【事例紹介】資金繰りの悩みから解放された工務店

2020/12/1716:22711人が見ました

 住宅業界で奮闘する社長の伴奏者、心楽パートナー株式会社の出口です。

 

 前回に引き続き、著者の出口が二人三脚で携わっている工務店でのコンサルティングの実例を元に、経営改善のポイントをお伝えしていきます。

 

 さて今回も注文住宅を年間15棟、3名で手掛ける少数精鋭で社長は40歳前半の工務店の事例紹介です。

 

 販売価格は18002200万円、自然素材を使った2種類のデザインの商品を展開されています。

 

前回の記事

【事例紹介】『場当たり経営』から脱却した工務店

https://chikalab.net/articles/759

 

 202012月現在も仕掛りや契約済の物件が10棟以上ある状態で、9か月先の来年8月までの決算数字が粗方見え、根拠ある売上や粗利目標までもうひと踏ん張りです。

 

 今期分の新築を受注できるのはあと2か月。来年3月になると下期に入り、新築は来期の売上となります。

  

 

年間の返済額の把握から始める

 

 さて、同社の3年前の状況を振り返ってみます。

 

 当時から3名で年間10棟以上受注されていましたが、債務超過では無いものの今までの設備投資等が積み重なり、返済が多く資金繰りが厳しい状態でした。

 

 そこでまず着手したのが、返済が滞らないために1年間に必要な利益がいくらなのかを算出することでした。

 

 これはよくある話ですが、社長に毎月の返済額を聞くと7割くらいの方が把握されていない印象で、返済の詳細を見て調べ直すことが多いです。

 

 仮に毎月100万円の長期借入金の返済があるとしたら、1年間だと1200万円です。

(ちなみに、自動車ローンもリースでなく借入の場合は、長期借入金に含めてください)

 

 根拠ある利益目標については、下記の記事を参照していただきたいのですが、

 https://chikalab.net/articles/646

 これを把握された上で話を進めますが、減価償却費の繰戻が無いとした場合、返済1200万円を賄うには税引後利益1200万円以上、経常利益1715万円が必要となります。(税率30%で算出)

 

 ただし、これだと貯金はできませんし、過度な節税で利益を圧縮してしまうと税引後利益で返済を賄うことができません。

 

 根拠ある利益目標の設定は、1年後に現金を減らさない、貯金をすることが目的とも言えますし、金融機関(銀行・信金等)に示せばプラスの評価になります。

 

 しかし、利益目標と資金繰りは経営において全くの別物。

 

 事例の工務店は返済が多く、かなり気合が必要な売上や棟数目標だったため、今度は受注すればするほど資金繰りにつまずく可能性が浮き彫りになってきました。

  

 

波打つ現預金残高の悩みから解放されるには

 

 この状態を解決するにはいくつか方法がありますが、結論から言うと金融機関(銀行・信金等)と仲良くなり人間関係を築くことです。

 

 先ほどの根拠ある利益目標と、それを実現するために新築やリフォームで売上がいくら必要なのか(粗利と粗利率が大きく左右する)、今期中に何棟新築を完工しないといけないのかが説明できると、金融機関の担当者の理解が深まります。

 

 根拠のない右肩上がりの事業計画では信じてもらえませんし、逆の立場だとそう感じると思います。

 

 参照記事

 粗利と粗利率 https://chikalab.net/articles/694

 売上目標 https://chikalab.net/articles/746

 

 次は、売上や棟数目標を達成するための計画や、既に契約した物件の契約書を元に借入を行いました。

 

 当時、金融機関に『これから支援するので躊躇なく受注してください』と言われた報告を社長から聞いた記憶が残っています。

 

 結果、短期借入で現金を潤沢にして数棟分の原価の支払いに充てることで、資金繰りの悪化を前もって防ぐことができました。

 

 ご承知の通り、1か月の【繰越と入金の合計(現預金残高)】よりも【固定費と原価の合計(支払額)】が多ければ資金ショートで倒産してしまいます。

 

 それまでの社長は金融機関とギスギスしていて、決算書を預かりに来ても不愛想に対応していたそうで、金融機関の方も感情があるわけですから、これだと融資に協力してくれるはずがありません。

 

 金融機関の担当者で差はありますが、社長の接し方や説明の仕方を変えることで資金繰りの悩みがググっと小さくなるものです。

 

 もし、財務内容が良ければ、いつでも借りていつでも返せる当座貸越の融資枠の選択もできます。

 

 また、新型コロナウイルス対策の融資制度を活用して、長期借入を万一の運転資金として持っておくのも良いかもしれません。

 

 

資金繰りには住宅ローンの見直しも有効

 

 さらに言えば、当初から資金繰りに悩んだ原因は地域の特性もありました。

 

 完成までの中間金がもらいにくい住宅ローンの慣習(手数料の抑制)があったため、受注すればするほど原価の支払い(貸借対照表の未成工事支出金)が多くなり、資金繰りが悪化する要因になっていました。

 

 それが受注活動の足かせや行動のブレーキになっていました。

 

 今は短期借入にも頼らないように、中間金があるローンでの契約を前提に受注されています。

 

 見込客に方針を主張できるようになった理由は、中間金の重要性を理解しただけでなく、マインドセット(思考癖や心理状態)の切り替えにより、セルフイメージ(自社や自分の価値)が上がった影響が大きいと思います。

 

 再び、金融機関との関係の話になりますが、最初はざっくりの計画書で構わないので、ぜひ金融機関の担当者に来社してもらうか、できれば支店長にもアポイントを取り、訪問して説明されてみてはいかがでしょうか。

 

 金融機関の目線でアドバイスをもらうのは無料ですし、謙虚な気持ちで受け入れることができれば経営のプラスになります。

 

 計画書の内容も大事ですが、それ以上に社長の姿勢の変化を感じ取ってもらうことが重要です。

   

 

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