「アフターメンテナンス」の極意(その2)からつづく
「シンケンの仲間たち」登場
あらかじめ運び込んでもらった材料に塗装も施して、いよいよ工事に入ります。シンケンの大工さんたちがやってきました。みんな、おなじみの顔ばかり。私の入社前からずっとアフター一筋「生き字引」と呼ばれる ”師匠” も来てくださいました。
シンケン社員の時は自分の仕事で毎朝出かけないといけませんでしたから、自宅のメンテナンスで誰かが来てくれる時も妻に任せっきりでした。自分の家の工事には、なかなか立ち会えなかったのです。
自宅のメンテナンス工事は貴重な学びの機会でもある訳ですが、「その時家にいられない」は「業界あるある」ではないでしょうか。お客様宅と違い、自宅ならば施工後の経過もずっとモニターできますので、問題の本質や対策の効果がよく分かるのです。
会社を離れた現在では時間に自由がききますので、存分に工事に立ち会えます。(というより一緒に工事する感じです)社員時代にも、もう少しこういう余裕があったらよかったのにと思う次第です。
↑【お隣側】シンケンの仲間たち登場(みんなおなじみの顔ばかりです)
↑【お隣側】ダイナミックに解体していきます
コンクリート擁壁の上に載せてある集成材を解体していく際に、褐色腐朽菌に対して確認できた点です。
①褐色腐朽菌は屋外の雨のあたる環境であれば、どこからでも入ってくる
集成材は北側(お隣側)も南側(自宅側)も、カズラが取りついているか否かにかかわらず、まんべんなく褐色腐朽菌にやられていました。
②褐色腐朽菌は雨風のあたらない場所(倉庫内部)から木を腐らせてはいなかった
微生物である腐朽菌は生物であるため、私たちと同様、水、空気、温度、栄養が必要で、倉庫側ではそもそも空気中を漂っている腐朽菌の胞子が侵入しにくいこと、水分が少ないことが影響していると思われます。
③褐色腐朽菌の侵食深さは20年間で100mmには満たなかった
倉庫内部側に面している集成材はどの部分もしっかりしていて、解体するのも大変でした。解体した材料を見てみると、雨ざらしの北側(お隣側)から南側(自宅倉庫側)に褐色腐朽菌が侵入していったと考えられますが、その影響は材料の半分強までで、さすがに反対側までは到達していませんでした。それにしても「褐色腐朽菌」恐るべしです。集成材は4寸サイズですから厚みが120mmあります。ボルトの部分には穴が空いてはいますが、両面雨ざらしの部分はすべてが朽ち果てていました。
↑【お隣側】カズラのつるに四苦八苦する仲間たち
↑【お隣側】カズラの太さが半端なく、なかなか切れませんでした
新築時にポットで植えたカズラですが、20年も経つとその「つる」は直径40mm近くになっていました。もはや「つる」というより「木」です。そして、庭にある「クス」や「カシ」よりもずっと硬いのです。
同じ太さでも年月をかけて成長したものは強靭に育つのですね。お隣の白いアルミフェンスがある部分は、隙間が狭くてノコギリが使いにくいため撤去するのに苦労しましたが、最後までみんなで綺麗に撤去してくれました(感動)。いい職人さんの仕事は、解体工事の段階でも真価が現れます。
無くなってみて分かる「ありがたみ」
解体が完了して、集成材は全て撤去されました。2本重ねで全長約18mありましたので、梁6本分です。けっこうな材積でした。カーポート屋根のある部分は倉庫の壁も兼ねていましたので、倉庫の中の荷物は丸見えになっています。
倉庫の中に使わずに立て掛けておいたダンボール箱がぼろぼろになっていましたが、これは明らかにシロアリがここにいた痕跡でした。20年の時を経て「タイムカプセル化」している段ボール箱もたくさん見えます。
こうして、新築時からずっとあったものが突然なくなると、その部分の存在意義がはっきりと分かります。なぜなら、いざ無いとなると色々と成り立っていないのです。そういう意味では復旧する意味は十分ありそうです。
また、新築の際に「どういう順番で、どうやって固定してあったのか」といった点は外してみるとよく分かります。大工さんたちの興味はこういうところに集中します。そして、「ここはこうしたらよかったのに」といった点が会話の中心になります。アフターメンテナンスの現場は、研鑽する材料の宝庫です。
↑【お隣側】解体完了(倉庫の荷物が丸見えになりました)
↑【自宅側】倉庫の扉を開けたらお隣の勝手口が見えてました(シュールです)
↑【お隣側】解体後(ぼろぼろのダンボールはシロアリさんの跡です)
↑【お隣側】解体後(アンカーボルト上部のラインまで集成材がありました)
『匠』のアフターメンテナンス
ひととおり解体が完了したら、小休止です。冷たいお茶とお菓子を準備して、みんなで休憩です。若い大工さんたちは色々な現場の話に飛びますが、仕事の話ばっかりです。休憩タイムになると、大工さんたちの話す音量は上がっていきます。「よそ行きモード」から「茶のみモード」に切り替わるのです。
しかし、仕事中も休憩中も立っている場所は同じ。お客様宅です。「茶のみモード」になったときに元請け会社の様子は、お施主様宅はもちろんご近所にも筒抜けになってしまいます。職人さんたちと元請けとの関係がいいと、他の現場の段取りやお客様の話など「仕事のはなし」が多いものです。いっぽう、元請けとの関係が良くないと「茶飲みモード」で工期や単価のことなど、だいたい「愚痴や文句」が出てきます。その点、シンケンの仲間たちは大声で盛り上がっても安心です。
年配の ”師匠” クラスは少し離れた木陰でだまってお菓子を頬張ります。お茶のおかわりを持って行くと「もうよか。しょんべんが忙し〜なっで」と、いちいちかましてくれます。最近は全国的に猛暑ですが ”師匠” たちは「空調服」などはお召しにならないようです。いくつになってもタフガイです。「鍛え方」が違うのかもしれません。
↑【お隣側】器用に穴の位置を調整しながらスポッと入れていきます
↑【お隣側】集成材設置完了
↑【お隣側】縦も横もピッタリくっついています(ブルーシートの上にあるのが取り外した笠木)
↑【お隣側】集成材に防水シートを載せてから笠木を被せていきます
↑【自宅側】銅版製の笠木は元々載せてあったものを再利用できました
かくして、新築時より耐久性を増したメンテナンス工事が完了しました。果たして、この次に交換する時はいつ頃になるでしょうか?その頃わが家の暮らしはどうなっているでしょうか?ちょっと想像がつかないところもありますが、依頼先だけは次も決まっています。
社長の会社では、築20年のお宅からメンテナンス依頼はありますか?久しぶりに住まい手がどうしているのか?スタッフや職人さんから報告を受けていますか?
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