『ニュータウンバブル』の申し子                                 ■新・戸建分譲

2021/03/2721:36450人が見ました

バブル時代の「高級分譲住宅」

 

ちょうど大阪の住宅・不動産会社に転職した頃は、分譲住宅の販売環境はまさにバブル状態でした。うっすらした記憶ではありますが、当時のことは驚きとともに覚えています。私鉄路線の支線終着駅がかなり山奥まで延びていまして、その駅周辺に人工3万人、総面積346万㎡のニュータウン構想のもとに宅地が開発されていました。

 

子供の頃は大阪市内に住んでいたので、そこは遠足の際に自然を求めて遠出するところとして記憶されている地域でした。もともと山でしたから当然のことですが、そこそこの起伏・傾斜・勾配のある造成計画で、駅前にある営業所から歩いて分譲地現場に向かうと、はあはあ言ってたことを思い出します。6~8000万円台というような場所の割には高額に思える建売分譲住宅が立ち並んでいました。

 

今から思えばどういう受付ルールになっていたのかなと思いますが、売り出しの際にはアルバイトを雇って1人のお客様が同じ物件に複数申し込むというような ”抽選破り” とも言える裏技も横行していました。

若い人は「どこの国の話ですか??」と思われるかもしれませんが、その頃は抽選で当選し購入できたあかつきには翌年売却しても多額の利益が得られるような状況でしたから、そのような異常な活況に沸いていた訳です。

 

そういう事情もあって山奥の私鉄終着駅の高級分譲住宅街では、引き渡し後に当選者が入居してこない物件も多く見かけました。駅前のいちばんいい場所に、そのような「販売済空き家」みたいな家が点々としていたのです。ちょっとした住宅展示場のようでした。人気エリアの新築分譲住宅は、高利回りの投資商品としてもてはやされていたのです。

 

建てても建ててもすぐ売れるという環境で、土地は山ほどあり先輩社員は「今、全部売っちゃえばメチャクチャ儲かるのになあー」と口々に言っていましたが会社としては街の健全な発展のために、あえて供給戸数を限定しながら数十年かけて販売していくというスタンスでした。

 

バブル当時の高級分譲住宅の屋根は形も色も様々で空から見ても分かっちゃいます

 

 

ピンとこない「高級住宅」

 

電気工学科を出て、それまでアパレル企業で商品企画の仕事をしていた私は住宅建築についてはまだ全くのシロウトでしたので、特にこの『高級住宅』を興味深々憧れの眼で見ていました。なにしろ、自分なんかでは到底組めない金額の住宅ローンを組んで人生の成功者といわれる人たちがこぞって買い求めるという住宅です。「坂の上の雲を見つけて登っていく」ような時代感覚再び。気持ちの高ぶりとともに高額商品に携われる自分までもが出世したような気分になったものでした。

 

しかし、率直な印象を言えば「これだけ出してこれ?これはいらんな」というもので、落ち着かないというか、どうしても住みたいと思えませんでした。当時、その理由をうまくは説明できなかったのですが、その違和感みたいなものがその後30年も追求するテーマになってしまった訳です。

 

 

その後の「高級住宅」

 

ふと、その団地内で中古が出てるかなとネットで検索してみました。なつかしいその団地の当時建っていた住宅が数軒ヒットしました。団地全体でも特に駅から遠い場所ほど安くなっていました。いくら供給を限定して少しずつ販売してきても、売られる時は順番通りではありません。多く売られる場所や買う人が少ない場所は安くなります。その両方にあてはまると、すごく安くなります。これが市場原理です。

 

駅に近いほど、新しいものほど、欲しい人が多いほど問い合わせも多くなり、早く高く売れますから物件が多く出まわるとなかなか一筋縄で売却は進みません。新築分譲時にはあれだけ行列が出来て高い倍率で抽選されていたのがうそのようです。当時の住宅販売価格は株価みたいなもので、将来の転売の期待値で形成されていたのです。

 

注文住宅っぽい大きな間取りです。おばあちゃんと同居のプランでしょうか。

 

 

駅前の一等地にある角地区画です。ここは高かったと思います。

 

 

中古住宅としてネットで出てくる画像やストリートビューで現在の外観を見ていると、一見ずつ外観の個性を強調した家の形、外装材や色などは時が経てば無価値になっているようです。外構・造園も画一的に街並みを整えることを目的にルールが決めてあるので、それほど価値を生んでいるとは言えないようです。

 

土地の値上がり期待で買われていたのですから、必要以上に複雑なデザインや外構・造園も高価格感を増強するデコレーションだったと言えます。そして値上がり期待が持てなくなった今、価格は実勢に近づいていくことになります。実需に対する価値を持たない建物のデザインも外構・造園も、もはや上物(建物)がプラスの評価を得ることはまずありません。悲しい現実です。

 

検索で出てきた物件をもう少し見てみます。相変わらず不動産情報としてのサイトには敷地の方位や建物の配置が掲載されているケースは稀です。団地内の新築情報を見てみると、最近どこに行っても見かけるスタイルの家が出てきました。土地面積は70坪弱です。転売された土地に私がお世話になっていた「分譲主」とは違う会社が建てるもののようです。建築中なのか外観は着工時の現場写真や別の場所の建物の写真です。あまり情報を出さず、とにかく案内のアポを取る戦法のようです。

 

まったく庭木もアプローチもないセメント塗りきりの外構仕上げ、丸見えの掃き出しサッシ、根拠なく決められた目立つ屋根勾配などは値上がり期待のない土地に建つ、ベストプライスプランと言えます。ベストプライスプランとは、販売価格を下げても利益が残るよう最も安く建てられる販売リスク低減プランです。こんなのが建て替えなどで、どんどん建つのかと思うと複雑な気分になります。

 

団地内の新築物件の間取り。駐車台数が売りのようです。造園は模様のようになっています💦

 

 

現在建築中のようです。「外観写真」こんなのありなんでしょうか?

 

 

 

左上表記の「同形状」はうそだと思います。こんなのありなんでしょうか?

 

 

発展停止の「分譲住宅」思考停止の「注文住宅」

 

機能的で美しい強靭な高層ビルを早く確実に建設する技術やノウハウなどは大幅に進化したと実感できるのに、なぜ住宅の間取りや住み心地は進化していないのでしょうか?それほど難しいことではないと思うのですが、住宅業界全体がやれるはずなのにイノベーションをやってこなかったから、今業界のみんなで苦労しているのかもしれません。(ような気がしてきました。)この中でも分譲住宅の功罪は大きいものと思います。しかし、もっと大きいのはその分譲住宅をコピペしたような注文住宅を建ててきた業界の姿勢かもしれません。

 

改めて見ていると、市場で売られている住宅の間取りはバブル時代とさほど進化していません。売る側の経済原理から追及され、完成されたものとも言えます。住む人にとっては賃貸住宅とそうは変わらない「ポンコツ」です。性能面は向上しているのでしょうが、こう「ポンコツ」ばかりではいつまで経っても豊かな住宅ストックの形成は期待はできないかもしれません。「分譲主」の建てた建物の中古物件で「新星和不動産株式会社旧施工の注文建築!」という表記を見つけました。まだ団地内で「分譲主」の信頼が残っているようです。もう20年も前に辞めた会社ですが、嬉しいものです。

 

相場は常に変動するものですし、日本中ほとんどの場所の地価の先行きは低下傾向です。住まいづくりを生業としている者としては、将来、古くなっても「ぜひともこの家に住みたい」と言ってくれる人がたくさんでないにしても確実に現れるものを残したいものです。買い手は1人いれば売買は成立するのですから。「家」に「建てた会社の看板」はついてはいませんが、あなたが今取り組んでいる家はおそらくその場所に数十年在り続けるはずです。願わくば多くの人の目に触れ、次の仕事を生むものになると「つくり手名利」に尽きます。どの道それぞれの現場で苦労して建てるのなら、携わってくれた仲間と共にそういう未来を味わいたいものです。

 

 

皆さんは、『高級』とされている住宅を見て「こんなに高いのに、これ?」って思ったことありませんか?そして、ひるがえって自社の売り物である住宅は古くなってなお、選ばれるような住まいになっていますか?

 

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