[第18回]『高額物件』は追うな。

2022/07/2515:51150人が見ました

SOLT.の青木隆行です。ウッドショックに始まる建築資材の高騰が続いており、いまだ収束をしていません。販売価格も2019年比平均単価で250350万円、坪単価10万円前後上がっています(自社調べ)。

このようななか地域工務店では、①原価アップ分を売価に乗せて適正な利益を得ているケース②売価が上がり過ぎると顧客が逃げてしまうのではないかと考え利益率が下がっているケースがあるように思います。そして、実は②よりも①のケースの方が受注も好調です。

それはなぜか。確かに売り手(工務店)の考えとしては、原価が上がり同じ面積・仕様・仕上げの家造りで坪単価が10万円以上も上がってしまうと売れないのではないかと思いがちです。しかし買い手(顧客)の観点に立つと、『これ以上住宅価格が上がったらまずい。情勢的に見ても物価が上がりそうなので今のうちに家造りをしておこう』と考えるかも知れません。

さらにその顧客が大手ハウスメーカーで話を聞いていれば、もう坪単価100万円などではびっくりもしません。『やっぱりこれくらい(の仕様仕上げ)だとその位の金額は行くよね』と思っていただければ住宅価格が上がっても受注は順調に推移すると思います。ただし、これには相応の家造り(例えば耐震等級3・断熱等級5以上、UA値・C値共に高い水準であり、自然素材を使い住み心地の良いデザイン性と間取り)と顧客対応力が求められるとも考えています。

 

価格帯別にみる対応とは?

 2019年以前まで平均単価25002800万円・平均坪単価80万円前後であった工務店は、既にそれぞれ3000万円・90万円を超えておられるでしょう。この価格帯のケースですと比較的スムーズに移行しやすいと考えています。上記に示した程度の性能は既に搭載済であり、あとは性能評価を行う・太陽光パネルを標準化するなどで住宅の価値を上げることで、イニシャルコストをランニングコストで賄う仕組みを提案していけば、環境にも家計にも優しく長持ちする家造りをより具体的に示すことが出来ます。

 これよりも安い価格帯、例えば18002300万円のレンジで家造りをしてこられた工務店さんは、少し対応力が落ちると見放されるケースもあるでしょう。これを機にコンセプト住宅(企画住宅)の商品開発をされることを勧めます。

 誤解を恐れずに言えば、この価格帯(1800~2300万円)で注文住宅の訴求力を高めるのはもう難しいと考えています。それよりはコンセプトハウスの商品力を磨くことをお薦めします。

 さらに企業ブランディングを進め、注文+分譲+不動産というハイブリッド化を進めると経営を安定化させることが出来るでしょう。無論、売るためだけの家では見透かされますので、しっかりとしたコンセプトのもとにストーリーをつくり、家造りを考えるようにするべきです。

 

高額物件に潜むリスク

 最後に、高額物件についてです(ここで言う高額物件は一棟単価5000万円以上の家造りの事を指します)

 顧客層で言えば経営者や個人事業主、資産家に医師・弁護士といったハイクラスの顧客になってきます。確かに一棟当たりの単価が高いと施工棟数が少なくても売上は上がりやすいのですが、ハイクラス層顧客には非常に高い住宅品質や家造りのスキル、顧客対応力が求められます。このクラスになると設計も設計事務所との競合になりますし、多様な顧客の要望に応じる必要も出てきます。また顧客と共有すべき趣味や志向など、日常生活から培っておかなければ分からないようなことへの理解も求められます。

 一定の粗利が取れても、打合せ回数が多く特別な仕様・仕上げであったりすると、経費が掛かり充分な営業利益が得られない可能性があります。高いスキルと対応力がある工務店は是非このレンジを狙うべきですが、平均単価3000万円前後の工務店がここを狙うには営業/設計/施工における全体的なスキルアップ、顧客対応力の向上などにかなりの時間がかかります。

 ターゲティングと自社ポジショニングを考え戦略的な行動が求められますので、地域工務店においては無闇に単価アップを狙うというよりは、先ほど示したようなコンセプトハウスのように、方向性を定めて進めていく必要があると考えています。

 最後になりますが、実は私は現在の状況で一番に訴求すべきは「中高級路線」が良いと思っています。

 次回その提案について解説します。

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