SOLT.の青木隆行です。コロナウィルスによるパンデミックが始まったのは2020年初頭。そこから全世界をコロナショックが襲いました。この2年間で住宅工務店業界もウッドショックをはじめ、コロナ禍を要因とする様々な変化に大きな影響を受けました。
私のアドバイザー先のすべての工務店(17社)では、住宅の単価が200万円~300万円ほど上がっており、これまでであれば考えられなかったようなコスト高が起こっています。しかし中には、創業以来の最高売上/利益を計上している好業績の工務店もあります。
実は上の図1からも分かるように地域の工務店だけではなく、大手・中堅ハウスメーカーも軒並み過去最高水準の業績を出しています。実はコロナ禍によって住宅工務店業界はバブルともいえる状態だった事が分かります。「STAY HOME」「おうち時間」といった形で外出する機会が極端に減るなかで、市場では居住空間に対する興味関心が高まりました。またリモートワークも増え、移住すら可能である事にも気づきました。これらが住宅購入の追い風となった事は間違いないでしょう。
そして世界的に発生したこのような需要増から木材や原材料・輸出入が難しくなり、外材を買い負ける状態が発生してウッドショックが起こったとも言えますが、まさにこれはバブル状態を示しているわけです。
コロナの終息がいつになるのかは未確定ですが、終息と共にこの追い風はなくなり、逆にアゲインストとなる事も一部で予測されています。今後中長期的に起こる(かもしれない)事態としては、人口減少/住宅着工減/もう一段の材料高/金利上昇などが予測され、不確実性を増してきていると言えるでしょう。
この状況下で工務店が持続可能性を高めるには?
このような中で、我々地域工務店はどのように持続可能性を高めていけば良いのでしょうか。それはずばり『誰に・どんな家を・どのように』を顧客視点で考える事です。不安定な状況下であればあるほど、ターゲットと商品をより明確にし、結び付けるストーリーをより具体的に描くことが地域工務店の取るべき戦略でしょう。
具体的な手法としては、まずマーケティングの実施ということになります。マーケティングの順番としては、外部環境(社会情勢・市場・競合など)/内部環境(自社の状況)を分析し、自社の『本当の強み』が何かを考え、外部環境と自社の『本当の強み』を活かしたSTP分析=セグメンテーション(市場細分化)/ターゲティング(販売する相手の絞り込み)/ポジショニング(市場における立ち位置の確立)を行います。
そしてこれらに基づいて、より具体的な施策の検討として4P分析=商品づくり/価格帯/場所や立地/販売促進という形で進めていくことです。
ここまで既に実施済の方も多いと思いますが、コロナ終息に向けてあらためて考えてみた方が良いと思います。
自社の独自性を生かすポジショニングが求められる理由
そしてSTP分析におけるポジショニングにおいては特によく考えるべきだと思っています。つまり自社の独自性がターゲットとする顧客にどれだけささるのかを顧客視点で考える重要性がとても高いのです。そして、ポジショニングが成功するためには、以下の4つの条件を満たしていることが重要であると言われています。
1.ポジショニングのターゲットサイズが適切か
2.売り手の考えるポジショニングが、顧客に正確に伝わるか
3.売り手の考えるポジショニングに、顧客が共感するか
4.売り手である企業自体のポジショニング(企業理念、ポリシーなど)と、製品のポジショニングに整合性があるか
(グロービス経営大学院HPより抜粋)
地方においてはあまりに市場を細分化してしまうと市場規模自体が小さくなりすぎます。例えば高価格帯を狙う場合には施工エリアの範囲を広げるなどの施策が必要になるでしょう。しかし何でもやります、というのもまた違います。
そこでやはり会社の理念からどのような家づくりをするのかを考え、それが顧客視点から整合性が取れ共感してもらえるかを確認し、マーケット規模をチェックし業績目標を立てていくという形になるでしょう。
そしてどのような家づくりをするのかに際しては、自社の本当の強みが充分に活かされているかも見ておく必要があります。逆に言えば、自社の本当の強みがどれほどターゲットにささるのか、またその模倣困難性も確認しておくことが重要です。
「深化」する顧客ニーズに対応しているか
家づくりに対する顧客の要求は年々高くなっています。以前は『自然素材』とか『○○工法』『高性能住宅』『建築家と建てる家』などだけで訴求力があったのですが、今ではそれらは当たり前になりつつあります。
地域工務店の多くは上記のような訴求ポイントを複合的に持つなどしていますが、もうそれでも追いつきません。断熱性能や耐震性能など住宅の高性能化も、もう何年かすれば当たり前のこととなるでしょう。これから「模倣困難性の高い家づくり」を実現できる工務店はさらに限られるのです。人材確保やデジタル化といったところで相応の資金力が必要になる事も予想されますし、またさらに長期的には住宅業界にも破壊的なイノベーションが起こる可能性もあります。
このような事についていける工務店は絞られているのかもしれません。ですが、模倣困難性の高い独自のポジショニングを見つけた工務店は実際に業績を伸ばしています。そしてそんな工務店は私の知る中では少なくありません。
客観的に見てみないと分からない自社の本当の強みが隠れている場合もあります。まずは現時点で、顧客視点で本当の強みを深く考え見つけ出す(または作り出す)事をお勧めいたします。さらに進めて、将来のビジョンも検討するという事であれば、将来の自社のあるべき姿を標榜する事へもつながるでしょう。
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