「やりたい、でも出来ない」職人採用、育成は仕組みで解決!

2019/10/2619:43979人が見ました

職人会社の悩み。

私は神戸で社員大工による営業、施工を行う工務店を営んでいる傍ら、別の社団法人で職人や施工管理者向けの研修事業を行なっている関係で同業の工務店の安全大会や協力業者会の講演依頼を受ける事が多くありまして、職人さんや職人会社の経営者ばかりが集まった会場で話す機会がよくあります。最近、講演を終えた後に職人会社の経営者から相談を受ける事が少なからずあり、つい先日もそんなご縁で知り合ったサッシ業界では著名な施工会社の経営者に依頼され長時間に渡るカウンセリングとアドバイスを行いました。相談された内容は大きく3つで、職人の離職が止まらないのと、採用が上手くいかないのと、技術面以外での教育が出来ない。とのことでした。職人会社の経営者は皆さん同じ様な悩みを持っているのだと改めて感じた次第です。

やりたい、けど出来ない職人育成。

今年の夏、新建ハウジング社の主催で東京で大々的に開催された工務店カンファレンス2019に私が登壇させてもらった際、会場に集われた工務店経営者さん達に「今後、職人の採用、育成を行う必要を感じられている方」と質問すると殆どと言っていいほど多くの方が挙手されました。しかし、実際に既に取り組まれている方を尋ねるとパラパラと数名の方が手を挙げられたのが現実で、やらねばならない。でも出来ない。と言うジレンマに陥っている事が顕著に表れておりました。しかし、職人不足は加速し続けており手を拱いている場合では無いのも現実です。

職人育成を出来ない理由。

全国あちこちでセミナーや講演に登壇した際、工務店の経営者に職人の正規雇用に取り組まれない理由をよく伺います。代表的な意見としては、以下のような感じで、「まず、とっかかりを掴めない。」と言われる工務店経営者が少なくなりません。そして、職人育成に取り組み初めても後から上述のサッシ施工会社の経営者と同じ様な問題にぶつかります。

・職人を育成する人もおらず土壌がない

・募集しても人が集まらない。

・若者を職員として育ててもすぐに独立して辞められてしまう。

・外注の職人に比べてコストアップするのが厳しい。

・金額を決めて請負で発注しないと原価がぶれる

職人には職人は育てられない。

圧倒的な職人不足が待った無しで進む中、このままではいくら受注しても売り上げに計上できなくなる可能性さえ出てきます。従来の職人が職人を育てる徒弟制度が完全に崩壊した今、一定の体力が有る工務店を始めとする事業所が先行投資を行うつもりで職人の育成を行わなければならないのは誰しもが理解しているところです。20年前から社員大工制度を導入して職人育成を行なってきた私としては、まず、若者が職人として働きたくなる社内整備、人事制度やキャリアアップのスキームの構築を行うべきで、職人の正規雇用に合わせた就業規則、賃金規定、評価制度の見直しが必須だと考えています。

 

環境整備のハードル。

職人の内製化には環境整備として人事制度を見直す事が必要ですが、就業規則と賃金規定に関しては、そんなに難しくないと思っています。顧問社労士に職人の労働環境の実態を伝えた上で、完全法適合にするにはどの様にすれば良いかと意見を求めれば、会社の負担はそれなりに増えますが、職人が安心して働く環境を整えて、若者が就職先として認める体制に持っていけると思います。ちなみに、私の場合は7名の外注扱いだった大工を手取り支給額を下げずに労働法に適合させたら年間1000万円の福利厚生費等の経費が増額しました。また、新卒採用で職人育成を行うと、売上利益は全く変わらず、現場の経費だけが増大します。新たに取り組むにはそんなに低いハードルでは無く、ある程度の覚悟が必要です。

見返りのない投資?!

正規雇用での職人育成の体制を整えるのはコスト面の負担も大きいのですが、それよりも職人会社の経営者が頭を悩まされているのは離職の問題です。単なる現場のコストアップになる新卒の職人採用を始めて3年目くらいでやっと、投資を回収できる位に職人が育ち、やっとこれからと思った矢先に離職されるのが続けば経営者としては堪りません。職人という職業柄、一人親方として独立するのは非常に簡単で、職人として自信をつけ始めた稼ぎ盛りの若者が目先の所得だけを考えると独立して稼ぎたくなるのも人情です。また、職人として就職した若者が一生職人として過ごす確率は非常に低いのも看過できない現状です。

人材育成にはキャリアパスがつきもの。

冒頭のサッシの施工会社の経営者の悩みである、職人の採用を増やし、離職を止めるにはどの様にすれば良いか?との問いへの答えは明確で、未来に明るい希望が持てる職業にするべき。となります。これは一般的な企業と同じ様に社員にはキャリアプランを明確に示すべきで、特に最近の職人は分業化が進み、決められた狭い範囲の職分だけ全うすれば良いと思いがちです。それでは、作業員の日当として支払える額の上限は知れており、しかも年老いて生産性が落ちると所得も下がることになってしまいます。そうならない様に、まずは施工技術、その次は現場での材料や関連業者、そして人員の手配や段取り、顧客とのコミニケーションを取って現場全体を取り仕切る、新たな仕事を受注できる様になる。と職人もキャリアを重ねて単なる作業員から施工管理や営業、マネジメント職までのキャリアプランを立てることで、未来を見据える事ができる様になります。

職人教育、人材育成は仕組みで解決。

キャリアに沿った人事制度と評価制度を作り、職人のキャリアパスを他業種と同じようにする事で、職人が自分自身のスキルについて考えるようになり、資格取得や積極的なコミュニケーションを意識したり、建築の、またそれ以外でも最新の情報収集に注力したり、マネジメントについて学んだりするようになります。自ずと重要な人材になって行くわけで、単に現場コストでは無い貴重な人財に成長してくれるようになります。冒頭の経営者の3つ目の悩みだった、技術以外の教育が出来ない問題は自然と解消されるようになります。これから職人育成に取り組もう、取り組まなければとお考えの経営者の方は、先ずはこの部分の環境整備から手をつけられては如何でしょうか?
もう少し詳しく訊きたいと思われた方は一般社団法人職人起業塾までお気軽にお問い合わせください。(笑)→https://www.shokunin-kigyoujyuku.com/application/contact/

一覧へ戻る