住宅業界のキャッシュフローコーチ、出口経尊です。
数回に分けてお伝えしている【借入後の工務店利益倍増計画】は今回で6回目となります。今回も工務店のお金のサポートをさせて頂いている観点から、「粗利目標の立て方」について解説していきたいと思います。
ここで初めて読まれる方や復習をされる方のために、前回までの話を一覧にします。
・借入後の工務店利益倍増計画①(返済)
https://chikalab.net/articles/589
・借入後の工務店利益倍増計画②(繰越)
https://chikalab.net/articles/599
・借入後の工務店利益倍増計画③(減価償却費の繰戻)
https://chikalab.net/articles/605
・借入後の工務店利益倍増計画④(利益目標)
https://chikalab.net/articles/646
・借入後の工務店利益倍増計画⑤(人件費)
https://chikalab.net/articles/663
最初に、1年間の人件費以外の固定費を算出する
さて、「根拠ある粗利目標」を設定するには、前回の人件費に加え、それ以外の固定費の算出が必要になります。
人件費以外の固定費は『その他』と表現します。
計算式だと以下の通りです。
【 粗利目標=固定費(人件費+その他)+利益 】
下図のお金のブロックパズルだと赤色の箇所です。
固定費『その他』の詳細(運営費・設備費・戦略経費)を解説
人件費以外の固定費『その他』の勘定科目はかなり多いので、3つのグループ(①運営費、②設備費、③戦略経費)に分けてみます。
① 運営費
・水道光熱費
・消耗品
・旅費交通費
・新聞図書費
・通信費
・保険料
・支払手数料
・租税公課
・会議費
・研修費など
② 設備費
・リース料
・車両費
・修繕費
・地代家賃
・減価償却費など
③ 戦略経費
・広告宣伝費
・接待交際費など
①運営費について
運営費の勘定科目はどれも馴染みがあるものだと思いますが、特に気を付けておきたいものを紹介します。
《保険料》
節税をスキームとした保険があったように、業績によって目的を見直すことで固定費の削減や保障の拡大、リスク回避に繋げることができます。
《通信費》
額は微々たるものかもしれませんが、固定や携帯電話も使っていない回線や割高なプランのままになっている可能性があります。プロバイダも複数契約のままになっている場合もありました。面倒ではありますが、格安携帯やSNSの利用で通信費の削減ができます。
《旅費交通費》
経営者ご自身の努力も必要ですが、日報に移動距離の記入、高速道路の利用明細の確認、ガソリン代の比較など、チェック体制を整えることでメリハリが生まれます。例えば、通勤用と車両を兼ねる場合は、一人一人の採算意識を高める仕組みが必要です。
《租税公課》
これは削減というより把握や予測が必要になります。消費税込みで算出している場合は、納税する消費税がここに計上されるため、特に黒字か赤字かスレスレの際は予測が重要になります。
②設備費について
設備費も会社の運営に必要なものですが、機器などが主となります。
《リース料》
自動車、コピー機など多岐に渡りますが、まずは購入かリースの選択があります。購入の場合はほとんどが減価償却費になります。ちなみに、ホームページのリースは絶対にお勧めしません。5年リースを組んで痛い目にあった話はよく聞きます。そもそも、5年もしたら陳腐化し、一括購入しても資産価値がなく転売できないからです。
《地代家賃》
コロナを機に家賃相場が全体的に下がっていますので、家賃交渉や面積縮小を視野に入れてみてはいかがでしょうか。
少し話は異なりますが、モデルハウスは所有せず、建売のように転売を前提にする移動式展示場で固定費を大幅に抑えることができます。
③戦略経費について
戦略経費は、将来の売上や利益を作る投資行為になります。
《広告宣伝費》
工務店経営者や幹部にとって、最も興味関心がある勘定科目かもしれません。
諸説ありますが、広告宣伝費は売上に対して1~3%、積極的だと5%と言われているところもあります。例えば、売上3億円で3%なら900万円です。
利益として約70%(税引後利益)を内部留保に回すか、次の売上のために投資するか判断の難しいところですが、そんな時は必要な利益と数年後のビジョンを照らし合わせてみてください。幸か不幸かコロナの影響で折込広告のような紙媒体で大勢のお客様を動員するのが難しくなりました。パワービルダーでは、折込広告を減らしてWEB広告の費用を増やすことで、結果的に広告宣伝費を削減できたそうです。
広告宣伝費と売上の関係性
増やした広告宣伝費に対して、どれだけの売上アップが必要になるのか、お金のブロックパズルを参考にしながらシンプルな計算式をお伝えします。条件として、広告宣伝費を3増やし、粗利率、広告宣伝費以外の固定費、利益は同じとします。
人件費12+その他8+広告宣伝費増3=固定費23
固定費23+利益10=必要な粗利33
必要な粗利33÷粗利率0.3=必要な売上110
ということで、10%の売上アップが必要になります。
あくまでも同価格同粗利の物件になりますが、年間10棟なら11棟の受注、20棟なら22棟の受注が必要です。ただ、会計上は『完工=売上』になるので、注文住宅だと売上計上まで6か月以上かかるため、期をまたいだ受注計画になるでしょう。
ちなみに、場当たり的でなく6か月以上先の売上を見据えて営業活動を行っている工務店では、気持ちや行動に余裕が生まれ、重要だけど緊急でないこと、中長期の計画に着手されています。
削減ありきではない
固定費の『その他』も人件費と同じく、減らすだけでなく会社の発展繁栄のためには増やす必要があるかもしれません。
コロナ禍で売上減により、固定費削減は急務かもしれませんが、未来に繋がる投資行為まで止めてしまうと、さらに厳しい状況、悪循環に陥ります。本当に実現したいビジョンと今一度照らし合わせ、新たなチャレンジとして時間とお金を投資してみるのも経営判断の1つでしょう。
固定費を算出できれば、次は『粗利目標』の設定です。
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