そもそも、なぜチームコーチングが必要なのか?

2020/07/1722:38810人が見ました

モノリス株式会社の田近です。初回の前回は、特別編ということで、コロナ禍における住宅会社の取り組みについて触れました。弊社もサポートしているその会社にとって売り上げを落とさずにいるポイントは、このタイミングで改めて理念を見直し、それによってオンラインでの打ち合わせにおいても上質化を実現したことでした。

今回からは、弊社のメインサポート業務である「チームコーチング」について解説していきたいと思います。いま、チームコーチングの重要性については住宅会社のみならず、大小関わらず多くの企業で語られるようになっています。ではまず、チームコーチングとはなんでしょうか? その疑問を解くには、チームコーチングの指導を行っている私自身の経歴を少しお話しするのが適切かと思います。

 

初対面同士がチームになる研修との出会い

実は私自身も、チームコーチングを「発見」した瞬間があったのです。「これはすごい。組織の活性化の秘訣を手に入れた!」と強烈に思ったことを覚えています。すでに30年近く前のことになります。

私は1990年から数年間、アメリカ人オーナーによるトレーニングおよびコンサルティングの会社で、研修トレーナーの仕事をしていました。特定の企業向けではなく、幅広くオープンでの研修も担当しましたが、かなり厳しく効果的なトレーニングをリードしていたと思います。ほとんどの参加者が目覚ましい変化と成長を遂げ、それには目を見張るものがありました。

オープンセミナーの参加者は、そこで初めてお互いに出会ったという人々です。その人々が限られた時間内でチームになっていく姿には感動したものです。信じられないかもしれませんが、参加者それぞれが他のメンバーのために必死で協力したり、励ましたりするのです。皆がチームになって、お互いを支援し、想定を超える価値を手にしていく。その様子を目の当たりにして美しいとさえ感じました。

 

コンサルタントへの疑問

一方でそれと同時期に、ある有名なコンサルタント会社のスクールに通っていたのです。コンサルタントとしての知識と技能をより磨くためでした。

コンサルタントはクライアント企業を調査して、分析して、判断して、仮説を立て、さらに考察を重ね、そうしてクライアントに問題解決の処方箋を提案します。そのため、コンサルタントはチームで仕事をしないと、視点が偏ってしまう危険性があり、優れた分析と処方箋を提案することは難しいな、という感想を持ちました。

その時、私は思ったのです。コンサルタントは実際にクライアント企業で仕事をしているわけではない。それよりも、そこの現場で長年仕事をしてきている社員の方が、知っていることは多いはずだ。現場に答えがあるのではないか。

そして、自社の商品やサービスに誇りを持ち、愛社精神をもって仕事をしている幹部社員、現場の社員たちの知恵を集めて、仮説を立てて、組織の方向性や問題解決について合意を作り出したら、その合意形成に加わった人々は気持ちを一つにできるし、同時にリーダー育成にもなる。これは、一石二鳥だと。

私は大きなヒントを掴んだと感じたのです。その後私は独立しますが、この2つの経験が土台になっています。

 

最初のチームコーチングの実践

1995年、私のやり方に興味をもってくれた二人の若い社長がそれぞれの会社に導入してくれました。この会社での事例をお話しします。

 一般的に、人々は見たいように見て、聞きたいように聞いて、感じたいように感じて、固定観念の色眼鏡を通して世界を解釈し、自己正当化をしつつ、判断をするものです。誰でも自分の見方は正しいと思い込んでいるのです。

ですから、いつものメンバーが集まって会議をしても、何も変わりません。ただ集まって議論をしても行先も決まらないまま、時間が無駄に過ぎていくのが落ちです。航行に羅針盤が必要なように、会議にも羅針盤が必要です。

そこでこの2社のサポート先の研修においては、その組織の現状を多角的に把握し、そこに潜んでいる真の問題を探求し、根本的な解決を合意するプロセスを設計して、会議に臨みました。

 

会議で社員が成長し一体化する

会議に集められたメンバーは、はじめは警戒心を抱いて、発言しなかったり、様子を見ていたりという反応でしたが、その場が安全であると分かってくるにつれて、かなり本質的な情報を出してくるようになっていきました

もちろん、意見にはバイアスがかかっていることが多いので、肯定的な情報、否定的な情報、どちらにしても鵜呑みには出来ません。そこで本当は何が起きているのかを正直に話し合い、皆で探求するのです。

このプロセスはメンバー同士の関係を変えました。会社を良くしていくための同志になっていくのが感じられました。明らかに社長に対して信頼を置かず、反抗的な態度を取っていたようなメンバーが逆に生き生きとして、自発的に変革に取り組みようになったのです彼らはチームとなり、自分たちの力で合意に至った方針に基づき、地道な活動を始めました。

最初の会議が終わったときに、疑心暗鬼だったメンバーたちが口々に、「やって良かった。面白かった。会社はこういう風に動かしていくべきだと分かった」と言ってくれたのです。以前と比べるとお互いの信頼感が爆発的に増していたのです。皆が感動していました。予想以上に、リーダー育成、目覚ましい成果の創造、組織の一体化が起きました。これが、それから数年後に「チームコーチング」と名づけることになる最初の成功体験になったのです。

 

この手法はどんな業種でも、どのような組織であっても、どんなテーマを抱えている職場であっても、うまくいく画期的なプロセスだと私は確信しています。今回は私の経験からチームコーチングの意味と目的についてお伝えしました。その具体的な方法について、次回から少しずつ解説していきたいと思います。

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