これからお客様が選択するもの ■売れる力とは?

2022/04/0221:51416人が見ました

情報過多の時代がもたらしたもの

 

情報を得ることが自由にフラットな時代になりました。住宅業界でも、大きな資本力がなくても有効な情報発信が好きなだけ出来るようになりましたし、お客様も自由かつリアルタイムに様々な情報にアクセスできるようになりました。

 

この事自体はとてもいいことです。10年以上前に書籍を出させてもらった頃に、しきりにこういう事を発していました。書籍の帯の裏にも印刷してもらいました。

 

 

「ずいぶん多くの情報が手軽に得られる世の中になりましたが、情報の質そのものはそれほど変わっていないように思います。とりわけ住まいづくりに関しての情報はつくり手側が自分達の都合のよい情報をどんどん流し続けているだけで、本当に住まい手の求める暮らし目線の情報が足りないと感じています。そう思いません?」

 

 

書籍「家づくりの玉箱」の裏表紙

 

 

最近の変化をユーザー目線で見る

 

書籍を刷った頃はもう一昔前。考えると何かを調べるのにはいい時代になりました。 正直こんなに早く世の中が変わっていくとは思ってはいませんでした。ポケットのスマホでほぼ何でもできてしまうほど処理速度も通信スピードも向上しました。また、クラウドを活用すれば保存容量も気にせずデータを保有、動画などの大きなデータでもどこからでもアクセスできるようになりました。

 

現代日本人が1日に触れる情報量は「平安時代の一生分」であり「江戸時代の1年分」であるともいわれています。近代の人が膨大な情報量を獲得できるようになったのは、飛行機など「高速の移動手段」のおかげで早く遠くまで行けるようになり、触れられる情報が格段に増えたのだそうです。

 

しかし、平安時代と江戸時代における交通の最速手段は「馬」で同じはず。平安時代になくて江戸時代にあったものは「地図」であり、「地図」という「情報」のおかげで遠くまで早く正確にたどり着けるようになったことが、ふたつの時代の大きな違いです。その結果、情報の量が増えていったのだと見られています。

 

さらに現代はインターネットの登場で各自が移動しなくても触れられる情報が劇的に増加しました。一説では世界に存在する全データのうち、90%が直近2年で生まれたデータだそうです。それも常に更新されて日々指数関数的に増えていますが、増えている実感は感じる事なくサクッと検索して一発アクセスできたりする訳です。なんとも便利です。

 

 

最近の変化を事業者目線で見る

 

世の中のインフラが進化すると、それに応じてすぐさま各分野の事業者も対応してきます。これは、良くも悪くも自然な営みです。そして、新しい不具合も発生します。

 

その中でもわかりやすい例としては、『フェイクニュース』があります。この言葉、昔はなかったですよね。ニュース配信に多額のコストと手間がかかっていた時代には大きな利権がないと成立しないものでした。

 

ほとんどコストをかけずに情報が発信・拡散できる現代では、広く多く発することのハードルが著しく下がりました。個人発の『フェイクニュース』はそうした背景から生まれました。権威のない者の発言・発信であっても、数を背景にする事で大きな影響力を持てるようになったのです。もちろん権威のない者の発言・発信で閲覧数が少ないものであっても、正しく有益なものも多くあるのですが、良くも悪くも反響が多いものが目立つのが「ルール」です。

 

ネット上でのサービスの多くが広告による収益モデルをとっていること 
●AI
による広告主・サービス提供企業双方の収益機会の最適化(効率化)

 

により、そのような「ルール」になっている訳ですが、消費者の利益は必ずしも向上する事ばかりではなくなってきました。例えば、Googleの検索は便利ですが検索内容によっては広告が山ほどはさまってきます。また、上位に表示されるサイトもテクニカルに優れたものが一定量上位を占め、必ずしもユーザーにとって有益なものとも言い難い場合もあります。広告主としても、反響の割には本来の収益に結びつかない場合も一部で増えています。

 

SEOSearch Engine Optimization)をめぐってはよりユーザーに有益な動作となるよう常に「ルール」がアップデートされているそうですが、とにかく多くの人に見て欲しい広告主側との「いたちごっこ」が繰り広げられています。必ずしも「たくさん見られている=有益」でもないはずですが、ネットの世界では閲覧数がものをいうところがあります。広告モデルである以上は当然のこと。ネット業界では、税理士さんばりにルールの変更とその対応を事業機会としている産業も多く生まれているぐらいです。本当ついていくのが大変になってきました。

 

 

音源の変遷に見るイノベーションと本質

 

私は音楽が好きなのでライブ動画などはYouTube、音だけならSpotifyなどで楽しんでいます。実際に来られた方はよくご存知かと思いますが、自宅にはアナログレコード盤、レンタルレコードを録音したカセットテープ、デジタル音源であるCD、レンタルCDを録音したMDなどが摩天楼のように積んであります。これも音源・録音メディアが私の世代で大きく変遷したからです。

 

そういう年代の私も今やネットからのストリーム音源で、いつでもどこでもどの年代のどのジャンルの音楽でも聞けてしまう訳ですから「平安時代の一生分」もうなずける気がします。最近ではハイレゾ音源なる超高音質のものまで、ネットでダウンロードできてしまうようになりました。自宅のカセットテープの山が、いよいよ恥ずかしいような時代になってきました。

 

 

最近では全国のラジオ番組もネットからスマホで聴くことができますし、聴き逃してもアーカイブを好きな時間に聴くことができます。よく聴いている番組に、こんなのがあります。

 

【山下達郎】J-WAVE サンデーソングブック (最高の選曲と最高の音質のオールディーズサウンド)

 

https://www.tatsuro.co.jp/sunday/

 

 

1992年から放送。本人の音質へのこだわりから単にレコードやCDをかけるのではなく、事前に自宅で音源をデジタルリマスターできるPro Toolsを使ってラジオ向けにマスタリングした音源をデジタルデータにして、TOKYO FMのサーバーに流し込んでオンエアしています。達郎さん曰く「最高の音質」とうたっているのはあくまでラジオ向けの音で、オーディオ的に最高の音質というわけではないそうです。そこがまた『らしさ』であり『オリジナル』です。

 

DJ TAROJ-WAVE サタデーナイトバイブ(毎回マッシュアップも飛び出すDJホームパーティ)

 

https://www.j-wave.co.jp/original/nightvibes/

 

DJ TAROが土曜の深夜にワンマンオペレーションでオリジナルミックスやマッシュアップをガンガンかけるプログラム

 

マッシュアップ(英: Mashup)とは2つ以上の曲から片方はボーカルトラック、もう片方は伴奏トラックを取り出して、それらをもともとあった曲のようにミックスし重ねて一つにした音楽の手法である。「楽器はできないけど、別のやり方で音楽は作れる」と毎週膨大なネタを仕込んでくるところが『らしさ』であり『オリジナル』です。

 

 【ゴンチチ】NHK FM 世界の快適音楽セレクション(意表を突く多彩なノンジャンルプレイリスト)

 

https://www4.nhk.or.jp/kaiteki/

 

1999年に放送開始。案内役のギターデュオ”GONTITI/ゴンチチ(ゴンザレス三上& チチ松村)のひょうひょうとした軽妙なおしゃべりと、ユニークなテーマと切り口で、3人の選曲者(藤川パパQ、湯浅学、渡辺亨)と共に、文字通り「快適音楽」をノンジャンルで紹介する番組。意外な選曲により、ジャンルを越境し、愉しく、驚き、 和ませながら世界に散らばっているとっておきの快適音楽を紹介。 こちらはチームプレイなのですが、ものすごく選曲が『らしく』『オリジナル』です。

 

 

すごく話がそれましたが、こういった番組の支持層は年代を超えて拡がってきているようです。いつでもどこでもどんな音楽でも手軽に聴ける時代には、好きな音楽と出会うことが困難であったおじさん世代の選曲や編集が、若い人たちにも新たな価値を創造しているようです。パーソナリティと近い世代の音楽ファンとしてはなんとなく嬉しい気もします。どの番組も共通しているのは、それぞれのパーソナリティのこだわりもさることながら、相当の時間をかけてちゃんと「仕込み」をして毎週臨んでいるところです。みなさん「職人」です。意外とこれからは、単に数値的評価ではなくて「積み重ねてこられたもの」や「あの人なら間違いない」みたいなことが、改めて大切にされていく予感がします。音楽の好きな方はよかったら聴いてみてください。

 

 

で、これからどうなるのか?

 

最近のGoogle広告やSNS広告の裏側の進化を見ていますと、効率的な成果に日々最適化されています。いかに広告主にお金を使ってもらうかが収益のキモですから、これからも日々進化を遂げていくものと思います。

 

多くの情報にアクセスできるようになった現在も情報格差というものは性質を変えて拡大しています。なぜなら情報は多くて自由に望むものにアクセスしているようで、実は表面に現れやすいものを多く見せられているからです。(個人的にはYouTubeSpotifyのレコメンドはまだまだ当たり前すぎてつまらないです)

 

本当に求めているものにアクセスしているようで、実のところはそう簡単には出会えない構造になっているのです。直接対価を負担しないで利用している我々ユーザー側に求められるリテラシーも、どんどんハイレベルになってきた気がします。

 

住宅を手に入れたいと思い立った場合、結局のところ今も昔も情報弱者お施主様は情報弱者です。情報が少なすぎても多すぎても結局は自分ではよくわからないので「一貫したポリシーを体現してきた人」や「情報選別者として信頼できる人」を探すのです。そして、その人の選別に従う傾向があらためて強くなっていきそうな気がします。住宅事業の分野でそのとき選ばれるのが、是非とも『地域の工務店』であって欲しいものです。

 

何が正しい情報で何がフェイクニュースかは一概には言えませんが、多くのrecommend情報には裏(スポンサー)があると思っておく必要はあると思います。それが世界的なビッグビジネスである事は紛れもない事実ですから。今後あつかえる情報量が、更に増えていくとすると「その人が過去何を言って来たか?何をやってきたか?」が全てアーカイブされて総合評価されるようになってくるかもしれません。現にGoogle earthではタイムマシーンのように過ぎ去った過去の衛星写真がアーカイブされていて、懐かしい景観を自由に見ることができます。

 

もしそうなると、その場その場でとっかえひっかえやってる人には厳しい時代になるかもしれません。

 

 

 

社長の会社は本格的にAIに評価された時に大丈夫でしょうか?場当たり的にとっかえひっかえやってきていませんか?これまでやってきたことにポリシーがなかったり、ブレブレだったりしないですよね?

 

 

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