借入後の利益倍増計画⑧(売上目標)

2020/10/0907:41505人が見ました

住宅業界のキャッシュフローコーチ、出口経尊です。

数回に分けてお伝えしている【借入後の工務店利益倍増計画】は今回で8回目、シリーズの最終回となります。

ここで初めて読まれる方や復習をされる方のために、前回までの話を一覧にします。ぜひこれまでの記事も参考に、経営数字に強い経営者を目指して下さい。
 

①借入後の工務店利益倍増計画(返済)

https://chikalab.net/articles/589

 

②借入後の工務店利益倍増計画(繰越)

https://chikalab.net/articles/599

 

③借入後の工務店利益倍増計画(減価償却費の繰戻)

https://chikalab.net/articles/605

 

④借入後の工務店利益倍増計画(利益目標)

https://chikalab.net/articles/646

 

⑤借入後の工務店利益倍増計画(人件費)

https://chikalab.net/articles/663

 

⑥借入後の工務店利益倍増計画(固定費のその他)

https://chikalab.net/articles/676

 

⑦借入後の工務店利益倍増計画(粗利と粗利率)

https://chikalab.net/articles/694



 

その売上目標に根拠はありますか?

 

突然ですが質問です。

その売上目標、もしくは棟数目標はどのように決めていますか?

また、スタッフの方はその目標を設定した理由をご存知ですか?
 

ちなみに経営者の方に聞くと、多くは前年対比もしくは稀に他社対比があるように感じます。

 

前回までのシリーズを熟読いただいた方は既にご存知だと思いますが、売上目標の設定の方法の1つに『必要な利益からの逆算』があります。

 

下図のお金のブロックパズルだと、右の尻尾にあたる年間の返済額と貯金したい繰越額の合計から、左上の売上に向かって逆算していく方法です。

 

 売上目標の設定  

 

新築メインの工務店の場合、波打つ資金繰りの管理も別途必要ですが、1年間の会社のお金の流れで、お金が残ったかどうかの基準を設けることができます。

 

2020年はコロナウイルスによる特別融資制度がありましたが、基本的に金融機関は『税引後利益>返済』が評価基準の1つになるため、今後は据置期間を終えてからの返済、貸し渋りを想定して、利益を出せる体質になることが経営の必須となります。

 

詳しい算出方法や考え方については、ぜひ過去の記事をさかのぼって参照してほしいのですが、あらためて計算式をまとめてみました。

 

1.目標利益は?

 =返済+繰越-減価償却費の繰戻+法人税等(30%)

 =(返済+繰越-減価償却費の繰戻)÷(10.3

 

2.目標粗利は?

 =目標利益+固定費(人件費+その他)

 

3.目標売上は?

 =目標粗利÷粗利率

 

また、粗利率が異なる商品を扱う場合は、以下のように計画を立ててみてください。

 

【算出の例】

仮に必要な利益からの逆算で粗利目標が1億円だとしたら、過去の商品ごとの粗利率と、施工管理の許容範囲を想定して内訳を決めます。

 

売上目標:35000万円

新築:3億円(2000万円/棟×15棟)

リフォーム:5000万円

 

粗利(粗利率)目標:9900万円(28.3%)

新築:8400万円(28%)

リフォーム1500万円(30%)

 

上記の場合、粗利目標9900万円になり、1億円まであと100万円足りません。

固定費や利益目標を下げるという手もありますが、リフォームであと334万円受注ができれば、粗利率30%で粗利100万円を達成できる計算になります。また、300万円の受注でも粗利率34%だと達成可能です。

 

計算通りにピタッと行かないのが建築ですが、基準を決める事で努力すべき点が明確になり、目標に近づくことができます。

 

目標設定で最も大切なのは、数字に根拠を持たせて理由が腹落ちすることです。人は納得できれば思考と行動が変わり、会社経営が他人事から自分事に少しずつ近づいていきます。

「根拠ある売上目標」を設定する目的はこの点にあります。


  

売上の構成は3つに分解できる

 

根拠ある売上目標は、机上で数字を設定するだけでは実現できません。先ほど説明した思考と行動があって、はじめて成果として反映されます。そこで、アイデアを抽象的から具体的にするために売上の構成を細分化(チャンクダウン)します。

 

売上の構成を3つに分解すると以下の式になります。

 

【売上=客数(個数)×客単価×リピート率】

 

客数・客単価・リピート率の各項目を増加させることで売上が比例するのは想像できると思いますので、さらに工務店が取り組めそうなことをご紹介します。

 

◎客数(個数)アップ

・チラシ、HP、SNSの発信

・見込み客のリスト作成

・イベント、見学会の開催

・紹介システムの構築

・ブランディング(他社との違い)

・プロセスの見直し(ボトルネック解消)

・ジョイントベンチャー(他業種とコラボ)

・リスクリバーサル(解約や保証制度)

 

◎客単価アップ

 ・アップセル(高額商品の設定)

・クロスセル(セット販売)

・特別扱い(ランク分け)

・値上げ(適正価格の見直し)

・マインドセットの切替

・価値の見える化、伝え方

 

◎リピート率アップ

・クレーム対応

・アフターメンテナンス(定期点検)

・延長保証制度

・電話フォロー

・ニュースレター

・コミュニティづくり

・季節性キャンペーン

・地域貢献

 

それぞれの項目をバランスよくアップさせることが望ましいです。例えば、客数(個数)・客単価・リピート率をそれぞれ34%ずつアップできれば、多額の広告宣伝費を使って客数を10%アップしなくても売上10%アップが実現できます。

 

例:【売上110%=客数(個数)103%×客単価103%×リピート率104%】

  

他にもまだまだ対策はあると思いますので、安心・安全・ポジティブな雰囲気の会議でアイデアを出し合い、ぜひ具体策を工程表に落とし込んでみてください。そして行動を起こし、繰り返していけば、何かしらの成果が生まれるはずです。

  

8回に渡るシリーズにお付き合いいただき、ありがとうございました。お金のブロックパズルをご活用いただいている工務店経営者の中には、債務超過から脱却してショールームの設備投資を行った方、コロナ禍でも12か月先までの受注を確定することで安心を手に入れた方がいらっしゃいます。共通しているのは経営数字に向き合うようになったことです。逆の見方をすれば、今まで向き合っていなかった方ほど、伸びしろがあります。

今後は工務店コンサルの実例を交えながら、数字とビジョンを両立していただけるための記事を書いていきます。

 

  

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