M's構造設計・構造塾の佐藤実です。チカラボ版「構造塾」の第15回です。今回は四号建築物の「仕様規定」のうち、柱の仕様である「柱の小径等」を解説したいと思います。
8項目の仕様ルールの確認
①基礎の仕様
②屋根ふき材等の緊結
③土台と基礎の緊結
④柱の小径等
⑤横架材の欠込み
⑥筋かいの仕様
⑦火打材等の設置
⑧部材の品質と耐久性の確認
柱の仕様について
④柱の小径等(令第43条)
柱の小径等は令第43条に規定されています。小径とは柱の断面寸法のことです。
第1項には「横架材間垂直距離に対する柱の小径の割合」があります。これは横架材(梁材)間の距離と屋根の重さ、建物用途により柱の小径の最小値が規定されています。
この規定では、柱の最少寸法を屋根の重さや横架材間垂直距離により決めています。屋根の重さは柱に作用する「軸力」で、横架材間垂直距離は「座屈長さ」です。しかし、軸力は屋根の重量だけではなく、配置や梁の掛け方で大きく変わってきます。
軸力の大きさを求めるには?
次は下図を見てください。柱の軸力の大きさは、隣の柱との距離の中心線で囲った範囲の荷重により決まります(梁の掛け方によらない簡易的な方法)。
図の中にある赤い柱のように周囲に柱がないとき、荷重を負担する面積が大きくなるので柱軸力も大きくなります。柱の軸力はこのような特徴があることを理解して、第1項の「横架材間垂直距離に対する柱の小径の割合」も柱の「最低限の寸法」を確認する目安と考えてください。
令第43条第6項には、「柱の有効細長比を150以下にする」規定があります。これは柱が細長すぎると座屈(軸力により折れる)しやすくなるため、横架材間垂直距離に対する柱寸法の制限を確認する計算です(下図)。
有効細長比が大きい柱は座屈しやすく、小さい柱は座屈しにくい目安になります。この計算は構造計算において柱の座屈検討を行う際に利用する計算方法です。
ちなみに、第1項の「横架材間垂直距離に対する柱の小径の割合」を満たしていれば、第6項の「柱の有効細長比を150以下」は必ず満たしています。
柱の欠き取りと通し柱の注意点
令43条第4項には、「柱の欠き取り」に関する規定があり、柱の所要断面積の1/3を欠き取る場合は、その部分を補強しなければならないことになっています。
在来軸組工法の柱は105mm角、120mm角が主流ですが、通し柱で胴差等接合部の柱断面欠損を見ると、柱の所要断面積の1/3以上は簡単に欠損しています。しっかりと金物等で補強してください。
令43条第5項には、「通し柱」に関する規定があり、2階建ての隅柱又はこれに準ずる柱は、通し柱としなければならないことになっています。ただし、接合部を通し柱と同等以上の耐力を有するように補強した場合は、通し柱同等とみなされます。
一般的に通し柱は上下階を繋ぐ重要な柱で、木造住宅を強くするイメージがありますが、現在の通し柱の細さ(105mm角・120mm角)と断面欠損を考えると、通し柱は決して木造住宅を強くするものではありません。意外にも梁勝ちで管柱とした方が木造住宅は強くなる可能性があります。