地域工務店のつくり手の皆さんは、きっと良いデザインの住宅をつくりたいと思っていますよね。
でも、「雑誌に載るような素敵な住宅をデザインするのは自分達には無理だよなあ。」と半ばあきらめてしまっている方が多いのではないでしょうか。
そんな方にお伝えしたいことがあります。
それは、お手本の選び方を間違えているのかもしれないということです。
皆さんがお手本にしているのは誰ですか?
大手ハウスメーカーさんですか?それとも有名な住宅作家さん?設計力の高い有力工務店さん?
私が考える、地域工務店さんにとっての最高のお手本は古民家です。それも、お金持ちではない普通の人が住んでいた古民家です。
ここで誤解しないでください。
古民家特有の太い梁や木組みが参考になると言っているのではありません。
土壁や木製建具が素晴らしいから見習うべきと言いたいのでもありません。
ただ単純に、古民家を建てたときの先人のデザインに対する考え方が最高のお手本になるのです。
「どういうこと?」と皆さん思いますよね。
具体的にご説明しましょう。
白川郷の合掌造りの民家のことは皆さんご存知ですよね。
世界遺産でもありますので、あの民家が美しいということに皆さん異論はないと思います。
ではなぜ美しいデザインなのでしょうか。
建築当時の大工さんたちが学校でデザイン理論でも学んだのでしょうか?
それとも海外の建築雑誌を取り寄せて皆で学んだのでしょうか?
そんなはずはありませんよね。
「なぜ美しいのか?」
長年それを考えてきた私が辿り着いた答えはこれです。
「できるだけ手間がかからないように考えたから」
ただこれだけです。
別の言い方をすれば
「最小の労力で最大の効果を得るために考えたから」
ということです。
300年前の白川郷の人たちは日々真剣に生きていたと想像できます。
限られた資源と労力の中で、家族の暮らしを守るという目的を果たすためにつくりあげた形があの美しい合掌造りなのです。
ある時、建築家吉村順三さんの言葉にこんな言葉を見つけました。
「建築には資源も浪費しないで、できるだけ手間をかけないでいい結果を得るという原則があると思います。」
これだと思いました。
この考え方をお手本にしたら、地域工務店の住宅デザインが変わるかもしれません。