ウッドショックによる資金繰りへの影響

2021/04/1509:284538人が見ました

住宅業界専門に財務も見ながら全体最適を考えて少数精鋭で粗利を増やす経営パートナー、出口経尊です。

 

さて、木材の品薄による価格高騰や欠品の懸念に関する記事が新建ハウジング等で頻繁に取り上げられています。

実際、身近なところでも深刻な問題としてよく耳にするようになりました。

物の価格は需要と供給のバランスが崩れることで大きく変化するのは市場の原理ですが、今回も主な要因は海外にあるようです。

『今回も』というには理由があって、1年前の20203月か4月頃を思い出してください。

住宅設備機器の欠品、遅延、納期未定が起こったのは記憶に新しいかと思います。

ウッドショックは現場の進捗に影響を及ぼすという点で似たような現象になるのではないでしょうか。

 

どちらも根本的な問題は、供給を国内よりも海外に依存していることかもしれませんが、コスト面などで今すぐ改善するのは難しいかと思います。

  

 

ウッドショックが利害関係者に及ぼす影響

 

そこで気になるのが、企業の資金繰り悪化粗利の低下です。

 

特に今回取り上げたいのは資金繰りの悪化で、現場の進捗が遅延するということは、当然入金も遅れます。

これは工務店や土地分譲を手掛ける住宅会社のような元請会社だけなく、専門工事会社や流通店など協力会社にも大きな影響を与えます。

 

着工金や中間金があれば、立替払いの金額(未成工事支出金)は少なくて済みますが、完成もしくは販売まで資金回収をしない仕組みだとすれば、原価の全額を立替払いする必要があります。それと会社を維持するための固定費や返済も資金流出の対象になります。

また、短期借入の支払い期限にも影響を及ぼす可能性があります。

 

1年前はコロナ関連の融資で容易に資金調達ができましたが、その制度も終了したため、財務内容が良い会社以外は新たな借入が厳しくなります。

木材の納期が通常に戻らない間は、資金流入(キャッシュイン)より資金流出(キャッシュアウト)が多くなることを想定し、貯めたお金でも借りたお金でも現金を潤沢に持つことが事業計画やビジョン実現に必要不可欠です。

 

そこで今回は、資金繰りに不安のある経営者の方、資金回収や調達に触れる機会が少ない幹部の方に向けて、不安を小さくして次の行動に繋げていただくために簡単なお金のブロックパズルや資金繰り表を使ってどのような影響があるかをお伝えします。

 

 

例)1棟あたり販売価格100、粗利25(25%)の新築を年間3棟完工した場合

 

期首から期末までの1年間に3棟完工した場合、売上300で粗利75となり、固定費60だとすれば利益155%)になります。

利益の約30%が税金とした場合、税引後利益10、そこから返済7と貯金(繰越)3になる図です。

 

お金のブロックパズル 

 

収益の予測

 

ここまでは想像しやすいかと思いますが、わかりにくい方は出口の過去の投稿で、お金のブロックパズルの解説をしていますので、ご確認ください。

https://chikalab.net/rooms/108

  

下表の①と②はどちらも3棟受注し年内に順次完工予定、売上や粗利は全く同じ条件としますが、①はウッドショックが無い状況の資金繰り、②はウッドショックの影響を受けた資金繰りです。

 

通常時の資金繰り 

 

非常時の資金繰り

 

仮に②のように木材の不足で56月に工事が中断した場合、翌月払いだとしたら67月の原価の支払い0、固定費と表にはない返済分が資金流出になります。

7月から木材の供給がある程度戻ったとしてB工事が再開、C工事が予定通り着工した場合、8月から支払いが始まるとすれば、9月は月初繰越残高25以上に資金流出することで資金調達をしないと会社は倒産してしまいます。

 

わかりやすさ優先で3棟とも同じ条件にしましたが、実際は様々な条件が入り混じり予想しにくいかと思います。

ここで理解していただきたいのは、入金や借入のタイミングの遅れが会社にとって致命傷になるということです。

 

 

腰を据えて現状と未来に向き合う

 

まずは漠然とした不安を解消し、本業に集中する環境を作るために

 

・物件毎の入出金や固定費などの支出を予測

・日頃から取引のある金融機関に相談

・お金に関する専門家に相談

 

 など、前倒しでお金に向き合う時間を確保してみてください。

ちなみに、金融機関には事前にアポイントを取り、なるべく訪問することをお勧めします。

 

最後にご注意いただいきたい点があります。

それは必ずしも『お金の専門家=税理士』では無いという点です。

未来の経営相談ができる方もいらっしゃいますが、あくまで税理士は『税金の専門家』ですので、双方の期待と役割のズレにはお気を付けください。

 

 

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