ブランディング構築のオープンイノベーションイベント「LOCAS meeting」
昨日、長野県松本市で開催されたLOCAS会議という地域工務店のブランディングをオープンイノベーションで行なっている団体が主催するイベントに参加してきました。北は北海道、南は九州から全国各地で活躍されている有名な工務店が一堂に会して工務店が抱えるあらゆる問題(売上利益、集客、人材不足、事業継承、クレーム等々)を全て解決するブランド構築についての成功事例や知見を共有、令和の新しい時代の工務店の在り方を探る素晴らしいイベントでした。LOCAS会議主宰の青柳氏が率いる「長野県を代表するブランド企業となる」とのスローガンを掲げられておられるサンプロ社の取り組みはインナーブランディングの優先順位と重要性を明確に示され、また、他業態に比して圧倒的に遅れていると言われている建築業界のプロダクトアウト思考から抜け出し「住宅だけではなく生活者のタッチポイント全てをデザインするべき。」との新進気鋭の建築家/起業家の谷尻誠さんのデザイン思考の話は非常に示唆に富んでおり、これからの地方工務店が目指すべきアウターブランディングの方向性を指し示して下さったように感じました。ブランド構築には内部(インナー)と外部(アウター)の両方が必要であるとのブランディングの基本的ロジックを含め非常に多くの刺激を受けたのを踏まえて今回はインナーブランディングに絞っての事例をご紹介します。
ブランドとは?
ブランドという言葉はマススケールで広く認知されているイメージが強く、大手や老舗特有のアドバンテージだと思ってしまいがちで、地方の工務店やリフォーム事業社には縁遠く感じられる方も少なくないと思います。しかし、定義づけを見直してみると決してそんなことは無く、地方ならではのブランド、スモールビジネス特有のバリューも必ずありますし見つける事が出来ると思っています。ちなみにウィキペディアに書き込まれてあるブランドの定義は以下の抜粋の通り。
ブランド(英: brand)とは、ある財・サービスを、他の同カテゴリーの財やサービスと区別するためのあらゆる概念。当該財サービス(それらに関してのあらゆる情報発信点を含む)と消費者の接触点(タッチポイントまたはコンタクトポイント)で接する当該財サービスのあらゆる角度からの情報と、それらを伝達するメディア特性、消費者の経験、意思思想なども加味され、結果として消費者の中で当該財サービスに対して出来上がるイメージ総体。
行動と発信。
この引用からもブランド自体は決して事業規模の大小で決められるものでは無い事はご理解いただけると思います。ただ、情報の発信と伝達が認知を広げるには不可欠で、職人然のまま、何の情報発信をしなくても、良い仕事をしていたら勝手にブランディングが進むかというと、情報過多と言われる今の時代、人と人の情報伝達の形式が多様化する中では難しいと言わざるを得ません。だからと言って闇雲に費用をかけて広告を打ちまくってもこれもまた、ブランドイメージを損なう逆効果になりかねません。では、一体どうすれば良いのか?という問いにこの度のオープンイノベーションで示唆してくれたのは、やっぱり本質論であり、生活者にとって価値ある事業を行うこと、それが行える内部統制、インナーブランディングの重要性と、伝える価値があることを適切に最新のテクノロジーを含むあらゆるメディアを戦略的に駆使して効果的に伝えるべし。と簡単なようで非常に難しい解でした。13の徳目で有名なベンジャミン・フランクリンは「読む価値のある文章を書け、若しくは書く価値のある事を行え」と言われましたが、事業の中身と発信、広報、プロモーションはどちらも欠かす事が出来ない表裏一体の関係性にあるのだと思います。
現場ブランディング。
私も工務店経営者の一人として、来年の設立20周年を機にリブランディングを行おうと現在、インナーブランディングから取り組みを初めており、社員の大工と設計との面談を重ねている真っ最中で試行錯誤を繰り返しております。ここチカラボでは「全ての問題を解決する」と言われる「ブランディング」をマーケティング的な観点で工事現場の面から考えてみたいと思います。具体的な例として、先日、私が主催する一般社団法人職人起業塾の第12期研修の最終講で卒塾検定を兼ねた塾生さん達によるプレゼンテーション大会の内容をご紹介しながらその方法論を紐解いてみます。私たちは「研修の終わりは実務のスタート」と定義して、塾生達が研修で学んだ原理原則に基づいたマーケティング理論を建築現場で実践し、顧客から圧倒的な評価を得て未来の売り上げ利益を生み出す種をまかれることを目指してその意気込みと具体的なアクションプラン、またモチベーションを下支えする習慣化についてプレゼンテーションという形で発表してもらっており、以下にその時の模様の動画も掲載してみます。
現場でのブランディングに必要なもの。
建築会社の評価は最終的には現場にしかありません。いくらプロモーションを上手に行えても内実が伴っていなければクレームになるばかりか、情報化時代では顧客の声は拡散され、評判を落として将来的に全く注文をもらえなくなります。その観点から見れば、実はインナーブランディングの要は現場実務者であるということになります。しかし、職人や施工管理などの現場実務者が、ブランディングに不可欠な自分の仕事についての理想やミッション、それを叶える力をつける習慣、顧客にとっての価値、信頼関係構築の方法論、強みと改善点の抽出等々、事業の目的と三方良しの世界を実現するには自分の役割で何をすべきなのか?と自問自答して、その答えを人前でプレゼンテーション、コミットメントするなんてことはまずありません。私たちは研修の最後に敢えてその機会を作り、上記の9つのタスクを織り込んだ資料を事前に作り込んでアウトプットによる学びを体験してもらう様に考えています。事前にpptで資料を準備して来る者、研修のカリキュラムに組み込まれている記憶術 アクティブブレインセミナーの磁石法を使って9つのタスクを埋め込んだプレゼンテーションの内容を全て暗記して来る者と、塾生たちが準備するのは様々ですが、心を打たれる素晴らしいものが非常に多く、高い意識を持った現場実務者の育成こそが現場のブランディングに不可欠なのだといつも再認識させられます。
人は変われる。
自画自賛するわけではありませんが、今月行った長崎、大阪の最終講でも塾生たちのプレゼンテーションは本当に素晴らしく、私を始め、オブザーバーで参加されていた経営者さん達も目に涙を浮かべるくらいの感動を与えられました。研修に参加される塾生達は決して全員が自ら志願して研修に参加、学びに来た訳ではなくて、むしろ会社からの指示命令で半ば強制的に参加させられた方が少なからずおられます。開講当初は訝しい顔で「なんで俺がこんな研修に参加せなあかんねん、面倒くさいし、どちらかというと苦痛や」と思っているのが如実に分かるしかめっ面と言っても過言でない様な顔をして腕組みしている者もいるくらいです。それが半年後、研修を受けてその内容を実践に移し練習と検証を繰り返すことでこんなに変化するんや!と仰天レベルの変わりようで、堂々とマーケティング理論を自分の現場作業や在り方、習慣に落とし込んだプレゼンをされるのです。
経営者感覚の落とし込みこそが現場ブランディングの第一歩。
職人起業塾は「起業」という文言が入っているのでよく誤解を受けますが、私たちが行なっているのは決して独立起業の準備の為の講座ではありません。経営者と同じ感覚、理念の共有、同じ判断基準を持った従業員の育成をすることが我々のミッションだと思っていて、ドラッカー博士が提唱された「最終的に全員が経営者と同じ責任を負う組織」を作るサポートをしています。要するに私の目指す着地は経営理念の現場での実践です。塾生によるプレゼンテーションはまるで社長が語っているかのような主体性に満ちた経営理念に向き合ったコミットメントが多く見られ、先日も塾生達の決意表明が習慣に落とし込まれ、実際に現場の顧客接点で実践されたら凄いことになると鳥肌が立ちました。私が半年間かけて目指してきたゴールにとりあえずは辿り着けたと嬉しを噛み締めた次第ですが、これこそがインナーブランディングの第一歩に行うべき事だと思うのです。実際に若い大工の塾生のプレゼンテーションをご覧になってみてください。インナーブランディングへ取り組みを始めるヒントを得ていただけると思います。 そんなヒロシのブログはこちら→https://wood-happy.com/magazine/staff-blog/h-umetani/7801 お時間が許せば現場ブランディングを進める若手大工の現場ブログ、一見の価値がありますのでご覧になってください。