サスティナブルな共感型工務店への道を5つの経営資源から考える④ 〜情報の課題〜

2021/09/1816:48307人が見ました

地球は有限であり、際限のない成長拡大は不可能である。との原則論があります。ITバブルが巻き起こり、テクノロジーの進化があらゆる問題を解決すると夢見心地だった平成時代は地球にある資源は有限でも人間の英知を結集し、イノベーションを起こし続ければ成長に限界は無いとの説を唱える方もおられました。しかし、AIやIot技術が実用化され始め、圧倒的な技術革新とイノベーションを起こした結果、世界の貧富の格差はどんどん広がり、東アジアの戦争状態の紛争もなくならず、貿易戦争といっても過言でない保護主義が蔓延することになりました。やっぱり、地球は有限で持続可能な循環型の社会システムを構築した世界へと転換する必要性があるのでは?と世界的に認められたのはSDGsの国連での採択です。自立循環型のシステムとは、世界全体をカップリングさせて取り組むようなものではなく、各国、各地域がそれぞれに小割りにした経済圏で持続可能な循環を作り上げることが必要です。すべての地域、すべての事業者やコミュニティーが循環型モデルにシフトすることが求められる現在、私たち建築業界もその例から外れる事はありません。このコラムでは5回に分けて5つの経営資源(ヒト、カネ、モノ、情報、共感)のそれぞれを切り口に、工務店のサスティナビリティモデルへのシフトを考察しています。今日はその4回目、「情報」について書き進めます。

情報取得のリテラシー

Googleがウェブサイトに小さな窓を設けて、調べたい単語を入力するとそれにまつわる情報が提供されるサービスをスタートさせて10数年が経ち、世界中の誰しもが一瞬にしてあらゆる情報を平等に手に入れられるようになりました。Googleの出現以前は情報格差は経済格差とまで言われ、高い費用を払って情報を買うのが一般的で、だからこそ経営資源の中に「情報」が入っていたのだと思います。今では、あらゆることがYouTubeで教わることができるようになり、実質情報は無価値化したと言っても過言ではありません。しかし、インターネット上の情報は玉石混在であり、検索エンジンで上位に表示されるのは広告費用を支払った売り込みの情報です。また、悪徳リフォーム会社と呼ばれるような企業のホームページを見ても、立派な企業理念とともに美辞麗句が並んでおり、善し悪しの判断を下すのは簡単ではありません。そんな情報が溢れかえる今となっては情報の正確さやエビデンスを確認するのに検索に対するリテラシーやスキルが必要になってしまっています。

リアルでファクトな情報

何がフェイクニュースで、何がファクトなのかが非常にわかりにくい、非常に複雑で曖昧な今の時代の情報を経営資源の観点で見た場合、価値として認められるのはリアリティーだと考えます。ポジショントークの吹き溜まりと化しているYouTubeや、フィッシングと見紛うような検索エンジンで導かれるウェブサイトのようにその真贋を見極めるのに時間とエネルギーを費やさなければならない曖昧な情報ではなく、リアルでファクトな情報を得るには信頼できるコミュニティーに所属して、双方向のコミュニケーションをとりながら確信を深めていく必要があります。これは、情報の取得だけではなく発信も同じことが言えて、情報を届ける先とまず強固な信頼関係を構築することが必要です。

生きた情報は信頼出来る場にある

前回までのこのコラムで持続可能な循環型ビジネスモデルに必要なのは顧客やステークホルダーとの固い信頼関係であると繰り返し書きました。同じ文脈になってしまいますが、情報を経営資源として生かすのもやはり信頼関係に基づいたコミュニティーへの参加やその構築が必要だと考えます。ちなみに、私が代表を務める株式会社四方継の地域コミュニティーサービスの事業部「つない堂」ではインターネット検索が不要な地域社会を作るをコンセプトに地域で誠実に真摯に事業に取り組んでおられる事業者を取材して、これまでご縁を頂いた会員向けの情報提供や、困った時のよろず相談の窓口を開設して相談者に信頼出来る実績をあげられている専門家を無料でお繋ぎする紹介サービスを行っています。また、会員の事業者からの季節ごとのお得情報の配信や毎月のコラボイベントを行うなど、顔の見えるリアルな情報提供に努めています。何が本当かわかない今の時代こそ、この様な情報が経営資源になりうると思うのです。

何を得るかよりも誰から得るか

私達が単なる建築請負の事業から一歩踏み出して地域の課題解決の為の事業を行う様になったキッカケは、四年前から熱心に学び続けたUXデザインのコミュニティに参加したり、経営者が集う勉強会に足繁く通い続け、リアルでエビデンスが取れる情報を取得し続けてきた事と深い関係があります。もちろん、今現在も先進的な建築関係の団体での学びはもちろんの事、それ以外の多くのコミュニティに参加して広く気づきと学びを得られる場への参加を続けています。時代の変化が激しい時ほど、多くの情報収集が必要になりますが、何を得るかよりも、誰から情報を得るかの方が重要ではないかと思うのです。同じ意図、同じ志を持った信頼出来るコミュニティから集めた情報を経営資源に変えて発信することこそ、持続可能な循環型ビジネスモデル、ストックビジネスへの欠かす事が出来ない要素では無いかと考える次第です。

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一般社団法人職人起業塾は循環型ビジネスモデルを学ぶコミュニティです。

 

 

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