住宅のプランニングをしている時、間取りは完成したけれど屋根をうまく架けられなくて何時間も悩んだ経験はありませんか?
住宅設計歴17年の私も、かつてはこのためにどれだけ睡眠時間を削られたか分かりません。
でも、この方法に気づいた時から悩むことは無くなったのです。
やり方はとても簡単ですのでぜひ皆さんに知っていただきたく、ここでご紹介します。
まず、この技を習得するための大前提として、あなたの頭の中にある「先入観」を打ち壊す必要があります。
それは「屋根は間取りの上に載せるもの」という先入観です。
実はこれを壊すのが少し厄介です。
なぜなら日本中のほとんどの人がその考え方を持っているからです。
その考え方をベースに住宅業界で急速に普及しているのが最近の建築CADです。
使ったことがある方なら分かると思いますが、間取りをつくれば自動で外観を生成してくれるのです。
つまり、まず間取りがあり、その上に屋根を載せるという考え方がベースになっているのです。
どうでしょう、打ち壊せましたか?
この先入観を打ち壊せた人だけ、この先を読み進めてください。
さあ、本題に入りましょう。
結論から言います。
プランニングはまず外観を決めるということなんです。
もっと端的に言えば、屋根の形を決めるということです。
その土地の形、周辺環境、気候風土などから屋根の形を決めるのです。
でも難しく考えることはありません。
なぜなら屋根の選択肢はとても少ないからです。
私はこれまでおそらく1000件以上(ボツ案含む)の住宅のプランニングをしてきました。
その中で約5割は切妻屋根、そして4割が片流れ屋根、残り1割が寄棟や方形屋根です。
なぜこのように限られるかといえば、屋根の形には絶対的な原理原則があるからです。
それは、「できるだけ費用をかけずに雨、雪、風、日射から家を守る」という原理原則です。
これに則って屋根の形を考えれば自ずと選択肢は少なくなります。
また、そうしてできた屋根の形はシンプルで美しく風景に馴染むものなのです。
ここで屋根についてもう一つお伝えしておきたいことがあります。
それは「屋根は運動する」ということです。
屋根の構造を理解していれば分かるのですが、屋根は生き物のように運動(変形)できるのです。
その運動が住宅の個性的な外観をつくり、内部に魅力的な空間をつくり出すのです。
そうしてできた魅力的な内部空間の中に最適な間取りを入れるという方法をとるのです。
もしその途中で間取りがうまくいかなければ、「屋根の運動」をやり直せば良いのです。
それでもうまくいかなければもう一度「屋根の形」に戻るのです。
実はこれをスムーズにやるために「一間間グリッド」という重要な概念が必要なのですが、これはまたの機会にお話ししたいと思います。
今回のお話しをまとめるとこういうことです。
①住宅のプランニングはまず外観(屋根)を決め、運動させる。
②そしてできた魅力的な空間の中に間取りを入れる。
いかがでしたでしょうか?
これで少しでも多くの皆さんの悩みが解消され睡眠時間の確保につながれば嬉しいです。