住宅業界のキャッシュフローコーチ、出口経尊です。
数回に分けてお伝えしている【借入後の工務店利益倍増計画】は今回で5回目となります。
ここで初めて読まれる方や復習をされる方のために、前回までの話を一覧にします。
○借入後の工務店利益倍増計画①(返済)
https://chikalab.net/articles/589
○借入後の工務店利益倍増計画②(繰越)
https://chikalab.net/articles/599
○借入後の工務店利益倍増計画③(減価償却費の繰戻)
https://chikalab.net/articles/605
○借入後の工務店利益倍増計画④(利益目標)
https://chikalab.net/articles/646
1年間の人件費を算出する
さて、前回のテーマは「利益目標」でした。そこから、根拠ある利益目標が決まれば、次は粗利目標の設定が必要になります。
計算式だと以下の通りです。
【粗利目標=固定費+利益】
最初に上記式の通り、これから固定費を算出していきますが、固定費は『人件費』と『その他』の2つに分けて説明していきます。
固定費のうちの人件費について
下図のお金のブロックパズルだと赤色の箇所です。
人件費の内訳は、役員報酬、給与・賞与、社会保険料、福利厚生費が含まれます。
人件費を想定する場合、前年・前々年度の支出分を参考に、今期や来期の予測をします。
予測値はざっくり入れる場合もあれば、どこまで見直すか検討することもあります。その時のポイントは労働分配率、残業代、評価制度、採用などが参考になるでしょう。
ちなみに人件費は削減ありきでなく、ビジョンに基づいて戦略的に増やす場合があります。
労働分配率で比べる
労働分配率とは「粗利に占める人件費の比率」です。
比率は業種によって異なりますが、参考に全国の税理士ネットワークTKCによると、木造建築工事業で51.0%、建築リフォーム工事業で53.1%とあります。(令和1年12月決算~令和2年2月決算)
私の実感としては、新築メインの工務店だと45%前後が理想ではないかと思いますが、あなたの会社の労働分配率は何%になりますか?
労働分配率が低いほど少数精鋭で稼いでいる会社と言えますし、逆に給料が安過ぎると見ることもできます。
重要なのはこれを経営者が把握していることです。
もし、利益がマイナスで、労働分配率が業界水準値を大きく上回るようでしたら、1人当たりの生産性を見直す必要があるでしょう。
残業代が会社に及ぼす影響
残業削減については社員一人一人の努力が必要なため、私の支援先企業では社内勉強会を開催させていただき、協力をお願いすることもあります。
残業を減らすべき最も大きな理由は、時給が1.25倍、休日出勤だと1.35倍になることです。
ちなみに、残業は悪ではないのが前提で、納期を守る責任とは切り分けてお伝えしています。
大切なのは、残業が増えることで会社の収益にどのような影響を及ぼすか知ってもらうことです。そうすることで、社長や上司からの残業を減らす指示の意味や目的が理解できるようになります。
端的に説明すると、人件費は1.25倍かかるけど、お客様には1.25倍の価格で請求できないですよね?という話です。
結局、会社が1時間当たり増加した人件費(25%分)を吸収しないといけません。それにより、大事な利益が圧縮されます。
これが売上アップや人手補充に繋がる残業ならまだ良いかもしれませんが、問題なのは売上が同じで残業代だけ増えることです。
「そんなの関係ない!」「自分の手取りが減ってしまう!」と思う方がいるかもしれませんが、過去の利益目標の話でも触れたように、利益を出し続けている健全な会社は貯金ができ、銀行の評価が高ければ多額の融資を受けられるので、コロナのような有事が起きても結果的に雇用を守りやすくなります。つまり、社員にとっても安心や安定した雇用環境につながるのです。
これは、賞与や福利厚生の維持でも同じことが言えます。
残業ありきで生活をしている方もいらっしゃるので一概に言えないシビアな話ですが、会社のお金の流れを正社員やパートの方に理解してもらうことで思考や行動に変化が生まれます。
コロナ禍では休業補償など雇用調整助成金を活用することで一時的に人件費を補うこともできるでしょう。
削減ありきではない
一方で人件費は減らすだけでなく、会社の発展繁栄のために増やす場合もあり、これは評価制度と密接に結びついています。社員の取り組む姿勢や成果によって給与や賞与を変化させます。
また、住宅営業など歩合制の場合は成果ありきかもしれませんが、評価制度は経営理念の行動指針などと結び付けることができます。
あと、固定費は上がりますが、コロナ禍だからこそ建設業は優秀な人財を採用するチャンスです。
実際、顧問先でも求人の問い合わせが増えて今まで以上に素晴らしい方が入社されています。
未経験の場合だと直近の能力面では厳しいでしょうが、考え方や熱意、特に素直な気持ちがあれば今後の成長に期待できます。多少の経験があっても、素直な気持ちが無いとそれ以上の成長は見込めないでしょう。
社長からみれば受注減の不安があるかもしれませんが、優秀な人財の雇用は今まで願っていたことが叶うチャンスであり、ビジョンへの覚悟が問われる場面ではないでしょうか。
人件費の改善の視点は無数にあるので、ごく一部しか触れられませんが、ざっくりと人件費の現状把握や予測はできるかと思います。
固定費の『人件費』を算出できれば、次は家賃や水道光熱費など『その他』の設定です。
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コロナを機に、利益倍増計画や根拠ある売上目標、行動計画を立てたい建設業の経営者対象に、弊社ではZOOMを使った無料個別相談を承っております。
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