Q.職人を確保する効率よい方法やテクニックはないだろうか?にお答えします。

2019/03/1110:532979人が見ました

弾丸出張での弾丸取材。

先日、東京での一般社団法人職人起業塾のオープンセミナー開催の前に、東京駅でランチを食べながら新建ハウジング社の編集長から超短時間、高速で取材を受けました。建築業界の問題への意見を求められたので、いつもの原理原則に基づいた持論を展開して弾丸トークで答えておきましたが、一緒に来られていた、私が同誌に連載していた時の編集者である盛山さんが、「ついでに新建ハウジング社に届いている相談についてのQ&Aをお願いします。」と工務店経営者から届いた「職人不足問題に対して効率よく解決するいい案はありませんか?」という質問をぶつけて来られました。15年前から職人を社員として登用、正規雇用して技術はもちろんですがそれ以外の教育を熱心に行ってきた職人育成の会社の代表として率直な意見を述べさせて頂きましたが、その答えはシンプルに「効率よく職人不足を解消する方法なんか無い」と愛想ないもので、読まれた方はがっかりされるのかも知れません。この質問は以前から繰り返しよく聞かれるものなので、以下に整理した内容を転載しておきます。

Q.職人を確保する効率よい方法やテクニックはないだろうか?
(工務店経営者・40代後半)

A.働きたい!と思える環境づくりのみが職人の継続的な確保につながります。
(効率的なテクニックはない!)

正直、職人不足を解消する効率よい方法などありません。目先は職人に支払う手間賃を上げて確保するしかないと思いますが、単純にそれを行うと利益を圧迫します。また、今後、職人不足はさらに深刻化しますので、根本的な解決には若い入職者を増やすことが不可欠で、それには若い人が働きたくなる環境を業界が考え、労働環境整備を行う工務店が増えなければなりません。私は工務店を経営する傍ら、「現場マネジメント改革」を掲げ、職人が働き方を変えてもっと稼げる様にマーケティング理論を職人が学ぶ「職人起業塾」を開催しています。これは職人自身が学び、決められた現場作業だけではなく、付加価値を生み出す事でもっと稼げるようになる取り組みです。職人の労働環境整備にかかる費用を職人自らが生み出す仕組みづくりを提案しています。

住宅業界では中長期的には着工減少が叫ばれていますが、現在は消費増税前の需要増で忙しく、今年に入ってからできる限りの職人を確保しているとか、既に段取りが組みづらくなっているとか身近に迫った問題として感じられている方も多いと思います。今活躍している40代〜60代の職人が引退すると圧倒的な職人不足が起こるのはデータでも明らかです。その問題解決は若者に建築業界に職人として入職してもらうしか方策は無く、それには若者が働きたいと思える環境を整えなければなりません。経済的な安定、月給制、社会保険、厚生年金等、他の業種では当たり前にある保証が不可欠で、その上で若者にはモチベーション3.0と言われる貢献感ややりがいを持って働いてもらうことが重要であり、最も大事なことは事業の目的(=理念)の共有です。しかし、業界の経営者の多くが目先の利益を求め、職人を正規雇用、固定経費にしたがりません。外注では無く社員として職人を育てる事で、顧客満足が高まり、継続的なリピート受注や紹介につながり、現場が競合の無い質の高い集客のチャンネルになります。すると、宣伝広告の反響に頼らなくても売り上げ予測を立てられ、職人の正規雇用にかかるコストを賄える様になります。具体的に弊社では、大工が営業から施工管理、アフターサービスまでを担当し売り上げ目標も設定しています。先輩職人が、後輩職人その他の業種との段取りや、工程ごとの品質管理といった現場監督の仕事もするようになっています。生産性が上がるので当然、給料も上がる。一番わかりやすいのは、職人が現場で仕事をとってくる様にすることで、初めからお客さんに関わり、喜んでもらいながら利益を残す。業務の効率化や、現場での満足度の向上を主体的に行ってもらっています。私の目標は大工の年収を地方公務員と同等にすることで、時間はかかりますが若い人が夢を持てたり、安定したキャリアパスを描いて入ってこられる職種、業界にしないと本当にいくら受注しても職人の手配が出来ずに着工、完工が出来ず、売上が作れなくなります。職人の福利厚生等の労働環境改善にかかる経費を、現場での顧客満足を起点に利益を生み出すマネジメント改革、根本的解決を目指される事を強くお勧めします。

寄せ集めの職人に顧客満足なし。

と、まあいつもの調子ですが、当たり前のことを積み重ねて考えると、徒弟制度が完全に崩壊した今、職人は工務店が育てるしかないのが現実です。また、情報化社会になり、いい情報も悪い情報もすぐに拡散する今の時代、品質の担保は不可欠ですが、寄せ集めの職人で工事を行ったところでロクな事にならないのは工務店経営者なら誰しもが知っていること。「完工無くして売上なし」「職人無くして完工なし」そして、「寄せ集めの職人で顧客満足なし」この大原則をもう一度、建築業界の経営者は真正面から見据えて、現場実務者の人材の育成に注力すべきだと思います。そして、外注の職人に比べて圧倒的に経費がかかる社員職人を抱える金銭的な負担の軽減は、現場での職人の働き方、ひいては考え方から改革していかなければなりません。私たちすみれではそこに15年間取り組んできましたし、一般社団法人職人起業塾では全国でそのお手伝いをしています。現在、2019年度の塾生の募集を全国で行っております。ご興味がある方はお気軽に下記までお問い合わせください!(^ ^)

 

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