[第19回] ハイブリッド工務店(中高級コンセプトハウス) のススメ

2022/08/2209:06308人が見ました

SOLT.の青木隆行です。最高気温が40℃に迫るような猛暑が続いています。また、水害や地震などの災害も連日のように報道があります。安心快適な生活を確保するには、高い住宅性能に加え災害に強い家づくりが求められる時代になったとも言えます。「住宅のどこにコストをかけるか」という観点では、やはり性能に関わるところを充実させる事が重要になってきていると痛感します。

耐震性能や断熱性能が高い家づくりは素材に収縮や狂いが少なく、住む人にとっても寒暖のストレスがない事・お得なランニングコストも実感できる事から、住んだ後の高い満足度にもつながりやすく、結果アフターメンテナンス面でも顧客・工務店双方にメリットがあるようです。

このような観点からも私は技術者ではありませんが、工務店には耐震等級3・断熱等級6を必須としてZEHLCCM住宅に取り組まれる事をお薦めしています。

 

良い家づくりとは必ずしも注文住宅を建てる事ではない

 そんななかで前回のコラムでもお伝えしたように、家造りの再現性を高め品質向上を図るコンセプトハウス(中高級コンセプトハウス)の開発を推奨しています。

 注文住宅こそが良い家づくりであり、企画(規格)住宅やコンセプトハウスは安く売るという売り手側の論理で成り立っている考えは、改めるべき時代になっているのだと思います。

私は地域の中小工務店は一定の経営資源のなかで地域に根差した企業活動をする事を使命としていると考えていますが、このような理念を共有できる方こそ、コンセプトハウスを磨いて家造りの再現性を高める(=自社の商品力を高める)事がとても重要なのだと思っています。特に推奨するのは1800~2300万円の価格帯で家づくりをしている工務店で、その理由は注文住宅を建てるほど利益を圧迫しかねない状況になってきているからです。後半で説明します。

さて、コンセプトハウスの開発にあたってのポイントは下記です。

 

1.高性能+デザイン+自然素材のポイントを押さえる。

高性能は当たり前。断熱等級6以上、耐震等級3。長期優良住宅・ZEH・性能評価などを標準化しても良い。デザインテイストは自社のポジショニングを考えて決定。自然素材の活用(出来れば杉やヒノキだけでなく広葉樹も取り入れる)

 

2.コストを抑えシンプルに建てる。

出隅・入隅をなくし出来るだけ四角いフォルムのなかで窓の形などによって外観デザインを工夫するなど、作業効率なども考えた内観外観のデザインを心掛ける。

 

3.使いやすい間取り+自社オリジナルのコンセプトを入れる

廊下を極力なくし小さく建てて広く住めるよう工夫する。うち土間やファミリークローゼットなど自社オリジナルのコンセプトを入れる。

 

4.『定額制』などで価格を明快にする。

HP上で仕様仕上げを明記し価格を分かりやすくする。オンライン見積りも検討。

 

5.注文住宅とほぼ同じ仕様仕上げを使う。

間違いが起こらないように仕様仕上げは社内で2パターン程度に極力統一する。同時によく出るオプションについて、あらかじめまとめておく。

 

コンセプトハウスの商品力を磨く

 コンセプトハウスについては、上記に示した程度の性能やポイントを考慮し、あとは性能評価を行ったり太陽光パネルを標準化するなどで住宅の価値を上げ、イニシャルコストをランニングコストで賄う仕組みを提案していけば、環境にも家計にも優しく長持ちする家づくりをより具体的にお客様に示すことが出来ます。コンセプトハウスを22002500万円前後で販売できるように、主に設計によるコストダウンと合理化を図っていく事ができれば成功に近づきます。

 2019年以前まで平均販売単価25002800万円・平均坪単価80万円前後がターゲットあった工務店は現在それぞれ3000万円・90万円を超えておられるでしょう。この価格帯のケースですとコンセプトハウスは比較的スムーズに導入しやすいと考えています。

これよりも安い価格帯、例えば18002300万円のレンジで家造りをしてこられた工務店は、特にコンセプトハウスを開発・導入すべきです。この価格帯の工務店にとって、今後注文住宅の訴求力を高めるのはかなり難しくなると考えています。

問題となるのは、注文住宅の家づくりにおける対応力やスキルの問題、その手間と利益率の問題などが挙げられます。根本として、「世界に一つの家づくり」は相応の技術力があってこそであり、それには相応のコストがかかります。顧客の要望を実現しようとしても原価が高騰しているなかで工務店の利益率が削がれる形に陥りやすいのではないでしょうか。

対応策としては、やはり上記に示したようなコンセプトハウスを開発し、その商品力を磨くことだと思っています。エリアにもよりますが、価格を2500万円前後に設定できれば逆に単価がアップする形になるので、コンセプトハウスの導入に合わせてセールスステップを明確化していくこと、ブランディングを進めることなど複合的な企業力向上を目指していけば、大幅に収益性を高める事が可能です。

 

エリア限定ハイブリッド工務店化計画

 コンセプトハウスを開発したあかつきには是非、注文住宅と分譲住宅の両方で推進されると良いと思います(これを工務店のハイブリッド化と呼んでいます)。

 この形を進めると受注の平準化という観点から経営を安定化させることが出来るでしょう。さらに不動産事業を加えて住宅不動産の総合化を図る事で事業の幅が広がってくると思います。ただし、企業としてのブランドアップとコンセプトハウスの品質を高める事が絶対条件となります。無論そのためには経営者の総合的な判断とやり遂げるという信念が必要です。売るためだけの家では見透かされますので、しっかりとしたコンセプトのもとに家造りを考えるようにされると良いでしょう。

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