が各行さまざま
複数回融資を受けなればならない場合は、融資の遅れがないように実行条件について金融機関にしっかり確認する必要があります。
条件1:建築確認済証
土地購入時の融資を受ける際に、その土地に自宅を建てる予定であることを証するため、建築確認済証の提出を求められることがあります。そのような条件がある場合には、土地の決済日と建築確認済証取得スケジュールが合うように調整をする必要があります。
また、利息は融資を受けたときから発生しますので、お客様のことを考えるのであれば、土地の取得(=初回の融資実行)から完工後の建物引渡しまでの期間が短いほど、利息負担を抑えることができます。
例えば、土地の売買契約から決済までの期間を長めにとって頂くよう不動産仲介会社と調整しておくと、その間に、建築プランを検討する時間を取りやすくなりますし、着工時期を最適なタイミングに調整する余裕が生れますので、お客様に対してそのようなアドバイスをすることも視野にいれると良いでしょう。
条件2:建物完工
住宅ローンの中には、所定の回数に分割融資が可能なものもありますが、建物が完工しなければ住宅ローンの全額融資が受けられない金融機関もあります。この場合には、つなぎ融資などの住宅ローンとは別の借入れを検討しなければなりません。
まず、自社の支払規定を確認し、お客様の自己資金額を踏まえた上で、借入れをする金融機関と融資実行予定日や回数のすり合わせを行いましょう。
なお、一般的に建物が引き渡される日には、引き渡しと融資金額の指定口座への入金、所有権移転(保存)登記及び抵当権設定登記が全て同じ日の内に行われることになります。つなぎ融資を受けている場合にはそちらの清算手続きもありますので、同日内に完了できるようにきちんと前もって準備しておく必要があります。
条件3:工事進捗の写真提出 など
注文建築の着工時や上棟時などの融資を受ける場合には、工事がどれくらい進捗しているかを確認するために、現場の写真や報告書等の提出が求められることが一般的です。何を提出するのかは金融機関によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。
例えば、現場写真は提出したものの、そこに施主名の看板が入っておらず、再度提出を求められるといったこともありますので、注意しましょう。これらの資料は工務店側で用意しますが、提出は工務店が代行できる場合もあれば、お客様が行なわなければならない場合もありますので、早めの段取りが必要です。
その3:案件によって提出書類がさまざま
お客様の土地の条件によっては、様々な書類が必要になります。
ここでは、よくある事例についていくつかみておきましょう。
・市街化調整区域
市街化調整区域は、原則、住宅等の建築ができない区域ですが、所定の条件を満たしていれば建築の許可を得ることができます。
融資を受ける際には、金融機関への書類提出のタイミングと、この許可のタイミングを合わせられるようにスケジューリングすることが重要となりますので、行政側と金融機関への手続きの確認をしっかりと行いましょう。
・農地転用
畑などの農地を宅地として使用する場合には、農地委員会に農地転用の申請をしておかなければなりません。農地転用の手続きは1ヵ月以上かかることも少なくなく、また、地目変更の登記も必要なため、早めの準備が必要です。
・分筆の有無
大きな一筆の土地の一部だけを自宅用地として使いたいといったお客様もいらっしゃるかと思います。
例えば実家の敷地の一部に自宅を建てるといったような場合です。住宅ローンの融資を受ける場合には、土地に対して抵当権を設定することになりますので、もし一筆のまま話しを進めてしまえば、大きな土地全体に抵当権がついてしまうことになります。
このようなことにならないように、使用する部分だけを区切って異なる地番にする分筆を行なうことで、権利界が分けることができ、自宅で使用する部分だけに登記の設定が可能になります。
金融機関にとっては、融資額が同じであれば抵当権設定対象の土地は広いほどリスクが少なくなります。つまり融資の審査に大きく影響を与える要素となりますので、事前審査を申込む前に、お客様へのご説明とご意向の確認を行なうようにしましょう。
まとめ:支払い時期やローン内容の詳細は要確認
中古住宅や建売住宅の様に、土地と建物が一体となった不動産売買とは違い、注文住宅の場合は色々なパターンの案件があり得ます。さらには関わる事業者の数が多いことや、期間が長いこともあり、住宅ローンの細かな業務が半年以上に渡って続き、業務時間を圧迫します。
また、これらの課題を解消するため、弊社では建築事業者様の住宅ローン業務を代行するサービス「いえーる ダンドリ」を提供しております。お気軽にお問い合わせください。