皆さんのご批判を覚悟で本音を言います。
私は建材が値上がりして良い面もあると思っているのです。
今回はそんな考えに至った理由についてお話しします。
数年前まで、私が住宅をデザインしながらよく言っていた言葉が
「建材が安すぎる」でした。
もちろん、良質の建材を生産し、できるだけ安く提供してくださったメーカーの方には感謝します。
でも、建材が安すぎると家づくりという仕事の存在自体が危うくなるのです。
それはなぜか。
家づくりの原理原則は、できるだけお金をかけずにできるだけ居心地の良い空間をつくるということです。
その原理原則にそって、もがきながら頭に汗をかいて考え抜くのがデザインです。
古民家をみてください。
その原理原則にしっかりそっているから。人を感動させるほど美しい。
それなのに建材が安いと、つい「そのくらいならいっかー」ということでお金で解決しようという誘惑に駆られるのです。
分かりやすい例が外部サッシ(窓)ですね。
サッシも安いからあまり考えずにあっちだ、こっちだ、追加してしまう。
皆さんも経験あると思いますけれど、そういう空間は居心地良くなりませんよね。
そのサッシの値段が3倍すればもっと頭を使うのではないでしょうか。
誘惑に負ければもう頭は使わなくなります。
その結果できた住宅は居心地も良くなりませんし、つくった自分も楽しくない。
頭を使わなくてもできる仕事・・・
そんな仕事だったらやりたくないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
だから、建材が安すぎると家づくりの仕事の存在自体を危うくしてしまうのです。
やっぱり仕事は人生と一緒。
越えられるか分からないハードルがあって、それをなんとか越えていくというドラマが必要なんだと思います。
そういう意味では今、建材の値上がりは私たちが越えなければいけないハードルですね。
今こそ、みんなで頭を使う時が来たのではないでしょうか。
それこそが本当の意味でのデザインであるし、本当に楽しい仕事だと思います。
もしかしたら、今後数年間は史上稀に見る上質な住宅が多産される時代になるのではとも考えています。