逆転の時代の現場マネジメント。

2019/08/0615:55341人が見ました

時代の潮目。

最近、私がよく感じるのは、「令和感」と表現される、時代が変わる大きな潮目に差し掛かっているという事です。インターネット、特にSNSの普及でこれまでの社会の構造がガラッと変わる「逆転現象」があらゆるところで顕在化しているのではないかと感じています。先日、史上最年少、初のメジャー大会出場で優勝という日本の(というか世界の)ゴルフ史を塗り替える快挙を成し遂げたシブコこと、渋野日向子選手が抜群の安定感を発揮して最終ホールで優勝を決めるバーディーチャンスを作り、満面の笑顔をたたえながらグリーンに上がり、サクッとバーディーパットを決めて優勝を手に入れた瞬間を目の当たりにして、この若い女の子には重圧とか緊張とか、一打で7500万円の重みとか無縁なのか?と圧倒的なメンタル的な強さを感じましたが、その強さは厳しい練習を繰り返してきた自信からきているのは間違いないとしても、私たちが生きてきた昭和の根性論の時代とは明らかに違う雰囲気を醸しており、大きな時代の潮目を感じたのです。

強いはずのものが負ける時代。

逆転現象で最も分かりやすいのは、強いものが弱くなり、弱いはずの者が強さを発揮する事象で、昨夜のシブコ選手のように多くの経験を積んだ百戦錬磨の年長者の選手がデビューしたての若者にサクッと負ける、元々は別段問題を起こしたわけでもない吉本興業の社長が対応のまずさで批判にさらされて、一度下した判断を覆させずにおられなくなる、学生アメフト界のカリスマ監督が問題を起こした選手による「監督に指示された」との一方的な告発で永久追放となる、等々、最近のニュースを見ていると強者と弱者の立場がひっくり返った現象は枚挙にいとまがありません。実はこれは私たちの身近なところでも頻繁に起こっている事で、これまで取り上げられることがなかった声なき声を無視すると、とんでもなく大きなしっぺ返しを受けることになりかねないと思っています。

若者の意志。

先の参議院選挙で議席を獲得して政党として認められるようになったN国党の躍進?には正直非常に驚きましたが、選挙後に若い人たちと飲む機会があり、そのお話題になって聞いてみると、若い世代、特に学生時代に一人暮らしをしていた人は随分とNHKの料金徴収に苦しめられてきたようで、執拗な集金に全く納得しないまま渋々支払いをした経験を持つ人が多く、NHKを憎み、「NHKをぶっ潰す!」というスローガンのみを連呼し続けたN国党の党首に心から共感している様子でした。メディアではあまり話題になっておりませんが、私には政党と認識できていなかったN国党は若者の声なき声が初めて国政に反映された事例なのかも、と少し納得した次第です。

比例代表で当選が決まり、笑顔でポーズをとる政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志

どうにもこうにも職人がいない。。

先日、リフォーム工事をネットで集め、工務店に紹介するボータルサイトの担当者から電話があり、某大手ハウスメーカーの全国的な施工不良の是正工事に協力してくれないか?と手直し工事のオファーがありました。そもそも、私は随分前からブローカー的な建築業向けのポータルサイトとは決別しており、聞く耳を持たないスタンスだったのですが、旬の話題だった事もあり話を聞いてみました。その内容はとにかく職人がおらず困っていて、「大工の単価は28,000円、工期なし、手が空いた時に工事をしてもらえたらいい」と私たちにとってこれ以上は無い都合のいい条件を並べられました。そこまで言うなら、と実際にハウスメーカーの担当者と話をしてみたら全く違う内容で「日当は23,000円、4名組で二週間程度の日程で工事をして欲しい」とのこと、全然話が違うと憤慨しました。ブローカーは本当に信用なりません。

職人側からの条件提示。

ハウスメーカーの担当者さんは別段悪気があってその様な条件提示をされた訳では無いでしょうし、今までの建築業界の常識なら普通の話です。しかし、私にとってはそんな条件で手直し工事の手伝いをする意味も義理もなく、元々聞いていた条件を伝え、それで良ければ考えましょう。と前向きか後ろ向きかよく分からない感じでお答えしてきました。先方も少し困った様な感じでかわいそうな気もしましたが、大工に手直し工事の単純作業を日当で働かせてもなんの付加価値も生み出さず、ガッツリと期間をとって計画するほどの意味はありません。と、自社で元請けの工事を受注出来ているので強気に出ているとかではなく、職人の働き方が今までと変わった事を伝えたかっただけですが、あまり理解を得られた感じでもありませんでした。とにかく、私が起業したての頃、ハウスメーカー下請けをやっていた時とはまるでパワーバランスが入れ替わったのは間違いありません。

ボトムからの構造改革

建築業界で職人の声が強まっているのは需要と供給のバランスの様に感じがちですが、実はそれだけでもありません。情報革命によってトップとボトムの声が同じ様に発信、拡散される時代にあっては、多くの共感を得る方が力を持つ様になります。当然、権力を握っている一部のトップの人よりも圧倒的多数のボトムを支えている人の方が多いわけで、そのパワーバランスの逆転をこれからの時代は強く意識する必要があると思います。これは強烈なトップダウン文化が根付いている建設業界にも当てはまるはずで、これまで声をあげても誰にも届かなかった、声を上げることさえなかった現場で汗を流す職人たちの声なき声を拾い上げる必要があると思いますし、声を上げられる様なスキルとリテラシーを持つ様にサポートをするべきではないかとも思います。逆転の時代とも言える、令和に変わった今こそが「職人の社会的地位の向上」というミッションを掲げている私達の取り組みが現実化する大きな潮目でもあるのかなんて思うのです。全国の志を共にする仲間と共に、ボトムからの意識改革と構造改革、進めていきたいと思います。

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