太陽と風のぜいたく
4月になると、すっかり暖かく春です。薪ストーブも完全に出番がなくなりますが、例年4月頃まではソーラーシステムの太陽熱取り込みは続けています。
鹿児島の4月の太陽はかなり強くて集熱は強力です。よく晴れたら、制御盤が示す屋根の中の空気の温度が70°Cを超える日もあります。こんな日には昼間は集熱をしつつ、窓は開け放して夕方まで過ごします。
昼の間は屋根で温まった空気がいったん床下に入ります。その後、床下から勢いよく吹き出してきて窓から出て行きますので、少しぐらい窓を開けていても外の空気が入ってくる感じではありません。日中取得した太陽熱が、こうして床下のコンクリートに蓄熱される仕組みです。
↑空気式ソーラーシステム「そよ風」と4月とある日の制御盤(棟温が70℃を超えています)
↑空気式ソーラーシステム「そよ風」のダクトまわり【サーモ画像】(床まで暖まっているのが分かります)
↑空気式ソーラーシステム「そよ風」のダクトまわり【実際の画像】
昼間、春の香りとともに室内に入ってくる風を満喫して、集熱が止まる夕方には大きく開けていた窓を少しだけにします。日没後の外気温は大きく下がっていきますが、昼間の集熱で床は暖かくなっています。窓を開けていると室温は少し下がってもいい感じに「頭寒足熱」の温熱環境が生まれます。
これがなかなか気持ちが良くて、毎年恒例の春の楽しみです。生命力にあふれる外の空気をいっぱいに吸って、1日中素足で過ごす「ぜいたく」をさせてもらっています。しかし、もう少しするとすぐにジメジメの季節に突入します。南国の初夏の湿度は半端ないからです。
↑空気式ソーラーシステム《そよ風》の冬(4月まで)の動作イメージ
↑空気式ソーラーシステム《そよ風》の夏の動作イメージ(もうすぐこちらに切り替わります)
《そよ風》の詳しい仕組み・特徴は環境創機さんのウェブサイトをご参照ください↓
環境創機株式会社
自宅新築時には「OMソーラー」として実装されましたが、後に ”改造手術” を行い、最新型「そよ風」として生まれ変わりました。生まれ変わりの詳細については、をご覧ください。
「湿度」とは何か?
一般的に「湿度」というと「相対湿度」を指していますが、湿度の表し方には「絶対湿度」もあります。「湿度」は温度よりは体感もあいまいで、重要なのに捉えにくい指標です。「相対湿度」と「絶対湿度」についてわかりやすい例えで復習します。
空気を座席数が決まっている会議室に見たてます。
仮に、最大で16人座ることが出来る部屋に8席だけが埋まっているとします。 相対湿度とは「座席数に対してどれだけの席が埋まっているか」という「割合」になりますので、この場合は相対湿度が50%ということになります。
対して絶対湿度は「実際に座っている人」の「数」になりますので、1人を1gとした場合、絶対湿度は8g/kg’(=座っている人が8人)ということになります。
↑湿度の概念図①
上の例の場合座席は16席ですがこの座席数、実は温度によって変わります。ここが「湿度」を理解する上でややこしいところです。温度が上がれば空気中に含むことの出来る水蒸気量も多くなりますので、絶対湿度が同じでも相対湿度は変わってきます。
温度16.5℃の時には座席数が12席あり6人が座っています。1人を1gとした場合、絶対湿度は6g/kg’で、相対湿度は 50%です。温度25℃になると座席数が18席に増えます。座席数が18席あり座っている人は6人ですので、絶対湿度は先程と変わらず6g/kg’です。
しかし全体の座席数が増えて、座っている座席の比率は変化していますので、相対湿度は約33%となります。
↑湿度の概念図②(温度によって座席数の変化する会議室をイメージしてみてください)
冬季に外気の湿度が50%あっても乾燥していると感じるのは、空気中に存在する水分量自体は少ないためです。
■相対湿度
ある温度の空気中に含みうる最大限の水分量(飽和水蒸気量)に比べて、どの程度の水分を含んでいるかを重量割合で示す値で正式には【%RH】で表します。【RH:relative humidity(「相対湿度」の英語表記)の頭文字で、相対湿度を表す時に使用します】
↑相対湿度の概念図【飽和水蒸気量(透明な箱)に空気中の水蒸気量(青色)がはいっています】
■絶対湿度
湿り空気(一般に存在する空気)中の乾き空気(全て水分を含まない空気)1kgに対する水蒸気の重量割合を示し、正式には【kg/kg(DA)】または【kg/kg’】で表します。最後のkgの後ろについている表記は、分母が乾き空気(水蒸気を全く含まない空気)の質量であることを明記するためのものです。【DA:dry air(「乾き空気」の英語表記)の頭文字で、絶対湿度を表す時に使用します)】
↑絶対湿度の概念図【1kgの空気(透明な箱)に空気中の水蒸気量(青色)がはいっています】
「インフルエンザ」と「カビ」
最近では住宅の理想的な湿度管理について、絶対湿度が8.4g/m3以下なら「窓を閉めて加湿を」と、15.6g/m3以上なら「窓を閉めて除湿を」と言われています。これは日本の平均的な温度・湿度・気圧の条件下で計算すると、一般に8.4g/m3以下になるとインフルエンザウィルスが活発になり、15.6g/m3以上にあるとカビが活発になるからだそうです。(ここでは絶対湿度の単位を測定機器の表示によく用いられているg/m3としています)
4月の自宅での温度・相対湿度のデータから絶対湿度の水準を求めてみました。慣れない人にはややこしいかもしれませんが、せっかくなので紹介しておきます。ちなみに、4月12日(火)は湿気が多いと感じるぐらいの日。そして、4月16日(土)はカラッとしたさわやかな春日和の日でした。
体感的に差を感じた両日の温度と相対湿度(グラフ中の赤マル印)を絶対湿度早見表にあてはめて絶対湿度を調べ、比べてみます。(すべて午前0時時点で比較)
以下の絶対湿度早見表の、
ピンク部分は「加湿推奨範囲」
ブルー部分は「除湿推奨範囲」
イエロー部分は「インフルエンザ流行注意範囲」だそうです。「快適範囲」狭いですね。
■外気温
●週末までは暖かい日が続き、最低外気温は20°Cあたり。週末になって寒の戻りがあって11°Cまで冷え込んでいます。週末にかけて、相対湿度は90%から33%まで変化しています。
↑外気の温度・相対湿度(4月11日(月)から4月17日(日)1週間)
●4月12日(火)では15.6g/m3に。4月16日(土)には5.9g/m3まで下がっています。
↑外気の絶対湿度(4月12日(火)→4月16日(土)の変化)
■1階床下(いちばん温度の低い場所)
●ほぼ毎日集熱ができていて、最高温度は30°Cあたり。週末になって寒の戻りがあっても最低温度は23°Cあたりです。週末にかけて、相対湿度は64%から26%まで変化しています。
↑床下の温度・相対湿度(4月11日(月)から4月17日(日)1週間)
●4月12日(火)では「快適範囲」と言われる水準の12.4g/m3に。4月17日(土)には「窓を閉めて加湿を」と言われる8.4g/m3にせまる9.3g/m3まで下がっています。
↑床下の絶対湿度(4月12日(火)→4月16日(土)の変化)
■2階ダイニング(いつもいる場所)
●大きな窓を開けたり閉めたりする場所ですが、最高温度は27°Cあたり。寒の戻りがあった週末には最低温度は19°Cあたりです。週末にかけて、相対湿度は83%から31%まで変化しています。
↑2階の温度・相対湿度(4月11日(月)から4月17日(日)1週間)
●4月12日(火)では「快適範囲」と言われる水準の12.4g/m3に。4月17日(土)では下がっていますが「快適範囲」の9.8g/m3です。
↑2階の絶対湿度(4月12日(火)→4月16日(土)の変化)
「湿度」って、なかなか厄介なもののようです。
「絶対湿度」という指標で見てみると、窓を開放しての自宅の過ごしやすさも今のうちであることが判明しました。もうじき外気の湿度が上昇し始めると、絶対湿度が「窓を閉めて除湿を」と言われる水準に突入することも、数字から明白です。短い春ですが、窓を全開でこの時期だけの「ぜいたく」を楽しみたいと思います。
社長の会社では、「湿度」に対する指針をお持ちですか?ちゃんと知っていて「無視」するのと、よく知らないので「パス」するのは全然違いますよ。
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