大量検索での発見
自社のコンサルティング説明会を告知しようと思い、パソコンに向かいました。
いざ「対象となる会社は?」といろいろ検索をしてみるのですが、どんなワードで検索すればいいのか?なかなかピンと来るサイトが出てきません。目的に見合う検索ワードがわからないと、検索エンジンも探しようがないという事のようです。
「自社のコンサルティング説明会に来てくれそうな社長のいる会社」というワードで検索したらAIがピックアップ、ズラリと候補サイトが並ぶといいのですが、そうなるまでにはもう少し時間がかかりそうです。
仕方ないので、手当たり次第に工務店さんのサイトを見てみる事にしました。まずはたくさん見て、有力な検索ワードがないものか探ってみようと思ったのです。普段はピンポイントでしか検索したりしないので、一度に大量に工務店さんのサイトを見るというのは初めての試みでした。
次々と画面に現れるサイトは気になるコンテンツもあって、ついつい色々見てしまいます。そうこうしているとアッという間に時間が経つので、トップページだけどんどん見ていく事にしました。気になったサイトは後でまた見たいので開きっぱなしにして、無になって次々とトップページだけ見て行きました。開きっぱなしのタブが徐々に増えていって、そのうちタブに何が書いてあるのか分からないほど小さくなってしまいました。
↑こんなにタブが細かくなったのは初めてでした
最近ではスマホが普及し、ほとんどの場合パソコンよりもスマホの画面でウェブサイトを見ることが多くなりました。机に座って仕事をしていますと、ウェブサイト閲覧も画面が大きくてみやすいパソコンでやってしまいますが ”お客様目線” ということを考えるとスマホで見るべきです。どっと並んだパソコン画面のタブを見ていてそれに気がつき、続きはスマホに切り替えて見ました。
レスポンシブデザイン
スマホに切り替えると、すぐに明らかな違いが見えてきました。そうです。スマホ画面表示に最適化されているサイトとそうでないサイトです。レスポンシブデザイン※1と言われる技術で、大きさの違う画面に合わせて見やすく調整して表示するものです。パソコンは横長ですが、タブレットやスマホは縦横兼用だったり画面がパソコンよりも小さかったりするのに対応する表示方法で、多くのサイトで導入されています。スマホで順番に見ていきますと、たまにパソコンの表示内容がそのままスマホサイズに縮小されて、えらく細かい字が並ぶサイトがあります。そのようなサイトが、レスポンシブデザイン未対応ということになります。
※1 レスポンシブデザイン:「レスポンシブWebデザイン」ともいい、PC、タブレット、スマートフォンなど、複数の異なる画面サイズを検出しWebサイトのページレイアウト・デザインを柔軟に調整・最適化することを指します。
スマホでサイトを見ていて突然えらく細かい表示のページが出てくると、人差し指と親指で拡大します。そうすると老眼の人にもよく見えるようにはなりますが、今度は他の部分が見えなくなったり、他のページに行くためのメニューもどこかにいってしまいます。今度は人差し指で左右上下に画面を動かして目的のものを探すことになります。ご経験の方もあるかもしれませんが、そのうちそのサイトを見るのをあきらめ閉じてしまったりします。(これは良くない状況です)
ウェブサイトの制作側の人は、かなりの確率でデスクトップ型の大きな画面で作業しています。依頼主の社長も、大きなデスクトップ画面で新しいサイトの出来栄えを確認していたりします。大半のお客様は小さなスマホ画面で見ていますから、サイトの出来栄えは小さな画面で確認するべきことは明らかですが、このようなズレも未だによくある事なのです。
静かに進むテンプレート化
スマホでの表示がうまくいっていないサイトは「かなり前に会社のホームページをつくったが、そのまんま放置」という社長のところが多いと思います。以前はウェブサイトといえば、デザインもプログラムも個別に一から作るものという感覚でしたが、最近ではベースになる仕組み(WordPress※2)や即戦力となる雛型(テンプレート※3)が多く利用されています。
※2 WordPress(ワードプレス)とは、無料で使えるコンテンツ管理システム(Contents Management System) 「シンプルで直感的な操作性」「高いユーザビリティ」「Web標準設計準拠」「拡張性」などが評価され、WordPressのシェアは、全ウェブサイトの40.8%、CMSの64.6%という値で他のCMSを寄せ付けない圧倒的1位を維持しながら着実にシェアを伸ばし続けている。
※3 テンプレートとは、ウェブサイトを作成する際に使用できるデザインやレイアウトの雛形。一定の制約はあるものの、既に完成しているレイアウトやデザインをそのまま活用できるので、比較的簡単に自分好みのウェブサイト作成が可能。テーマとも呼ばれる。
WordPressには機能を追加するプラグイン、テーマと呼ばれるテンプレート(雛型)がたくさん開発されています。テーマを利用すれば、画像やテキスト(文章)を用意するだけでウェブサイトはとりあえずは完成します。ワードプレスがOSとすると、プラグインやテーマはアプリといった役割です。
テーマには様々なデザイン・自由度、有料・無料のものがあります。無料のものでも用途によれば十分機能するものもあって「レスポンシブデザイン」も基本機能として最初から組み込まれています。ワードプレス自体がオープンな仕組み(オープンソース※4)なので、追加して機能を増やす手段が多数リリースされ続けています。また、扱える人が多く、教えてもらえる「先生」も見つけやすいという特徴があります。
※4 オープンソースとは、ソフトウェアを構成しているプログラム「ソースコード」を無償で一般公開すること。そうすることで、誰でもそのソフトウェアの改良やプラグインの配布が行なえるようになる。
一度に大量に工務店さんのサイトを見ていると、FC(フランチャイズチェーン)やVC(ボランタリーチェーン)の本部が用意したウェブサイトのコンテンツ管理システムに社名・住所・電話番号・事務所所在地の地図データのみ入力して出来上がり、といったサイトも多くありました。そういうサイトでたくさん出てくる実例画像には、どうやら自社のものはなさそうでした。同じVCの別の会社のサイトでも実例画像は同じでしたから。
ここで工務店業におけるウェブサイトの分類を整理しておきます。トップページをたくさん見ていると、大きく分けると3つのグループになりそうです。
その3つをカレーに例えると、
●以前のような一品生産型サイト
↓
↑スパイスを調合してつくるこだわりカレー(個別に好みの味を追求できますが費用も時間もかかります)
●ワードプレスやテーマ(変更可能なテンプレート)を利用したサイト
↓
↑カレールウでつくるおうちカレー(具材を工夫すれば美味しい手作りカレーができます)
●FCやVC本部から提供される加盟店サイト(変更不可のテンプレート)
↓
↑温めて即食べられるレトルトカレー(とにかく楽ちんですぐに出来上がります)
という感じかと思います。
表示技術の進化の先は『中身』に回帰する
これからはウェブサイトのテンプレートは一層進化して、用途・機能別にさらに高機能なものが選べるようになると思われます。よほどの事がなければ、1から作る必要性は薄れていくでしょう。
そうなると、最後に残るのはやはり「中身」です。その「中身」が社長の『お顔』になるのです。見ていただく方が、まだ見ぬ社長の『お顔』を初めてイメージする大事な「中身」ですから、そこは人まかせに出来ない事は明らかです。たとえ、FCやVC本部から提供される加盟店サイト(変更不可のテンプレート)であっても、独自の画像・動画や言葉で独自性を現すことは可能です。
今回、一度に大量の工務店ウェブサイトを見て戦慄を覚えたいちばんのことは、工務店サイト全般の『金太郎飴化』です。
みんな似てきているのです。原因は2つです。
①よく使われているテンプレートやテーマを使って手軽に制作している(枠組みが似てくる)
②画像やコピーライティングもコピペやパクリですませている(表現する「中身」も似てくる)
「ベンチマーク」と称して注目しているうちに「研究」が「模倣」になってしまうこともよくある事です。本質が理解できていないと、どうしてもそうなってしまうのです。差別化するために他社のウェブサイトを調べて工夫しているつもりでも、お客様から見た本質的な価値に違いがなく、結果として競合先と似通ってしまう。こういうのを『差別化の罠』と言うそうですが、違いを出そうとすればするほど同じ競争軸で戦うことになるというジレンマに陥ってしまうわけです。
往々にして、マーケティングの知識のある外部の制作会社にまかせっきりにしていると、そのようになってしまうことが多くなっているようです。目に見えるものだけで、目先の成果を狙うからです。多くのマーケティング分析手法は、今より情報が乏しい時代の大企業向けに開発されたものが多く、現代の中小企業に当てはめることは危険をともなうものも多く存在します。地域限定のサービスを提供している工務店業では「そもそも多くのアクセス数や反響が必要なの?」という根本的な原則から疑ってみる価値はあります。
今回、そういう視点で見ていると、社長が言葉や画像・動画を吟味していると思われるサイトは良くも悪くも絶滅寸前です。古いつくりのままのサイトに、お世辞にも上手とは言えない画像、ぼくとつとした文章が展開されているものに、社長の個性と人柄がしっかりと感じられるものが意外と多くありました。ぱっと見では洗練されている『金太郎飴サイト』よりずっと光るものを感じたのです。「本物のお客様たち」も意外とそのように見ているかもしれません。
社長は、自身のウェブサイトをいつもご覧になっていますか?また、その「中身」が自らの価値観や言葉で積み上げてこられたものになっていますか?
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