加齢と色彩(高齢者の住宅色彩)

2019/06/2014:4810331人が見ました

皆さま、こんにちは。  
LoIRO. (ロイロ)鈴木あゆみです。  
https://www.loiro.jp 

建築『色』知識、

本日は「加齢と色彩」についてシェアしたいと思います。

 

年齢と色の見え方、は切っても切れない関係にあります。  

現在、日本の65歳以上の人口は3,515万人で総人口の27.7%だそう。  
2036年には高齢化率は33.3%で、3人に1人は65歳以上になります。  

ということで、  
住宅業界に関わる私たちは「加齢と色彩」については  
知っておく必要があります。  

以前のメルマガで「色は目だけでなく皮膚からも感じている」  
とはお伝えしましたが、  
基本的に私たちは目で色彩を判断しているので、  
まずは、加齢によって目に見える色彩がどうなっていくのかをお伝えしていきたいと思います。

 

加齢によって大きく変わる色彩。  
それは  

・黄変して見えるようになること。  

です。  

水晶体は加齢と共にだんだん黄変していきます。  
それに伴い、周囲のものも黄変して見えるようになります。  

私は以前、黄色いセロファンを通して周囲を見渡してみると  
少し感覚がわかるようになるかもしれない、と教えていただいたので、、  
本日の東京の街を見てみましょう。  (トップの画像と同じです。)


左が通常。右が黄色セロファンです。

 

ですが、  
加齢によってたとえ黄変して見えていたとしても、  
色の恒常性(脳が周囲環境から判断して色を補正して見えさせる作用)が  
私たちには働くので、黄変しているように感じるとは限りません。  



色相環に黄色いセロファンをかぶせてみたのがこちら。 

 

 

左が通常。  
右が黄色セロファンです。

 

加齢によって、  
主に紫、青から緑系統の色がわかりにくくなる、と言われていますが、  
どうでしょう。  

紫にいたってはほぼ茶色ですね。。。  


他のシミュレーションを確認しても  
ピンクは黄土色のようになり、  
紫はほぼ茶色。  
エメラルドグリーンはお抹茶色のように見える。  
となっており、とても驚いた記憶があります。  



こちらは、『高齢者のための照明・色彩計画』からの抜粋になりますが、  
住宅で一般的に使用されるベーシックな色がどう見えるのか。  


左が通常。  
右が黄変です。

 

 

以上、「加齢と色彩」について  
加齢と共に色はだんだん黄変して見える、ということでしたが、  
以下の変化も見られます。  

・色の弁別能力の低下  
色相の判断の能力が加齢と共に低下すると言われていますが、  
これにはかなり個人差があります。  
一般的には、赤紫系と青紫系の弁別能力の低下が大きく見られるようです。  


・白内障(60歳代で60〜70%、80最代で90%)  
水晶体の白濁が進み、霧がかったり物が二重に見えたりする現象です。  
現在は手術で改善できますよね。  


・まぶしさ感  
水晶体の黄変や白濁だけでなく、角膜等も混濁・変性し、  
まぶしさ(グレア)を感じるようになります。  
特に明るい光があると、まぶしさをより一層感じます。  



・明暗への順応力低下  
網膜に届く光の量が20歳を基準とすると  
50歳で50%、60歳で66%現象するといわれています。  
それはつまり、明るい所から暗い所に入った時に  
目が慣れるのにとても時間がかかる、また、  
50歳を過ぎると完全には順応できなくなってくるそうです。  



私達が住宅空間をつくる上で「加齢と色彩」について気をつけることは  
・識別しにくくなる「青や紫系統」と「黒」等を隣り合わせにしないこと。  
・空間に使用する色彩の明度(明るさの)差をもたせること。  
・適切な照明計画(作業面については通常の2〜3倍程度の照度)  
・グレアに配慮する  
等です。  

だからといって、  
原色ばかりを使って色の差を激しくする、ということとは違いますので  
気をつけてくださいね。   

その方その方によって色の感じ方は違うので、  
お施主様にどのような色を快適に感じるか、等をきちんとヒアリングしながら  
住宅づくりをしていくのが最適な方法なのではないでしょうか!  

 

本日は以上です。

LoIRO.(ロイロ)鈴木あゆみでした!

https://www.loiro.jp 

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